誤嚥性肺炎で入院していた方が退院してきた日、第2表の長期目標に「誤嚥性肺炎を再発しない」と書きたくなります。ただ、この1行は計画になりません。肺炎が起きるか起きないかは、ケアプランで約束できることではないからです。

書けるのは、その手前にある毎日の行動です。口の中を誰がどこまできれいにするか。どんな形の食事を、どんな姿勢で食べるか。熱が出たとき、誰が最初に気づいて誰に連絡するか。
この記事では、誤嚥性肺炎のある方の第2表で使える文例を、場面ごとに118本集めました。むせが出てきた時期、むせないのに熱を繰り返す時期、入退院を繰り返している方、口から食べ続けたい方、家族が介助している場合、独居、施設入所中まで並べています。気になる行をコピーして、ご本人の状態と指示の内容に合わせて整えてお使いください。
食事の形態・とろみの濃さ・食事中と食後の姿勢・水分のとり方は、主治医や歯科医師の指示と、言語聴覚士・管理栄養士の評価にもとづいて決まります。 ケアマネジャーが独自に決めて書く欄ではありません。計画には「誰の指示・誰の評価で決まったか」が読み取れる形で落とします。
ニーズ(生活全般の解決すべき課題)の文例

この章の文例は「生活全般の解決すべき課題(ニーズ)」欄に書きます。主語はご本人です。
むせが出てきた(本人に自覚がある)
- 食事のときにむせることが増えたが、これからも口から食べ続けたい。
- むせるのが怖くて食事が楽しめなくなったので、安心して食卓につきたい。
- 水やお茶でむせるようになったので、飲み方を教わって自分で飲み続けたい。
- 食べるのに時間がかかるようになったが、自分のペースで最後まで食事をとりたい。
むせないのに熱を繰り返す(むせない誤嚥が疑われる)
- むせた自覚はないのに熱が出ることがあるので、体の変化に早く気づいてもらえる形にしたい。
- 食後にのどがゴロゴロすることが増えたので、口とのどの状態を専門職にみてもらいたい。
- 「なんとなく元気がない」ときに、受診したほうがよいか相談できる相手がほしい。
入退院を繰り返している・退院直後
- 入退院を繰り返しているが、今度こそ家での暮らしを続けたい。
- 退院のときに病院で教わった食事の形と姿勢を、家でも続けられるようにしたい。
- 入院で足腰の力が落ちたので、食卓まで自分で歩いて食事をとりたい。
- 体調の変化を早い段階で見つけてもらえる体制のもとで、家で過ごしたい。
口から食べ続けたい(本人・家族の希望)
- 点滴や管ではなく、口から食べる生活をできる限り続けたい。
- 家族と同じ食卓で、同じ時間に食事をとりたい。
- 好きだったものを、形を変えてでも味わい続けたい。
- 食べる楽しみを残したまま、体に合った食事に切り替えていきたい。
- むせることがあると分かったうえで、それでも家族と同じものを口から味わい続けたい。
- 食べる形を変えることについて、家族と一緒に納得できるまで説明を受けたい。
口腔ケアが自己流・義歯が合わない
- 歯磨きを自分でしているが、これでよいのか確かめたい。
- 義歯が合わなくなってきたので、噛める状態に整えたい。
- 何年も歯科を受診していないので、口の中を一度みてもらいたい。
- 寝る前の口の手入れを、無理なく続けられる形にしたい。
家族が食事の介助をしている
- 家族に食事を手伝ってもらいながら、落ち着いて食事をとりたい。
- 家族の負担が大きくなりすぎない形で、口から食べる生活を続けたい。
- 食事の時間が家族との言い合いにならないようにしたい。
独居で食事と口腔ケアの様子が見えにくい
- 一人暮らしなので、食事の様子や体調の変化に誰かが気づいてくれる体制がほしい。
- 自分だけで用意すると同じものになりがちなので、体に合った食事をとりたい。
- 熱が出たときにすぐ連絡できる手段を持って、一人暮らしを続けたい。
認知症があり、口腔ケアを嫌がる・食事に集中できない
- 口の中の手入れを嫌がってしまうが、無理のないやり方で続けたい。
- 食事の途中で立ち歩いてしまうので、落ち着いて食べられる環境がほしい。
- 食べ物を口にためたままになることがあるので、そばで見ていてほしい。
- 食べたことを忘れて続けて食べようとするので、量と間隔を一緒に整えてほしい。
食べる量が減って痩せてきた
- 食が細くなって体重が減ってきたので、無理なく食べられる形にしたい。
- 食事の途中で疲れてしまうので、少ない回数でも必要な量をとれるようにしたい。
- 水分をとる量が減っているので、飲みやすい形で続けたい。
薬が飲み込みにくい
- 薬が口に残ってしまうので、飲みやすい形にしたい。
- 薬をむせずに飲めるようになって、治療を続けたい。
- 自己判断で薬をやめずに済むよう、飲みにくさを相談できる相手がほしい。
- 飲んでいる薬が多いので、飲み込みへの影響も含めて一度みてもらいたい。
施設に入所している(施設サービス計画)
- 入所してからも、口から食べる生活を続けたい。
- 自分に合った食事の形を、職員と歯科の専門職に確かめてもらいたい。
- 居室で一人で食べるのではなく、食堂で人と一緒に食事をとりたい。
胃ろうや点滴を使いながら、口からも楽しみたい
- 栄養は管から入れていても、好きなものを少しでも口から味わいたい。
- 口を使わない時間が長いので、口の中を清潔に保ちたい。
- 体調が落ち着いている日は、家族と一緒に食卓につきたい。
長期目標の文例

この章の文例は「長期目標」欄に書きます。「肺炎を起こさない」ではなく、本人が取り組める行動と、続けられる暮らしの形で書きます。
- 毎日の口腔ケアが習慣になり、口から食べる生活を続けられる。
- 指示された食事の形と姿勢で、家族と同じ食卓で食事を楽しめる。
- 食事の様子と体調の変化を支援者が把握できる体制のもとで、在宅生活を続けられる。
- 退院前の食事のリズムを取り戻し、家での楽しみを続けられる。
- 歯科の受診と手入れが続き、噛める状態で食事をとれる。
- 家族が介助の方法を教わりながら、無理なく食事の時間を過ごせる。
- 見守りと連絡の体制のもとで、一人暮らしを続けられる。
- いつもと違う様子に気づいたときに医療につながる段取りのもとで、安心して過ごせる。
- 必要な栄養と水分をとりながら、自分のペースで一日を過ごせる。
- 体力が保たれ、食卓まで自分で移動して食事をとれる。
短期目標の文例

この章の文例は「短期目標」欄に書きます。誰が見ても達成できたかどうかが分かる形にします。
口腔ケア
- 毎食後と就寝前に口の中の手入れを行い、義歯を外して洗える。
- 自分で磨きにくいところを支援者に仕上げてもらい、口の中を清潔に保てる。
- 歯科医師・歯科衛生士の助言を受けて、自分に合った道具でケアを続けられる。
- かかりつけの歯科を決め、定期的に受診できる。
- 起床時の口の手入れを、朝食の前に行える。
食事の形・とろみ
- 主治医や言語聴覚士が示した食事の形で、毎食を続けられる。
- とろみの濃さを家族と支援者がそろえ、どこでも同じ濃さで飲める。
- とろみのつけ方を家族が実際にやってみせられ、迷ったときは訪問看護師に確認できる。
- 避けるよう指示のあった食品を、本人と家族が言える。
- 配食サービスや市販品を選ぶときの目安を、管理栄養士に確認できる。
- とろみの濃さを、訪問する支援者全員が同じ計量で行えるよう、計量の道具と手順を台所に置いておける。
食事中・食後の姿勢と見守り
- 主治医や言語聴覚士から示された姿勢で食事をとれる。
- 一口の量とペースを支援者と確かめながら、落ち着いて食事ができる。
- 食後は指示された時間、体を起こして過ごせる。
- 食事中はテレビを消し、食べることに集中できる。
- 食後に口の中に食べ物が残っていないか、本人と支援者が確認できる。
いつもと違う様子への気づきと受診の段取り
- 発熱・食欲の低下・元気のなさ・のどのゴロゴロ音など、いつもと違う様子を家族と支援者が言える。
- 呼吸が苦しそう・顔色が悪い・意識がはっきりしないときは、その場ですぐ主治医または訪問看護師(夜間・休日は事前に決めた連絡先)へ連絡できる。
- 熱・食欲の低下・元気のなさ・のどのゴロゴロ音に気づいたときは、その日のうちに主治医または訪問看護師へ連絡できる。
- 連絡先の一覧を電話のそばに貼り、家族も支援者もすぐ見られる。
- 夜間や休日に体調が変わったときの連絡先を、本人と家族が手元で確認できる。
- 食べた量・むせの有無・熱の有無を記録に残し、受診のときに主治医へ見せられる。
- 飲んでいる薬の一覧と、飲みにくさ・飲み残しの様子を記録に残し、主治医と薬剤師に伝えられる。
- 予防接種を受けているかどうかを確認し、必要かどうかを主治医に相談できる。
栄養と体重
- 週1回体重を測り、記録できる。
- 1日3食のうち食べられた量を、家族と支援者が同じ書き方で記録できる。
- 管理栄養士の助言をもとに、間食や補助食品を使って必要な量をとれる。
- 1日にとる水分の目安を把握し、記録できる。
- 家族が近くにいない場合は、訪問した支援者が食べた量を記録し、ケアマネジャーが月1回まとめて主治医へ伝えられる。
家族の介助
- 家族が訪問看護師から介助の方法(座り方・一口の量・声のかけ方)を教わり、実際にやってみられる。
- 介助中に迷ったことを、その場で支援者に相談できる。
- 家族が休める日をつくり、介助を一人で抱え込まずに続けられる。
退院直後
- 退院時に病院から示された食事の形・とろみ・姿勢の指示を、支援者全員が共有できる。
- 退院後2週間は、食事の様子と体調について訪問看護師の確認を受け、気づいたことを家族が伝えられる。
- 入院前と変わった点を支援者と確かめ、家での食事の場所と時間を決められる。
認知症がある場合
- 声のかけ方や道具を変えながら、1日1回は口の中の手入れができる。
- 落ち着いて食べられる席と時間を決め、食事に集中できる。
- 食事の途中で手が止まったときに、支援者の声かけで再開できる。
サービス内容の文例

この章の文例は「サービス内容」欄に書きます。
医療・歯科との連携
- 訪問看護:食事の様子と口の中の観察、発熱や痰の状態の確認、いつもと違う様子があったときの対応(主治医の指示に基づく)、家族への介助方法の指導、主治医との連携。
- 訪問看護:退院直後の期間は主治医の指示に基づき訪問の頻度を調整し、食事の様子・発熱・痰の状態を確認する。
- 居宅療養管理指導(歯科医師):口の中の評価、義歯の調整、口腔ケアの方針の決定。
- 居宅療養管理指導(歯科衛生士等):歯科医師の指示に基づく、本人と家族に合った口腔ケアの方法の実地指導。
- 訪問歯科診療:むし歯や歯周病の治療、義歯の作製・修理、噛める状態の確保。
- 居宅療養管理指導(医師・薬剤師):飲み込みやすい剤形への変更の相談、服薬時のむせへの対応、嚥下に影響しうる薬の確認と主治医への情報提供。
- 居宅療養管理指導(管理栄養士):食事の形に合わせた献立の助言、必要な栄養量と水分量の確認(通院または通所が困難な方で、医師が特別食の必要性を認めた場合、または低栄養状態と判断した場合に位置づけられる。嚥下困難者のための流動食は特別食に含まれるため、主治医に相談する)。
- 主治医:食事の形態・とろみ・姿勢・食後の過ごし方の指示、発熱時の対応の指示、嚥下の評価が必要な場合の医療機関への紹介。
- 訪問リハビリテーション(言語聴覚士・作業療法士など):摂食嚥下機能の評価と訓練、食事の姿勢と自助具の調整(主治医の指示に基づく)。
- 訪問介護・訪問看護など:職員が確認した口の健康状態を歯科医療機関とケアマネジャーへ伝え、必要な歯科受診につなげる。
- ケアマネジャー:サービス事業所から受けた口腔や食事、服薬の情報を、本人の同意を得て主治医などへ伝える。
- ケアマネジャー:夜間・休日の連絡先を主治医と訪問看護事業所に確認し、本人・家族・支援者全員へ共有する。
毎日の口腔ケアと食事の支援
- 訪問介護(身体介護):口腔ケアの声かけ・見守り・一部介助、義歯の洗浄の手伝い、指示された食事の形に合わせた調理(嚥下困難者のための調理は身体介護として位置づける)、食事の見守りと食べた量の記録(食事の形やとろみの濃さを独自に変えることはしない)。
- 配食サービス:食事の形に対応した食事の提供と、手渡し時の安否確認。
- 福祉用具貸与:背上げのできる特殊寝台など、指示された姿勢を保ちやすくする用具の検討(要支援1・2、要介護1の場合は例外給付の手続きが要るため、医師の所見と担当者会議の記録をそろえて市町村へ確認する)。
- 自助具・食器の調整:すくいやすい皿や持ちやすいスプーンの検討(作業療法士や福祉用具専門相談員に相談)。
通所・短期入所
- 通所介護/通所リハビリテーション:口腔機能向上の取り組み、食事の様子の観察と事業所間での情報共有、入浴と活動による体力の維持。
- 短期入所生活介護/短期入所療養介護:家族の休息(レスパイト)の確保と、その間の食事内容・口腔ケアの継続。
独居・見守りの体制
- 訪問系サービスの曜日調整:訪問のない日が続かないよう組み合わせ、毎日誰かの目が入る形の確保。
- 緊急通報装置・見守りサービス:発熱や体調不良のときに外部へ連絡できる体制の確保。
- 多職種での情報共有:食事の形・とろみの濃さ・姿勢・連絡の基準を支援者全員で共有し、変化があれば訪問看護・主治医へ連絡。
- 民生委員・近隣・家族による定期的な連絡と安否確認。
本人・家族の取り組み
- 本人:毎食後と就寝前の口腔ケア、指示された姿勢での食事、食後に体を起こして過ごすこと。
- 家族:食事の形ととろみの濃さをそろえること、食べた量と体調の記録、受診への同行。
- 家族:介助の方法を訪問看護師や言語聴覚士から教わり、迷ったときに相談すること。
- 支援者(家族が担えない場合):食事の形ととろみの濃さをそろえること、食べた量と体調の記録、受診結果の共有。
ここから「書き方のコツ」(深めたい方向け)
すぐ使いたい方は、ここから先は読まなくて大丈夫です。誤嚥性肺炎ならではの、書き分けのコツをまとめました。
コツ1:「誤嚥性肺炎を再発しない」を長期目標にしない
❌ 誤嚥性肺炎を再発せず、健康に過ごすことができる。
⭕ 毎日の口腔ケアと、指示された形での食事を続け、家族と同じ食卓で食事を楽しめる。
📝 肺炎が起きるかどうかは、本人の努力で決まるものではありません。目標欄に書けるのは、本人が取り組めることだけです。 「再発しない」を目標にすると、再発した瞬間にこの計画は「失敗した計画」になります。実際にはその半年のあいだに、就寝前の口腔ケアが習慣になり、家族が一口の量を覚え、本人が食卓に座り続けていたかもしれません。第2表に残すのは、その積み重ねのほうです。
コツ2:口腔ケアは「する」で止めず、「誰が・いつ・どこまで」を書く
❌ 口腔ケアを行い、口腔内を清潔に保つ。
⭕ 毎食後は本人が自分で歯を磨き、就寝前は訪問介護員の見守りのもとで仕上げをする。義歯は毎晩外して洗う。
📝 誤嚥性肺炎は、唾液や食べ物と一緒に細菌を気道に吸い込むことで起こるとされ、口の中の細菌が増えていることが発症に関わります(日本呼吸器学会)。口腔ケアは「余裕があればやること」ではなく、計画の中心に置く支援です。それなのに「口腔ケアの実施」とだけ書かれた計画では、朝は本人・夜は家族・訪問時は職員と重なったり、逆に誰もやらない時間帯ができたりします。時間帯ごとに担当を割り振ると、抜けが目に見えます。
歯科につなぐ道筋も書いておきます。令和6年度の報酬改定で新設された口腔連携強化加算(50単位/回・月1回)は、訪問介護・訪問看護・訪問リハビリテーション・短期入所生活介護・短期入所療養介護・定期巡回・随時対応型訪問介護看護が対象で、事業所の職員が行った口の健康状態の評価は、歯科医療機関とケアマネジャーの両方に届きます。受け取ったケアマネジャー側にも動きが求められていて、サービス事業所から受けた口腔機能や服薬状況などの情報を、本人の同意を得て主治医などへ提供することが運営基準に定められています(平成11年厚生省令第38号 第13条第13号の2)。
対象がこの6サービスに限られている点は、担当者会議の前に押さえておいてください。通所介護と通所リハビリテーションは、この加算の対象に入っていません。 通所系は口腔機能向上加算という別の枠組みで動きます。訪問入浴介護と夜間対応型訪問介護も対象外です。デイでも同じ仕組みが使えると思い込んだまま会議に出ると、その場で話が止まります。
コツ3:食事の形ととろみは「誰が決めたか」が分かる形で書く
❌ 食事はきざみ食とし、水分にはとろみをつける。
⭕ 主治医と言語聴覚士から示された食事の形で提供し、とろみの濃さは全員が同じ段階でそろえる。
📝 やっかいなのは、食形態の呼び名が事業所ごとに違うことです。「きざみ」「軟菜」「ソフト食」は各施設が付けた名前で、同じ言葉でも中身がそろっているとは限りません。日本摂食嚥下リハビリテーション学会の「学会分類2021」は、病院・施設・在宅で共通して使えることを目的に作られた分類です。食事は0j・0t・1j・2-1・2-2・3・4のコードで、とろみは「段階1 薄いとろみ」「段階2 中間のとろみ」「段階3 濃いとろみ」の3段階で示されます。
ただし、コードだけを書き写しても伝わりません。 同じ分類名でも2013年版と2021年版があるので、書くときは「学会分類2021(食事)コード3」「学会分類2021(とろみ)段階2 中間のとろみ」のように、分類名・年・段階名までそろえます。学会自身も、早見表だけでは書ききれない内容があるため解説文を熟読したうえで活用してほしいと述べています。
それでも、退院時にコードで情報をもらえない地域はあります。そのときは、病院で出ていた食事の現物写真か、「主食は全がゆ、副食はペースト、水分は中間のとろみ」という具体的な言葉で受け取ってください。「きざみ」「ソフト食」だけで持ち帰らないことが、いちばんの安全策です。決めるのはケアマネジャーではありませんが、同じ言葉で全員に配るところまではケアマネジャーの仕事です。
食後に体を起こしておく時間も同じです。退院時の書類に分数が書かれていないことはよくあります。そのときは「食後しばらく」で済ませず、担当者会議で訪問看護師か主治医に確認して分数で決めてください。分数が入って初めて、誰が訪問しても同じ支援になります。
コツ4:「むせないから大丈夫」を計画の前提にしない
❌ 食事中にむせることなく、安全に食事をとることができる。
⭕ 発熱・食欲の低下・元気のなさ・のどのゴロゴロ音など、いつもと違う様子を家族と支援者が言える。
📝 むせは、気管に入りかけたものを押し返そうとする体の反応です。ところが、加齢に加えて脳梗塞後遺症やパーキンソン病などの神経疾患があると、のどの奥の感覚と反射が鈍くなります。すると、むせないまま気管に入ることがあり、これを「不顕性(むせない)誤嚥」と呼びます。嚥下に影響する薬を飲んでいる場合も同じことが起こるとされています(日本呼吸器学会、国立長寿医療研究センター)。「まだ80前だから関係ない」ではなく、脳血管疾患の既往と薬の一覧のほうを先に見てください。
誤嚥するのは食事のときだけではありません。眠っているあいだに唾液を飲み込みそこねることがあり、そのとき口の中の細菌がそのまま気道に入ります。就寝前の口腔ケアを目標に入れるのは、この時間帯があるからです。
もう一つ、症状の出方にも落とし穴があります。誤嚥性肺炎では発熱・咳・膿のような痰といった典型的な症状が出ず、「なんとなく元気がない」「食欲がない」「のどがゴロゴロする」だけのことが多いとされています(日本呼吸器学会)。だから短期目標に置くのは「むせずに食事ができる」ではありません。この、名前の付いていないサインを家族と支援者が言えること。ここを目標にしておくと、モニタリングの視点も「今日はむせたか」から変わります。
連絡の基準を書くときは、「すぐ連絡するサイン」と「その日のうちに連絡するサイン」を分けてください。呼吸が苦しそう・顔色が悪い・意識がはっきりしない、はその場です。1本にまとめて「その日のうちに連絡する」とだけ書くと、急ぐべき場面で待ってしまいます。
コツ5:「危ないけれど食べたい」を、計画の外に置かない
誤嚥のリスクを説明したうえで、それでも口から食べたいと本人が言う。この場面は必ず来ます。胃ろうを勧められて断った方、とろみ茶を嫌がって普通のお茶を飲む方。ここで意向を計画から外してしまうと、支援者は「止めるべきかどうか」を毎回その場で判断することになります。
書き方は難しくありません。ニーズ欄に本人の言葉として意向を残す。サービス内容欄には、「主治医から説明を受けたうえで本人・家族が選んだ食べ方」であることが読み取れる形で書く。担当者会議で確認した日付を支援経過に残す。この3点がそろえば、支援者は迷わず動けます。
決めるのは本人と家族、判断の根拠を示すのは医療職、その全部を計画に残すのがケアマネジャーの仕事です。
軽度者の特殊寝台は、あきらめる前に例外給付を確認する
特殊寝台と特殊寝台付属品は、要支援1・2と要介護1の方には原則として貸与できません(平成27年3月23日 厚生労働省告示第94号 第31号のイ)。ただし、例外給付の取扱いには、医学的判断による例外の例として「嚥下障害による誤嚥性肺炎の回避」が挙げられています。
食後に体を起こしておく必要があるのに、自力では角度を保てない。この状態は、医師の医学的所見と、担当者会議を通じて福祉用具貸与が特に必要と判断した記録をそろえて市町村に確認すれば、貸与できる場合があります。基本調査の「起きあがり」「寝返り」の結果だけを見て引き下がらないでください。 確認の様式と判断は保険者によって分かれるため、申請の前に所管市町村の担当課へご確認ください。
運営指導で見られやすいポイント
- 食事の形・とろみの濃さ・姿勢が、医療職の指示に基づくものとして計画上に見えるか(ケアマネジャーが独自に決めていないか)。
- 訪問看護や訪問リハビリテーションを位置づけるにあたり、主治医などの指示を得た経過が記録に残っているか(平成11年厚生省令第38号 第13条第20号)。
- 医療サービスを入れた計画について、主治医などの意見を求め、作成した計画を主治医などへ交付した記録が残っているか(同 第13条第19号・第19号の2)。
- 口腔ケアについて、誰が・いつ・どこまで行うかが具体的に書かれているか。
- 発熱など状態が変わったときの連絡先と手順が、本人・家族・支援者で共有されているか。
- 目標が「肺炎を起こさない」のような医学的な結果ではなく、本人が取り組める行動になっているか。
現場のひとこと
「今日はむせませんでした」だけの申し送りでは、危ないほうの誤嚥は見つかりません。拾いたいのは、「昼から元気がない」「食後にのどがゴロゴロしている」「食べ終わるのに前より時間がかかる」といった、まだ病名の付いていない言葉のほうです。第2表は、その言葉が誰かの口から出てくるようにするための仕掛けだと思って書いています。
※文例はあくまで参考です。食事の形態やとろみの濃さ、食事中と食後の姿勢、水分のとり方、発熱時の対応は、必ず主治医や歯科医師の指示のもと、言語聴覚士・管理栄養士の評価をふまえて個別に決めてください。嚥下の状態や治療内容には個人差が大きく、期間や保険適用の可否はご本人の状態や保険者の判断によって異なります。ご本人の状況に合わせ、主治医や訪問看護師・歯科の専門職と相談しながら整えてお使いください。
参考・出典
- 一般社団法人日本呼吸器学会「A-12 誤嚥性肺炎」
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/a/a-12.html
- 国立長寿医療研究センター「物を食べた時にむせる原因は?」(不顕性誤嚥・口腔ケア)
https://www.ncgg.go.jp/hospital/navi/12.html
- 日本摂食嚥下リハビリテーション学会「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021」
https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2021-manual.pdf
- e-Gov法令検索「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)」
https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100038
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」(口腔連携強化加算)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001230329.pdf
- 厚生労働省 介護保険最新情報Vol.1344「口腔連携強化加算に係るリーフレットについて」(令和7年1月10日)
https://www.mhlw.go.jp/content/001373162.pdf
- 厚生労働省「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」(平成12年3月17日 老計第10号)別紙1-1-3(特段の専門的配慮をもって行う調理=嚥下困難者のための流動食等)
- 厚生労働省「厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等」(平成27年3月23日 厚生労働省告示第94号)第12号(特別食に「嚥下困難者のための流動食」を明記)/第31号のイ(特殊寝台等の対象となる状態像)
- 軽度者に対する福祉用具貸与の例外給付の取扱い(自治体の運用資料の例:札幌市)
https://www3.city.sapporo.jp/download/shinsei/procedure/03153_pdf/presen_03153_007.pdf
あわせて読みたい
- 介護予防サービス計画書「口腔機能向上」の文例集
https://caremane-tane.com/oral-function-prevention-care/
- 介護予防サービス計画書「栄養改善」の文例集
https://caremane-tane.com/nutrition-improvement-prevention-care/
- 【訪問看護】ケアプラン第2表の文例集
https://caremane-tane.com/houmonkango-care-plan2/
- 【ターミナル期・看取り】ケアプラン第2表の文例集
https://caremane-tane.com/terminal-care-plan2/
- 【脳血管疾患後遺症(片麻痺・在宅リハビリ)】ケアプラン第2表の文例集
https://caremane-tane.com/stroke-care-plan2/
- 【パーキンソン病】ケアプラン第2表の文例集
https://caremane-tane.com/parkinson-care-plan2/
- 主治医・医療機関との連携文例集
https://caremane-tane.com/shujii-iryou-renkei-bunrei/
- モニタリング(記録・報告書)の文例集
https://caremane-tane.com/monitoring-bunrei-care/
- ケアプラン記入マップ|様式の各欄から文例を探す
https://caremane-tane.com/care-plan-map/
本記事は「ケアマネのタネ」編集部が、現場のケアマネジャー・社会福祉士の視点を持ち寄って作成しています。実在の利用者情報は使わず、すべて一般化した架空の文例として掲載しています。運営者の経歴と、文例を使うときの注意は運営者情報(/about/)に記載しています。


コメント