退院前カンファレンスから戻って第2表を開くと、長期目標に「麻痺が改善し、歩けるようになる」と書きたくなります。でもこの1行は、ケアプランでは約束できません。回復の見通しを立てるのは主治医とリハビリ専門職の仕事です。第2表に書けるのは、その先にある暮らしの形——回復した力で、朝どこまで自分で支度をして、どこへ出かけるか、です。

この記事では、脳梗塞・脳出血など脳卒中(脳血管疾患後遺症)のある方の第2表で使える文例を、場面ごとに139本まとめました。片麻痺、高次脳機能障害、失語、再発予防、家族の介護、独居、そして40代・50代で発症した方まで並べています。気になる行をコピーして、ご本人の状態に合わせて言葉を入れ替えて使ってください。制度の部分は、介護保険法・政令・省令の原文にあたって書いています。
この記事の文例の並び方
第2表の欄ごとに章を分けています。
1章目:ニーズ(「〜したい」の形・主語はご本人)
2章目:長期目標
3章目:短期目標
4章目:サービス内容
各章の中は場面別に分かれているので、担当の方に近い場面から拾ってください。後半に「書き方のコツ」と「運営指導で見られやすいポイント」があります。
文例の前に:脳卒中の第2表で押さえること
脳卒中は、脳の血管が詰まったり破れたりして、急に脳の働きが悪くなる病気の総称です。国立循環器病研究センターの解説では、血管が詰まる脳梗塞、血管が破れる脳出血とくも膜下出血の3つが含まれるとされています。同センターによると、脳卒中(脳血管疾患)は2021年の人口動態統計で日本人の死因の第4位、そして寝たきりとなる原因の第1位です。ケアマネジャーが出会う頻度がもっとも高い疾患のひとつ、と言っても言い過ぎではありません。
40代・50代でも介護保険の対象になります(特定疾病)
介護保険法第7条第3項第2号は、40歳以上65歳未満の方(第2号被保険者)について、要介護状態の原因が「加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病であって政令で定めるもの」=特定疾病による場合に要介護者と定めています。政令(介護保険法施行令第2条)が挙げる16の特定疾病のうち、第13号が「脳血管疾患」です。
つまり、45歳で脳出血を起こした方も、要介護認定を申請できます。「65歳未満だから介護保険は使えない」と思い込んでいる本人・家族は少なくありません。病院の相談員から連絡が来たら、まずここから案内してください。要支援についても同じ建て付けです(法第7条第4項第2号)。なお、40〜64歳の方が第2号被保険者になるのは医療保険に加入している場合です(法第9条第2号)。医療保険に入っていない方は扱いが変わるため、市町村に確認してください。
目標欄に医学的なアウトカムを書かない
「麻痺が改善する」「再発しない」「嚥下機能が回復する」。この形の目標は、疾患別の第2表でいちばん多い書き間違いです。理由は2つあります。改善するかどうかは本人の取り組みだけでは決まらないこと。そして、機能の回復を見立てるのは医学的判断であって、ケアマネジャーの領分ではないことです。
書くのは、生活の行為と参加です。「右手で箸を持てる」ではなく「箸か自助具で、家族と同じ食卓の食事を最後まで食べられる」。「歩行が改善する」ではなく「杖で近所の公園まで往復できる」。この記事の文例は、すべてこの形で作っています。
後遺症は麻痺だけではありません
脳卒中の後遺症で第2表に載りやすいのは片麻痺ですが、実際のプランで手が止まるのは、目に見えにくい後遺症のほうではありませんか。注意や記憶、感情のコントロールに影響が出る高次脳機能障害。言葉が出ない・理解しづらい失語。そして飲み込みの障害です。
このうち嚥下障害と誤嚥への備えは、【誤嚥性肺炎】ケアプラン第2表の文例集で食事の形・とろみ・口腔ケアまで深掘りしています。この記事では重複を避け、嚥下は入り口の文例だけにとどめます。
再発予防は書く。ただし中身を決めるのは主治医
脳卒中のプランで再発予防に触れないわけにはいきません。ただし、ケアマネジャーが書けるのは「行動と体制」までです。血圧をいくつに保つか、薬を何にするかは主治医の領域で、第2表に書く数字ではありません。
制度上の線もはっきりしています。運営基準(平成11年厚生省令第38号)第13条第20号は、訪問看護や通所リハビリテーションなどの医療サービスを計画に位置づける場合、主治の医師等の指示がある場合に限ると定めています。医療サービスの利用を希望される場合は、利用者の同意を得て主治の医師等の意見を求め(同条第19号)、作成した計画は主治の医師等に交付します(同条第19号の2)。再発予防の行は、この手順とセットで初めて成立します。
ニーズ(生活全般の解決すべき課題)の文例(47文例)

この章の文例は「生活全般の解決すべき課題(ニーズ)」欄に書きます。主語はご本人です。
片麻痺があり、移動に不安がある
- 右(左)半身に麻痺が残ったが、転ばずに家の中を移動できるようになりたい
- トイレまで自分で歩いて行き、間に合うようにしたい
- 杖や装具を使いながら、外を安全に歩けるようになりたい
- 車いすでの生活になったが、自分で動かせる範囲を広げたい
- 段差の多い家だが、住み慣れたこの家で暮らし続けたい
身の回りのことを自分でしたい(利き手の麻痺・更衣・入浴)
- 利き手が使いにくくなったが、食事は自分の手で食べたい
- 食事でむせることが増えたので、安心して食べ続けられるようにしたい
- 時間がかかっても、着替えを自分でできるようになりたい
- 入浴は不安があるので、手伝ってもらいながら湯船につかりたい
- ひげそりや化粧など、身だしなみを自分で整えたい
- トイレの後始末まで、人の手を借りずにできるようになりたい
退院直後・在宅生活への移行期
- 退院したばかりで不安が大きいので、体制を整えて家での生活に慣れたい
- 入院中にできるようになったことを、家でも続けられるようにしたい
- 病院でのリハビリの続きを、家でも受けられるようにしたい
- 家の中の危ない場所を整えて、安心して退院後の生活を始めたい
- 体調の変化にすぐ気づいてもらえる形で、自宅での生活を送りたい
高次脳機能障害がある(注意・記憶・段取り)
- 忘れっぽくなったので、メモや道具を使って予定や約束を守れるようにしたい
- ひとつのことに集中しにくくなったが、落ち着いてできるやり方を身につけたい
- 家事の段取りが分からなくなることがあるので、手順を確かめながら続けたい
- 自分の変化をうまく説明できないので、周りの人に分かってもらえるようにしたい
- 疲れやすくなったので、休みを入れながら1日を過ごせるようにしたい
気持ちの落ち込み・意欲の低下がある
- 病気の後、気持ちが沈みがちだが、少しずつ外に目を向けられるようになりたい
- 何をするのもおっくうだが、楽しみと思えることをひとつ見つけたい
- 人に会うのが恥ずかしいと感じるが、また知り合いと話せるようになりたい
- 思うようにできない自分にいら立ってしまうので、気持ちの持って行き場がほしい
失語・構音障害がある
- 言いたい言葉がすぐに出ないが、自分の意思を伝えられるようにしたい
- 話すことに時間がかかっても、家族との会話を楽しみたい
- 電話や買い物など、話す場面で困らない方法を身につけたい
- 字を書くことや読むことのリハビリを続けて、できることを増やしたい
- 急を要するときに、周りに助けを求められる手段を持ちたい
再発への不安・健康管理
- 二度と同じ思いをしたくないので、血圧の管理と薬をきちんと続けたい
- 薬の飲み忘れが心配なので、確認してもらえる形にしたい
- 定期受診を欠かさず続けて、体の状態を診てもらいたい
- 食事の内容に気をつけて、体の調子を整えたい
- 体の異変にすぐ気づいて、早く受診できるようにしたい
40〜64歳で発症した(仕事・家庭での役割)
- まだ働き盛りなので、仕事に戻ることを目標にリハビリを続けたい
- 家族を支える立場なので、家庭での役割をできる形で続けたい
- 同世代と過ごせる場で、体力と気力を取り戻したい
- 今後の生活や制度のことを、相談できる相手を持ちたい
家族が介護している
- 家族が介助の方法を教わり、安心して手伝ってもらえる形で暮らしたい
- 家族が休める時間を持てる形で、この家での生活を続けたい
- 気持ちの波があっても、家族が相談できる相手を持ちながら一緒に暮らしたい
- 家族が抱え込まずに続けられる形で、家での暮らしを続けたい
独居で生活している
- 一人暮らしでも、転倒や体調の変化に気づいてもらえる体制で暮らしたい
- 食事の支度が難しくなったので、栄養のとれる食事を続けたい
- 薬の管理を一人で続けられるか不安なので、支えてもらいたい
- 何かあったときにすぐ連絡できる手段を持って、この家で暮らし続けたい
長期目標の文例(14文例)

この章の文例は「長期目標」欄に書きます。機能の回復ではなく、回復した力で送る暮らしの形で書きます。
- 住み慣れた自宅で、転倒予防に取り組みながら生活を続けられる
- 杖と装具を使って、近所のなじみの場所まで自分で出かけられる
- 食事・着替え・整容を、自分のやり方とペースで行える
- 見守りと手すりのある環境で、入浴の習慣を続けられる
- メモやカレンダーを使いながら、1日の予定を自分で組み立てられる
- 自分に合った伝え方で、家族や支援者と意思のやりとりができる
- 服薬と定期受診が続き、体調を保ちながら生活できる
- 週◯回の外出の機会があり、人と関わりながら生活できる
- 家庭の中で自分の役割を持ち、家族の一員としての生活を続けられる
- 仕事への復帰に向けて、生活のリズムと体力を保てる
- 家族が介助の負担を分かち合いながら、在宅での生活を続けられる
- 支援と見守りの体制のもとで、一人暮らしを続けられる
- 体調の変化に早く気づいてもらえる体制のもとで、安心して過ごせる
- 「してもらう」だけでなく「自分でする」場面を保ちながら暮らせる
短期目標の文例(41文例)

この章の文例は「短期目標」欄に書きます。誰が見ても達成できたかどうかが分かる形にします。
移動・歩行
- 手すりを使って、寝室からトイレまで一人で移動できる
- 装具の着け外しを、見守りのもとで自分で行える
- 屋内は杖歩行、屋外は車いすなど、場面ごとの移動方法を使い分けられる
- 週◯回の歩行練習を続け、◯mの距離を休まず歩ける
- 車いすからベッド・トイレへの乗り移りを、見守りのもとで行える
- 玄関の上がりかまちを、手すりを使って昇り降りできる
身の回りのこと(食事・更衣・整容・入浴)
- 自助具を使って、食事を最後まで自分の手で食べられる
- 前開きの服を選び、時間をかけて自分で着替えられる
- 麻痺のある側から袖を通す着替えの手順を、身につけられる
- 週◯回、見守りと一部介助のもとで入浴できる
- 洗身は健側で洗える範囲を自分で行い、届かない部分の介助を受けられる
- 毎朝、洗面と整容を自分で行える
高次脳機能障害(注意・記憶・段取り)
- その日の予定をカレンダーとメモで確認する習慣がつく
- 薬・財布・鍵など大事な物の置き場所を決め、決めた場所に戻せる
- ひとつの作業を、途中で休みを入れながら最後まで行える
- 調理や買い物を、手順書を見ながら支援者と一緒に行える
- 疲れたときに「休みたい」と自分から伝えられる
- うまくいかなかった場面を支援者と振り返り、次のやり方を決められる
コミュニケーション(失語・構音障害)
- はい・いいえで答えられる聞き方や絵カードを使って、自分の意思を伝えられる
- ゆっくりであれば、日常のあいさつや用件のやりとりができる
- 言葉が出ないときに、指さしや筆談など別の手段に切り替えられる
- 家族が本人に合った話しかけ方を身につけ、日常の会話を続けられる
- 言語聴覚士との練習で教わった伝え方を、日常の場面で使える
- 緊急連絡カードを持ち歩き、外出先で提示できる
再発予防・健康管理
- 処方どおりに服薬でき、飲み忘れが週◯回以下になる
- 毎朝、血圧を測って手帳に記録できる
- 月◯回の定期受診を、同行支援を受けながら続けられる
- 主治医から示された食事の注意点を、本人と家族が言える
- 体調がいつもと違うときのサインと連絡先を、本人・家族・支援者が言える
- 血圧の記録と体調のメモを、受診時に主治医へ見せられる
- 水分を1日を通してこまめにとる習慣がつく
役割・参加
- 週◯回、通所先で他の利用者と一緒に活動へ参加できる
- 洗濯物たたみなど、家庭の中の役割を毎日続けられる
- 趣味の◯◯を、やり方を変えながら再開できる
- 月◯回、友人や知人と会う機会を持てる
- 復職に向けて、産業医や職場との相談の場に参加できる
家族・独居の暮らし
- 家族が移乗と歩行介助の方法を教わり、実際に行える
- 家族が週◯日、介護から離れて自分の時間を持てる
- 訪問のない日も、電話や通いの場で誰かとつながる日をつくれる
- 配食サービスを利用し、1日◯食は栄養の整った食事をとれる
- 緊急通報の使い方を覚え、必要なときに押せる
サービス内容の文例(37文例)

この章の文例は「サービス内容」欄に書きます。医療サービスは、主治医の指示にもとづくことが読み取れる形にします。
医療との連携
- 訪問看護:血圧・脈拍など全身状態の観察、服薬状況の確認、麻痺側の皮膚の観察、再発を疑うサインがみられた際の主治医への連絡(主治医の指示に基づく)
- 訪問看護:本人・家族への介助方法と体調観察のポイントの指導
- 主治医:血圧・脂質などの管理と処方、リハビリテーションの指示、体調変化時の対応の指示
- 居宅療養管理指導(薬剤師):残薬の確認、飲み忘れを防ぐ一包化や服薬カレンダーの提案、麻痺があっても扱いやすい剤形の相談
- 居宅療養管理指導(管理栄養士):主治医の指示に基づく食事内容の助言(位置づけの要件は主治医に確認する)
- ケアマネジャー:医療サービスの利用にあたり本人の同意を得て主治医の意見を確認し、作成した居宅サービス計画を主治医へ交付する
- ケアマネジャー:各事業所から受けた体調・血圧・服薬の情報を、本人の同意を得て主治医へ伝える
- ケアマネジャー:夜間・休日に体調が変わったときの連絡先を確認し、本人・家族・支援者全員へ共有する
リハビリテーション(訪問リハ・通所リハ)
- 訪問リハビリテーション:主治医の指示に基づく歩行・移乗動作の練習、自宅の環境に合わせた動作方法の助言
- 訪問リハビリテーション:利き手交換など、麻痺のある生活に合わせた日常動作の練習と自助具の提案
- 訪問リハビリテーション(言語聴覚士):失語・構音障害に対する練習と、家族への関わり方の助言(主治医の指示に基づく)
- 通所リハビリテーション:理学療法士等による機能訓練と、活動量・体力の維持
- 通所リハビリテーション:実際の生活場面を想定した応用動作(調理・書字・階段など)の練習
- リハビリ職からの助言内容を訪問介護員・家族と共有し、日常の介助方法をそろえる
- リハビリの経過と自宅での様子を、担当者会議で主治医・事業所と共有する
訪問介護・通所介護
- 訪問介護(身体介護):移乗・移動の介助と転倒の防止、リハビリ職の助言に沿った見守り方法の統一
- 訪問介護(身体介護):入浴介助(麻痺側の保護と浴槽の出入りの介助)、皮膚状態の観察
- 訪問介護(身体介護):更衣・整容の介助(本人ができる部分は見守り、できない部分のみ介助する)
- 訪問介護(生活援助):本人と一緒に行う調理・買い物など、できる家事を残す形での支援
- 通所介護:入浴の機会の確保、他の利用者との交流、活動による生活リズムづくり
- 通所介護:本人の年齢・関心に合った活動の用意(若年の方の場合は過ごし方を事前に相談する)
- 送迎時に自宅での様子を確認し、変化があればケアマネジャーへ報告する
福祉用具・住宅改修・装具
- 福祉用具貸与:手すり・歩行器・車いすなど、移動の状態に合わせた用具の選定と定期的な調整
- 福祉用具貸与:特殊寝台など起き上がり・立ち上がりを助ける用具の検討(軽度者は例外給付の要否を保険者に確認する)
- 住宅改修:手すりの取り付け、段差の解消など、動線に合わせた改修の検討
- 特定福祉用具販売:入浴用いす・浴槽内いすなど、入浴動作に合わせた用具の検討
- 装具の不具合や体に合わなくなった様子がみられたら、主治医・リハビリ職へ相談につなぐ
- 福祉用具専門相談員・リハビリ職・本人で使い方を確認し、家族にも扱い方を伝える
独居・見守りの体制
- 訪問系サービスと通所の曜日を組み合わせ、誰の目も入らない日が続かない形をつくる
- 配食サービス:食事の提供と手渡し時の安否確認
- 緊急通報装置:転倒や体調不良のときに外部へ連絡できる体制の確保
- 別居家族・民生委員による定期的な電話連絡と訪問
本人・家族の取り組み
- 本人:毎日の血圧測定と記録、処方どおりの服薬、自主トレーニングの継続
- 本人:転びそうになった場面や体の変化を、支援者に伝えること
- 家族:介助方法をリハビリ職・訪問看護師から教わり、無理のない範囲で行うこと
- 家族:受診への同行と、自宅での様子を主治医・ケアマネジャーへ伝えること
- 家族:介護を一人で抱え込まず、負担が大きいときはケアマネジャーへ相談すること
書き方のコツ(深めたい方向け)
すぐ使いたい方は、ここから先は読まなくて大丈夫です。脳卒中ならではの書き分けのコツをまとめました。
コツ1:「歩けるようになる」で止めず、「歩いてどこへ行くか」まで書く
「歩行能力が向上する」という目標は、どこまで行けば達成なのかが誰にも分かりません。書き直すなら「杖で近所の公園まで往復できる」。距離と行き先が入った瞬間、モニタリングで確かめられる目標になります。
行き先は、発症前の暮らしから拾ってください。毎朝新聞を取りに出ていた方なら郵便受けまで。囲碁仲間のいた方なら集会所まで。リハビリの動機は「機能」ではなく「行き先」から生まれます。測り方の作り込みは、ケアプラン第2表 目標の文例集も参考にしてください。
コツ2:退院時は「できるADL」と「しているADL」を分けて受け取る
回復期リハビリテーション病院からの引き継ぎで、「歩行自立」とだけ聞いて帰っていませんか。リハビリ室の平らな床で1回できることと、自宅の廊下で毎日していることは別物です。前者が「できるADL」、後者が「しているADL」。退院直後のプランで転倒が起きるのは、たいていこの差の中です。
引き継ぎでは「どの場面で・どの装具や用具を使って・見守りは要るか」まで聞き取り、自宅の環境(段差・廊下幅・トイレの位置)と突き合わせます。差が大きい動作は、短期目標を「見守りのもとで行える」から始めて、段階を踏んで手を離してください。
コツ3:再発予防は数値ではなく行動で書く
「血圧を◯◯mmHg以下に保つ」と第2表に書きたくなりますが、目標値の設定は主治医の医学的判断です。ケアマネジャーが書くのは行動のほう。「毎朝血圧を測って記録できる」「処方どおりに服薬できる」「月◯回の受診を続けられる」——この形なら、本人が取り組めて、達成も確かめられます。
そして測った記録は、主治医に届いて初めて意味を持ちます。「血圧の記録を受診時に主治医へ見せられる」まで書き、支援者の誰がその記録を確認するかをサービス内容で割り振ってください。数字を決めるのは医師、数字が届く仕組みを作るのがケアマネジャーです。
コツ4:高次脳機能障害は「診断名」ではなく「場面」で書く
高次脳機能障害は外から見えにくく、本人も説明しづらい後遺症です。第2表に「高次脳機能障害があるため見守りが必要」と書いても、支援者は何をどう見守ればよいのか分かりません。
書くのは場面です。「ガスの火を消し忘れることがある」「話の途中で内容が抜けてしまう」「2つのことを頼むと1つ忘れる」。場面で書けば、対応もメモ・手順書・声かけのタイミングという具体に落ちます。困りごとの整理に迷ったら、国立障害者リハビリテーションセンターの高次脳機能障害情報・支援センターに相談窓口や支援拠点機関の情報がまとまっています。地域の支援拠点機関は、介護保険のサービスだけで組み立てが難しいときの相談先になります。
コツ5:失語のある方の「意向」欄を、家族の言葉だけで埋めない
失語は「言葉が出にくい」障害であって、「何も分かっていない」状態ではありません。それなのに、意向の確認が家族への質問だけで終わり、第2表のニーズが全部家族の言葉になっている計画を見かけます。
はい・いいえで答えられる聞き方、選択肢を紙に書いて指さしてもらう方法、表情や身ぶりの読み取り。時間はかかりますが、本人に確かめる手段はあります。どの聞き方ならやりとりできるかは言語聴覚士が評価できるので、関わっている場合は必ず教わってください。「本人の意向:発語なく確認困難」と書く前に、確認の方法を変えたかを自分に問う。ここが失語のプランの分かれ目です。
現場のひとこと
脳卒中のプランは、退院直後がいちばん盛りだくさんになります。リハビリも再発予防も入浴も全部入れたくなりますが、本人はまだ、変わってしまった体と生活を受け止めている途中です。最初の計画は「安全と体調管理」を厚く、「挑戦」は薄めに。慣れてきた2〜3か月後の見直しで、行き先のある目標を足していく。その順番のほうが、結局遠くまで行けます。
運営指導で見られやすいポイント
1. 訪問看護・訪問リハビリテーションなど医療サービスについて、主治医の指示を確認した経過が記録に残っているか(平成11年厚生省令第38号 第13条第20号)
2. 医療サービスの利用にあたり利用者の同意を得て主治医の意見を求め、作成した計画を主治医へ交付した記録があるか(同 第13条第19号・第19号の2)
3. 目標が「麻痺の改善」など医学的な結果ではなく、本人が取り組める行為になっているか
4. 短期目標に期間・頻度・場面が入り、達成の判断ができる形になっているか
5. 失語や高次脳機能障害のある方について、本人の意向をどう確認したかが読み取れるか
6. 福祉用具・住宅改修の位置づけに、身体状況と生活環境からみた必要性が書かれているか
よくある迷いどころ
障害者手帳や障害福祉サービスとの関係はどう整理しますか
40〜64歳で発症した方では、介護保険と障害福祉の両方が話題に出ます。優先関係や併用の可否は、サービスの種類とお住まいの市町村の判断によって扱いが分かれるところです。この記事で確認した法・政令・省令の範囲では一律に言い切れないので、市町村の障害福祉窓口と保険者の両方に、個別の状況を伝えて確認してください。手帳の申請時期は主治医の判断が関わるため、病院の相談員・主治医とも共有を。
40代・50代の方が高齢者中心のデイになじめません
無理もありません。プログラムも会話も親世代に合わせた場に、働き盛りだった方が入るのですから。選択肢は複数あります。リハビリ中心の通所を選ぶ、若い利用者の受け入れ経験を事業所に確認する、曜日や時間帯を短くして始める、通所以外の場(就労支援や当事者の集まり)を市町村・支援拠点機関に聞く。「通わないという結論」の前に、場の側を変えられないかを試してください。
装具が体に合わなくなってきました
装具の修理・作り直しの費用の仕組みは、医療の制度と障害福祉の制度にまたがり、状況によって使う枠が変わります。ケアマネジャーが判断する領域ではないので、主治医・リハビリ職に状態を伝え、費用の枠は市町村の窓口で確認してもらってください。第2表に書くのは「装具の不具合に気づいたら誰が誰につなぐか」の体制です。
本人が「もう良くならない」と言ってリハビリを拒みます
回復の壁に直面した方に「頑張りましょう」は届きません。一度、機能の目標を脇に置いてみてください。畑を見に行く、孫の写真を撮る、行きつけだった店の弁当を買いに行く。本人が「それならしてもいい」と言える行き先を先に見つけて、移動の練習をその手段に置き直す。目標の主役を機能から暮らしに戻すと、動き出せる方がいます。気持ちの落ち込みが長く続く場合は、うつ状態の評価が必要なことがあるため、主治医への相談を優先してください。
まとめ
✓ 脳卒中は特定疾病(施行令第2条第13号「脳血管疾患」)。40〜64歳の方も要介護認定を申請できる(法第7条第3項第2号)
✓ 目標欄に「麻痺が改善」「再発しない」は書かない。生活の行為と行き先で書く
✓ 医療サービスは主治医の指示がある場合に限り位置づける(省令第13条第20号)。意見の確認と計画の交付(第19号・第19号の2)までがセット
✓ 再発予防は数値でなく行動で書く。数字を決めるのは主治医、記録が主治医へ届く仕組みを作るのがケアマネジャー
✓ 高次脳機能障害は「場面」で、失語の方の意向は「聞き方を変えて」確認する
✓ 嚥下障害・誤嚥への備えは【誤嚥性肺炎】の文例集で深掘りしている
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【通所リハビリテーション(デイケア)】ケアプラン第2表の文例集
ケアプラン第2表 目標の文例集|測定可能な長期目標・短期目標
参考・出典
介護保険法(平成9年法律第123号)第7条第3項・第4項/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123
介護保険法施行令(平成10年政令第412号)第2条第13号/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/410CO0000000412
指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)第13条第19号・第19号の2・第20号/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100038
国立循環器病研究センター「脳卒中」/患者の皆様へ・循環器病について知る https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/stroke-2/
国立障害者リハビリテーションセンター 高次脳機能障害情報・支援センター https://www.rehab.go.jp/brain_fukyu/
※文例はあくまで参考です。リハビリテーションの内容と頻度、血圧などの管理目標、服薬・食事の注意点は、必ず主治医の指示とリハビリ専門職・看護職の評価にもとづいて個別に決めてください。後遺症の現れ方には個人差が大きく、制度の取り扱いは保険者によって案内が異なる場合があります。実際の取り扱いについては、主治医およびお住まいの市区町村(保険者)にご確認ください。


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