「安心して歩行できる」。要支援2の方の予防プランで、目標の欄にこう書きかけていませんか。

この目標は、半年後の評価の日に困ります。「安心して」は本人の気持ちで、外から確かめる方法がありません。「歩行できる」も、どこをどのくらい歩けたら達成なのかが決まっていません。
直すと、こうなります。「週に2回、いつものスーパーまで歩行車で歩いて行き、好きなものを自分で選んで買える」。場所と回数と、そこで何をするかが入ると、できたかどうかを本人と一緒に数えられます。国の様式例の記載要領も、目標は「漠然としたものではなく、評価可能で具体的なものとする」と書いています。
この記事では、膝と腰の痛みがある80代の女性(要支援2・架空の事例)を1人決めて、介護予防サービス・支援計画書を最初の欄から評価表まで通しで書きました。欄ごとに「よくある書き方→直した書き方」と、言葉を入れ替えて使える文例を並べています。運動器・口腔・栄養などテーマ別の文例は、予防プランの6本の記事に分けています。
文例の中の「◯◯」は、担当の方に合わせて入れ替えて使ってください。事例の人物・事業所・お店はすべて架空です。
この記事の並び方
1章目:文例の前に(様式と制度で押さえる5つ)
2章目:架空の事例「Aさん」
3章目:計画書を欄の順に書く(目標とする生活から総合的な方針まで)
4章目:評価表を書く
5章目:書き方のコツ・運営指導で見られやすいポイント・よくある迷いどころ
文例の前に:要支援2の予防プランで押さえる5つ
制度の話は、欄の書き方に直接つながるところだけにしました。原文は末尾の出典から確かめられます。
1. 欄の並び:介護予防サービス・支援計画書
要介護の方の居宅サービス計画書(第1表〜第3表)とは、欄の並びが違います。厚生労働省の様式例「介護予防サービス・支援計画書(ケアマネジメント結果等記録表)」は、次の順に進みます。
– 目標とする生活(1日・1年)
– アセスメント領域と現在の状況(運動・移動/日常生活(家庭生活)/社会参加、対人関係・コミュニケーション/健康管理の4領域)
– 本人・家族の意欲・意向
– 領域における課題(背景・原因)
– 総合的課題
– 課題に対する目標と具体策の提案
– 具体策についての意向(本人・家族)
– 目標
– 支援計画(目標についての支援のポイント/本人等のセルフケアや家族の支援、インフォーマルサービス/介護保険サービス又は地域支援事業/サービス種別/事業所/期間)
– 健康状態について、総合的な方針(生活不活発病の改善予防のポイント)
評価は、別の様式「介護予防支援・介護予防ケアマネジメント サービス評価表」に書きます。市町村が独自の様式を使っている場合もあるので、欄の名前は手元の様式に合わせてください。
2. 目標は「漠然としたものではなく、評価可能で具体的なもの」
様式例の記載要領は、「課題に対する目標と具体策の提案」の欄について、こう書いています。
> 適切にアセスメントがされたかどうかは、この項目と意向を踏まえた目標と具体策を比較すると判断できるため、(中略)この項目をひとつの評価指標とすることができる。このため、目標は漠然としたものではなく、評価可能で具体的なものとする。
評価表には、計画書の「期間」をそのまま写し、その期間に目標がどの程度達成できたかを具体的に書きます。つまり、評価の日に書けることは、計画を立てた日の目標の書き方で決まります。
「目標とする生活」の欄も同じです。記載要領は、漠然としていてイメージできない場合は、毎日の生活の中で何が変わればよいのかを、本人と一緒に日常生活のレベルで考えるとしています。
3. 通所型サービスは、市町村で名前も中身も違う
要支援の方が使う「通所型サービス」は、介護予防・日常生活支援総合事業(以下「総合事業」)のサービスです。法律上の名前は第1号通所事業です。国のガイドラインは、通所型サービスを「従前相当サービス」と「多様なサービス・活動」に分けて整理しています。
名称・回数・中身は、市町村ごとに違います。この記事の文例は「通所型サービス(総合事業)」と書いているので、保険者が使っている呼び方に置き換えてください。医療職によるリハビリが必要と主治医が判断する場合は、予防給付の介護予防通所リハビリテーションも選択肢になります。
4. 歩行器と杖は、要支援でも借りられる。一部は2024年4月から選択制
福祉用具貸与には、要支援1・2と要介護1の方が原則として使えない品目があります。車いす・車いす付属品・特殊寝台・特殊寝台付属品・床ずれ防止用具・体位変換器・認知症老人徘徊感知機器・移動用リフトの8つです(自動排泄処理装置は要介護3まで原則対象外)。歩行器・歩行補助つえ・手すり・スロープはこの中に入っていないので、要支援2の方も介護予防福祉用具貸与で使えます。
杖には注意が1つあります。貸与の「歩行補助つえ」は、松葉づえ・カナディアン・クラッチ・ロフストランド・クラッチ・プラットホームクラッチ・多点杖に限られています(老企第34号)。よく見かけるT字の1本杖は、この中に入っていません。
令和6年(2024年)4月からは、固定用スロープ・歩行器(歩行車を除く)・単点杖(松葉づえを除く。カナディアン・クラッチ、ロフストランド・クラッチ、プラットホームクラッチのこと。T字杖は含まない)・多点杖の4つが、貸与と販売のどちらかを選べる「選択制」になりました。選択制の歩行器は、脚がすべて杖先ゴムなどの形になっている、固定式・交互式の歩行器を指します。車輪やキャスターが付いた歩行車は選択制に入らず、貸与だけです。
選択制の用具を使うときの流れは、厚生労働省の資料で次のように示されています。
1. ケアマネジャーが、本人・家族に選択制の趣旨を説明する
2. 医師などの所見をふまえ、サービス担当者会議などで協議して提案する(提案例:長期の利用が見込まれるので販売/利用期間がこの段階では判断できないので貸与)
3. 本人が貸与か販売かを選ぶ
4. 貸与を選んだ場合、ケアプランと福祉用具サービス計画などに、貸与を選んだ理由とモニタリングの時期を書く。福祉用具専門相談員のモニタリングは、利用開始時から6か月以内に少なくとも1回行う
そのうえで、介護予防支援の基準(第30条第24号)は、計画に介護予防福祉用具貸与を位置づけるときは貸与が必要な理由を計画に書くこと、必要に応じて随時サービス担当者会議を開いて継続の必要性を確かめ、継続するならその理由も書くことを求めています。販売を位置づける場合も、必要な理由を書きます(第25号)。
福祉用具の文例は、福祉用具の記事にまとめています。
5. 予防給付を使うかどうかで、計画の呼び名が変わる
歩行車を介護予防福祉用具貸与で借りると、予防給付のサービスを使うことになります。その間は「指定介護予防支援」として計画を立てます。予防給付のサービスを使わなくなり、通所型サービスなど総合事業のサービスだけになると、「介護予防ケアマネジメント」の対象に変わります(厚生労働省の介護予防ケアマネジメントの通知)。
様式は、介護予防支援の様式例を使うほか、介護予防ケアマネジメントでは市町村の判断で任意の様式も使えます。切り替わるときの手続きは、地域包括支援センターと保険者に確かめておきます。
架空の事例:80代・要支援2の「Aさん」
ここからは、この1人の方を通して書いていきます。複数の方を混ぜた架空の事例です。
– Aさん、84歳の女性。一人暮らし。長女が隣の市に住み、週末に来る
– 要支援2。膝と腰に痛みがあり、整形外科に月1回通院している
– 室内は家具につかまって移動。外は自分で買ったT字の1本杖で歩ける。片道10分ほどで腰が痛み、休みたくなる
– 以前は近所のスーパーへ歩いて通い、好きな果物やお惣菜を選ぶのが楽しみだった。痛みが出てからは、買い物は長女の週末のまとめ買いに頼っている
– 本人の言葉:「近所のスーパーに行って、自分で好きなものを買いたい」
– 使うサービス:運動のための通所型サービス(総合事業)を週1回、座面つきの歩行車を介護予防福祉用具貸与で
計画書を欄の順に書く:よくある書き方→直した書き方と文例
様式の左から右へ、欄の順に進みます。各欄の文例はAさんに合わせていますが、言葉を入れ替えれば別の方にも使えます。
目標とする生活(1日・1年)
記載要領は、1日と1年の両方を書かなくてもよく、2つが関係していなくてもよいとしています。「1年」は、本人の取り組みで達成できる具体的な目標にします。
【よくある書き方】1年:安心して在宅生活を送りたい。
【直した書き方】1年:近所のスーパーに自分で歩いて行き、好きな果物やお惣菜を選んで買う生活を続けたい。
「安心」「在宅生活」は、誰の計画にも当てはまる言葉です。本人の口から出た「近所のスーパー」「好きなもの」を、そのまま残します。
1日の文例
- 朝食のあと、居間の椅子で膝の体操をしてから一日を始める。
- 午前中に一度は外に出て、家の前の道を歩く。
- その日に買ったもので、夕食を一品つくる。
- 朝に膝と腰の痛みを確かめて、強い日は家の中で体を動かす日にする。
- 昼間は横にならず、居間の椅子で過ごす時間をつくる。
1年の文例
- 近所のスーパーまで歩いて行き、好きなものを自分で選んで買い続けたい。
- 季節の果物を自分で選んで、長女の家族にも持たせてあげたい。
- 年末の買い出しを、長女と一緒に自分の足で回りたい。
- 地区の通いの場の体操に顔を出し、なじみの人とまた話したい。
- 膝の痛みと付き合いながら、今の家での一人暮らしを続けたい。
アセスメント領域と現在の状況
4つの領域ごとに、自分でしているか、手伝ってもらってしているかを書きます。記載要領は、本人・家族から聞いたことだけでなく、計画作成者が観察したことも書くとしています。
【よくある書き方】運動・移動:膝・腰痛あり。歩行不安定。
【直した書き方】運動・移動:室内は家具につかまって移動している。外出時はT字の1本杖を使い、自宅から先の角(約200m)までは休まず歩けるが、その先で腰の痛みにより立ち止まる(訪問時に一緒に歩いて確認)。
「歩行不安定」では、半年後に何と比べればよいかが分かりません。どこまで歩けて、どこで止まるかを書いておくと、評価の日の比べる相手になります。
運動・移動の文例
- 室内は家具につかまって移動している。玄関の上がり框は、手すりにつかまって昇り降りしている。
- 外出時は自分で購入したT字の1本杖を使っている。片道10分ほど歩くと、腰の痛みで休みたくなると本人が話す。
- 以前は徒歩でスーパーまで通っていたが、膝の痛みが出てからは行っていない。
- 椅子からの立ち上がりは、テーブルに手をついて行っている。
日常生活(家庭生活)の文例
- 買い物は、週末に長女がまとめて買ってきている。本人は「自分で選べないのがつまらない」と話す。
- 調理は簡単なものを自分で作っている。立ち続けると腰が痛むため、椅子に座って下ごしらえをしている。
- 掃除機をかけるのは負担が大きく、居間だけ週1回かけている。
- ゴミ出しは、集積所まで杖で歩いて自分で出している。
社会参加、対人関係・コミュニケーションの文例
- 以前はスーパーでなじみの店員や近所の人と立ち話をしていた。外出が減ってからは、人と話すのは長女の電話と訪問のときが中心になっている。
- 地区の通いの場には、膝の痛みが出てから参加していない。
- 長女とは毎日電話で話している。会話のやりとりに困りごとはみられない。
健康管理の文例
- 整形外科に月1回、長女の車で通院している。処方薬は自分で管理して飲めている。
- 痛みが強い日は、昼間も横になって過ごす時間が長くなると本人が話す。
- 食事は1日3食とれている。買い物に行けないため、果物や生ものが少なくなっている。
- 入浴は自宅の浴槽で週3回。浴槽をまたぐときに膝が痛むと話す。
本人・家族の意欲・意向
記載要領は、「◯◯できるようになりたい」「手伝ってもらえば◯◯したい」の形で書き、理由も確かめるとしています。本人と家族の意向が違うときは、それぞれ書きます。
【よくある書き方】本人:このままの生活を続けたい。家族:転ばないでほしい。
【直した書き方】本人:「近所のスーパーに行って、自分で好きなものを買いたい。人に頼むと、食べたいものと違うものが来るから」。長女:「一人で外を歩くのは心配。でも、母が買い物を楽しみにしていたのは知っているので、できる形があればやらせてあげたい」。
消極的な意向が出たときは、すぐに計画を立てず、なぜ消極的なのかを聞いて書きます。記載要領も、その理由を明らかにすることが大切だとしています。
文例
- 本人:「膝が痛くても、杖があれば少しは歩ける。できれば自分で買い物に行きたい」
- 本人:「途中で座れるところがあれば、スーパーまで行ける気がする」
- 本人:「体操は苦手だけど、買い物に行くためならやってみる」
- 本人:「人に迷惑をかけたくないから、無理はしたくない」(外出を控える理由として、転んで長女に迷惑をかけることへの心配を話された)
- 本人:「デイサービスに行くほど弱っていない」(通所に消極的。理由を伺うと、知らない人ばかりの場所へ行く不安を話された)
- 長女:「平日は仕事で来られない。母が自分で買い物できると、週末の負担が減って助かる」
- 長女:「転んで骨折するのがいちばん心配。歩くときの道具は使ってほしい」
- 長女:「母が人と話す機会が減っているのが気になる」
領域における課題(背景・原因)
領域ごとに、生活の中で困っていることと、その背景・原因を書きます。記載要領は、このままの状態が続くと将来どうなるかを予測して書くこともあるとしています。課題があると考えた領域には「□有」に印をつけます。
文例
- 運動・移動:膝と腰の痛みで続けて歩ける距離が短くなり、休む場所のない道では外出をためらっている。このまま外出が減ると、歩く力がさらに落ちるおそれがある。
- 日常生活:買い物を長女に頼っており、本人が食べたいものを選べていない。本人の楽しみだった役割がなくなっている。
- 日常生活:腰の痛みで立ち仕事が続かず、調理や掃除の量を減らしている。
- 社会参加:外出が減り、近所の人や店員と話す機会がなくなっている。
- 健康管理:痛みの強い日に横になる時間が長く、体を動かす量が日によって大きく変わっている。
- 日常生活(入浴):浴槽をまたぐときに膝が痛む。自宅の浴槽で週3回の入浴は続けられている(課題□有/今回は優先度が低く次期に検討)。
総合的課題
各領域の課題に共通する背景をまとめ、優先度の高い順に番号をつけます。記載要領は、この欄には課題だけを書き、意向・目標・具体策は書かないとしています。
【よくある書き方】歩行時に転倒のリスクがあるため、安全に生活できるよう支援が必要。
【直した書き方】1. 膝と腰の痛みで続けて歩ける距離が短くなり、近所のスーパーへの買い物ができなくなっている。外出と人と話す機会が減り、体を動かす量も落ちている。
「支援が必要」は、課題ではなく結論です。今、何ができなくなっていて、それが何につながっているかを書きます。
文例
まとめ方A(外出が減っていることを中心にまとめる場合)
- 1. 膝と腰の痛みで歩き続けることが難しく、買い物などの外出が減っている。そのため体を動かす量と人と話す機会がともに減り、生活の範囲が狭くなりつつある。
- 2. 立ち続けることが難しく、調理や掃除を減らしている。家の中での役割が少なくなっている。
まとめ方B(買い物の楽しみをなくしたことを中心にまとめる場合)
- 1. 自分で選んで買う楽しみをなくし、買い物を長女に頼る生活が続いている。外出が減ったことで、歩く力が落ちるおそれがある。
- 2. 痛みの強い日に横になって過ごす時間が長く、活動量が日によって大きく変わっている。
課題に対する目標と具体策の提案
ここは計画作成者が専門的な立場から出す提案で、本人・家族の意向はまだ入りません。記載要領は、この欄を地域包括支援センターが確認するときの評価の目安にできるとしています。「漠然としたものではなく、評価可能で具体的なもの」が求められるのは、この欄です。
【よくある書き方】目標:安心して歩行できる。具体策:デイサービスで運動する。
【直した書き方】目標:週に2回、近所のスーパーまで歩行車で歩いて行き、好きなものを自分で選んで買える。具体策:①通所型サービスで、歩く距離を延ばす運動と休み方の練習をする ②座面つきの歩行車を借り、途中で座って休めるようにする ③通所のない日は自宅で膝の体操を1日1回行う ④買い物に行った日をカレンダーに記録する。
文例
- 目標:週に2回、近所のスーパーまで歩いて行き、好きなものを自分で選んで買える。
- 目標:自宅からスーパーまでの片道を、途中1回の休憩で歩ける。
- 目標:通所のない日に、膝の体操を1日1回、自分で続けられる。
- 具体策:通所型サービスで、休まずに歩ける距離を少しずつ延ばす運動と、痛みが出たときの休み方を練習する。
- 具体策:座面つきの歩行車を借りて、スーパーまでの道で座って休めるようにする。
具体策についての意向(本人・家族)
提案に対する本人・家族の考えを書きます。合意できたら「◯◯が必要だと思う」「◯◯を行いたい」の形で、合意できなかったら、その理由を書きます。
文例
- 本人:「歩行車があれば途中で座れるので、使ってみたい」
- 本人:「体操は毎日は自信がない。テレビを見ながらできるなら続けられるかもしれない」
- 本人:「通所は週1回なら行ってみる。様子が分かれば安心できる」
- 本人:「歩行車は見た目が気になる」(使うことにためらいがある。まずは試しに使ってみて決めたいとのこと)
- 長女:「歩行車を使ってくれるなら、一人で買い物に行くのも賛成です」
目標
本人・家族・計画作成者の三者が合意した目標を書きます。提案どおりで合意できた場合は、記載要領では「同左」「提案どおり」でもよいとしています。この記事の核は、この欄です。
「安心して歩行できる、じゃだめなんですか?」。だめではありません。ただ、評価の日に「達成」か「未達成」かを決める手がかりがありません。直した書き方を3組並べます。
【よくある書き方1】安心して歩行できる。
【直した書き方1】週に2回、近所のスーパーまで歩行車で歩いて行き、好きなものを自分で選んで買える。
【よくある書き方2】下肢筋力の維持・向上を図る。
【直した書き方2】自宅からスーパーまでの片道を、途中のベンチで1回休んで歩ける。
【よくある書き方3】デイサービスに休まず通う。
【直した書き方3】通所で覚えた膝の体操を、通所のない日も朝食のあとに自分で続けられる。
直した書き方には、場所・回数(または距離)・そこで何をするかの3つが入っています。「下肢筋力」は手段で、本人にとっての目的は「スーパーまで歩けること」です。「通所に通う」は、通所の欄に書くことです。
「お店の名前まで書いていいの?」。実際の計画書には、本人がいつも行くお店の名前を入れておくと、評価の日に本人と同じものを思い浮かべて話せます。この記事では「◯◯(いつものスーパー)」としています。
文例
- 週に2回、◯◯(いつものスーパー)まで歩行車で歩いて行き、好きなものを自分で選んで買える。
- 週に1回は、自分で選んだ果物を買って帰れる。
- スーパーまでの片道を、途中1回の休憩で歩ける。
- 通所型サービスの日に、玄関から送迎の車まで歩行車を使って自分で歩ける。
- 通所のない日に、膝の体操を1日1回、自分で続けられる。
- 買い物に行った日を、自分でカレンダーに丸をつけて記録できる。
- 月に1回は、地区の通いの場に歩いて出かけられる。
- 買ってきたもので、週に2回は自分で夕食を一品つくれる。
目標の書き方そのものは、第2表の目標の記事でも整理しています。
目標についての支援のポイント
目標に向けて支援するときの留意点を書きます。記載要領は、安全管理のポイントや、インフォーマルサービスとの役割分担などが書かれることがあるとしています。
文例
- 膝や腰の痛みが強い日は、無理に外出せず、家の中での体操に切り替える。痛みが続く場合は主治医に相談する。
- 歩行車は、福祉用具専門相談員が高さとブレーキの使い方を確かめてから使い始める。
- 買い物の量は歩行車のかごに入る分までを目安にし、重いものは長女の週末の買い物に回す。
- 雨の日や暑い日、寒い日は外出を控え、別の日に振り替えてよいことを本人と確かめておく。
- 本人の「自分で選びたい」という気持ちを大切にし、家族やサービスが買い物を代わりにしすぎないようにする。
本人等のセルフケアや家族の支援、インフォーマルサービス
記載要領は、この欄には「誰が、何をするのか具体的に記載する」としています。
【よくある書き方】本人:運動を頑張る。家族:見守り。
【直した書き方】本人:通所のない日の朝食後、居間の椅子で膝の体操を1回行う。買い物に行った日は台所のカレンダーに丸をつける。長女:週末の訪問時に、その週に買い物に行けた日を一緒に確かめる。
「頑張る」「見守り」は、評価の日に何を見ればよいかが分かりません。いつ・どこで・何をまで書くと、本人も家族も自分の役割が分かります。
文例
- 本人:朝食後、居間の椅子に座って、通所で覚えた膝の体操を1回行う。
- 本人:火曜と金曜の午前中に、歩行車でスーパーへ買い物に行く。
- 本人:買い物に行った日は、台所のカレンダーに丸をつける。
- 本人:朝に痛みの強さを確かめ、強い日は外出を別の日に回す。
- 長女:週末の訪問時に、カレンダーの丸の数を一緒に確かめる。
- 長女:米や飲み物などの重いものは、週末にまとめて買ってくる。
- 地域:地区の通いの場の体操に、月1回参加する(場所と日時を書いた紙を本人に渡す)。
介護保険サービス又は地域支援事業
予防給付のサービスか、総合事業(地域支援事業)のサービスかが分かるように書きます。Aさんの場合、歩行車の貸与は予防給付、通所型サービスは総合事業です。
通所型サービスの文例
- 通所型サービス(総合事業):週1回。歩く距離を少しずつ延ばす運動と、膝に負担の少ない立ち上がりの練習を行う。
- 通所型サービス(総合事業):自宅でも続けられる膝の体操を本人と一緒に選び、やり方を紙に書いて渡す。
- 通所型サービス(総合事業):利用のたびに膝と腰の痛みの程度と、その週に買い物に行けたかを本人に聞き、月1回計画作成者に報告する。
- 通所型サービス(総合事業):送迎のとき、玄関から車までの移動を本人が歩行車で行い、職員は横で見守る。
福祉用具の文例
- 介護予防福祉用具貸与(歩行器):座面つきの歩行車を貸与し、スーパーまでの道の途中で座って休めるようにする。
- 介護予防福祉用具貸与(歩行器):福祉用具専門相談員が、本人の身長に合わせた高さの調整とブレーキの使い方の説明を行い、使い始めの様子を確かめる。
- 介護予防福祉用具貸与(歩行器):貸与が必要な理由=続けて歩ける距離が短く、休む場所のない道で外出をためらっているため、座って休める歩行車が必要。
- 介護予防福祉用具貸与/特定介護予防福祉用具販売(多点杖):選択制の対象。貸与と販売の違いを説明し、本人が◯◯を選んだ(理由:◯◯)。
座面つきの歩行車は車輪が付いているので、選択制には入らず貸与だけです。買い物用のシルバーカー(体の前と左右を囲む把手がないもの)とは別物で、シルバーカーは貸与の対象外です(老企第34号の歩行器の定義による)。最後の行は、Aさんが室内用に多点杖を使うことになった場合の書き方の例です。
サービス種別・事業所・期間
記載要領は、期間は「認定の有効期間」も考えて決め、サービスの頻度(回数・曜日)の提案があれば書くとしています。
文例
- 期間:◯年◯月◯日〜◯年◯月◯日(6か月の例)
- 頻度:通所型サービス 週1回(◯曜日)/歩行車 毎日の外出時
- 事業所(利用先):◯◯デイサービス(通所型サービス)、◯◯福祉用具(介護予防福祉用具貸与)、地区の通いの場(◯◯公民館)
健康状態について(主治医意見書・健診結果・観察結果等を踏まえた留意点)
主治医意見書などから、計画を立てるうえで気をつけることを書きます。運動の内容は、主治医の意見の範囲で決めます。
文例
- 主治医から、運動は痛みが強くならない範囲で行うよう助言を受けている。
- 痛み止めを服用している。痛みの強さが変わったときは、通院時に主治医に伝える。
- 整形外科への通院は月1回。通所での運動の内容は、通院の際に主治医に伝えて意見をもらう。
総合的な方針(生活不活発病の改善予防のポイント)
本人・家族・計画作成者・各サービスが共通して向かう方向を書きます。
文例
- 「自分で好きなものを買いたい」という本人の気持ちを共通の目標にし、通所・福祉用具・家族がそれぞれの役割で、週2回の買い物を支える。
- 痛みのある日も家の中で体を動かす時間をつくり、横になって過ごす時間が長くならないよう、通所と家族が声をかける。
- 本人が自分でできることは、家族やサービスが代わりにやりすぎないようにする。
- 外出の機会を、買い物から通いの場へと少しずつ広げていく。
テーマ別の予防プランの文例は、6本の記事にあります。
評価表を書く:介護予防支援・介護予防ケアマネジメント サービス評価表
介護予防支援の基準(第30条第15号)は、計画に位置づけた期間が終わるときに、目標の達成状況を評価することを求めています。評価表の「評価期間」には、計画書の「期間」をそのまま写します。
「行けなかった週は、どう書けばいいの?」。評価表には、達成しなかった原因を本人・家族の意見と計画作成者の評価に分けて書く欄があります。未達成は失敗ではなく、次の計画を直す材料です。
目標達成状況
【よくある書き方】通所に休まず参加でき、歩行も安定している。おおむね達成。
【直した書き方】6か月(26週)のうち、週2回スーパーへ行けた週は18週。行けなかった8週のうち5週は雨や暑さ、3週は腰の痛みが強かった週(本人のカレンダーと長女の話による)。
目標に「週2回」と書いてあるので、数えられます。計画書の目標が漠然としていると、評価表も「おおむね達成」としか書けません(数字はすべて架空の例です)。
文例
- 本人のカレンダーでは、6か月で買い物に行った日は計◯日。週2回行けた週は◯週あった。
- 歩行車を使い、スーパーまでの片道を途中1回の休憩で歩けている(◯月◯日の訪問時に同行して確認)。
- 通所のない日の膝の体操は、本人によると「週に4〜5日はできている」。
- 夏の暑い時期は外出を控え、行けた回数が減った。秋に入ってから週2回に戻っている。
- 買ってきた果物を長女の家族にも分けていると、本人がうれしそうに話された。
目標達成しない原因(本人・家族の意見/計画作成者の評価)
記載要領は、目標の設定が妥当だったかも含めて、本人・家族の受け止めを確かめるとしています。
文例
- 本人・家族の意見:本人「雨の日に歩行車を押すのが怖い」。長女「週末に買ってくる量を減らしたら、母が行く回数が増えた」。
- 本人・家族の意見:本人「腰が痛い日が続いて、外に出る気になれなかった」。
- 計画作成者の評価:腰の痛みが強い時期と、外出できなかった週が重なっている。痛みの経過を主治医に伝え、運動の内容について意見をもらう必要がある。
- 計画作成者の評価:週2回という回数は本人の生活に合っていた。行けなかった主な原因は天候で、目標の設定は妥当だったと考える。
今後の方針
文例
- 週2回の買い物は26週中18週で達成した。次の期間は、地区の通いの場に月1回参加することを目標に加える。
- 週2回の買い物を続けるため、今の計画を継続する。歩行車の継続の必要性は、福祉用具専門相談員のモニタリング結果をふまえて、サービス担当者会議で確かめる。
- 痛みが強くなり外出の回数が減っているため、主治医の意見を聞いたうえで、通所での運動の内容を見直す。
- 歩行車の扱いと休憩の取り方が身についたため、雨の日の過ごし方(家の中でできる体操)を計画に加える。
モニタリングの記録の書き方は、モニタリングの記事にまとめています。
書き方のコツ(深めたい方向け)
文例を使うだけなら、ここは読まなくてかまいません。「なぜこう書くのか」を知りたいときに開いてください。
コツ1:目標に「場所・回数・何をするか」の3つを入れる
「週に2回(回数)、いつものスーパーに(場所)、好きなものを選んで買う(何をするか)」。3つのうち1つでも抜けると、評価の日に数えられなくなります。担当の方の予防プランの目標は、評価の日に数えられますか。
コツ2:本人の言葉を、目標のいちばん前に残す
「好きなものを買いたい」は、本人が自分の口で言った言葉です。「下肢筋力の維持」は、そのための手段です。目標に本人の言葉が残っていると、通所の体操が何のためなのかを、本人も事業所も同じように説明できます。
コツ3:セルフケアの欄に「数える仕組み」を置いておく
目標に「週2回」と書いたら、それを誰がどうやって数えるかを、セルフケアの欄で決めておきます。Aさんの例では、台所のカレンダーの丸です。評価の日に、本人の記録と家族の話と訪問時の観察の3つがそろうと、達成状況を具体的に書けます。
現場のひとこと
> 編集部のケアマネが、新人のころとの違いの一つとして挙げるのがこれです。「安心して歩行できる」のような漠然としたプランは、今なら立てない。今は「週に2回は◯◯(いつものお店)に行って、好きなものを購入できる」のように、具体的で評価しやすい形で書く。
目標の欄で手が止まったら、本人が最近いちばん行きたがっている場所を1つ聞いてみませんか。
運営指導で見られやすいポイント
指定介護予防支援の基準(平成18年厚生労働省令第37号)第30条から、計画と評価に関わるところを並べました。介護予防ケアマネジメント(総合事業のサービスだけの方)は、市町村が定める方針・手順で行うので、所在地の市町村の資料で確かめてください。
1. 4つの領域(運動及び移動/家庭生活を含む日常生活/社会参加並びに対人関係及びコミュニケーション/健康管理)ごとに日常生活の状況を把握し、総合的な課題を把握しているか(第6号)
2. アセスメントを、利用者の居宅を訪問し、本人・家族に面接して行っているか(第7号)
3. 原案に、目標とする生活・専門的観点からの目標と具体策・本人と家族の意向・それを踏まえた具体的な目標・支援の留意点・支援内容・期間などが書かれているか(第8号)
4. サービス担当者会議で意見を求め(第9号)、保険給付の対象かどうかを区分したうえで原案を説明し、文書で同意を得て(第10号)、計画を本人と担当者に交付しているか(第11号)
5. 位置づけた事業所から、サービスの提供状況や利用者の状態の報告を少なくとも月1回聞いているか(第13号)
6. 計画に位置づけた期間が終わるときに、目標の達成状況を評価しているか(第15号)
7. モニタリングで、サービス開始月の翌月から3か月に1回は利用者に面接しているか(原則は居宅訪問。条件を満たせば一部をテレビ電話装置等で行える)、少なくとも月1回は結果を記録しているか(第16号)
8. 介護予防福祉用具貸与を位置づける場合に、貸与が必要な理由を計画に書き、必要に応じて随時担当者会議で継続の必要性を確かめ、継続する理由を書いているか(第24号)。販売を位置づける場合に、必要な理由を書いているか(第25号)
よくある迷いどころ
「1日」と「1年」は、両方書かないといけませんか
記載要領は、1日と1年の両方を書かなければならないものではなく、2つの目標が関係していなければならないものでもない、としています。本人がイメージしやすいほうから書きます。
目標は、長期と短期に分けて書きますか
国の様式例の「目標」の欄は1つです。市町村によっては長期・短期を書き分ける運用もあるので、手元の様式と保険者の運用に合わせてください。
歩行器は、貸与と販売のどちらにすればいいですか
車輪の付いた歩行車は選択制に入らず、貸与だけです。脚がすべて杖先ゴムの固定式・交互式の歩行器、クラッチ類の単点杖、多点杖は選択制です。国の資料の提案例は「長期の利用が見込まれるので販売」「利用期間がこの段階では判断できないので貸与」です。痛みの経過で必要な用具が変わりそうな時期かどうかを、主治医・福祉用具専門相談員の意見とあわせて担当者会議で話し合い、本人に選んでもらいます。
評価表の「達成/未達成」の○×は、どこで線を引けばいいですか
評価表には、目標を達成したら○、未達成なら×をつけます。「26週中18週」のように一部できた場合に迷わないよう、計画を立てる時点で「何週できたら達成とするか」を本人と決めておくと、評価の日に話がずれません。迷う場合は×として、原因の欄にできたことと届かなかったことを書く運用も多くあります。扱いは、地域包括支援センターや保険者の運用に合わせてください。
要介護の認定が出たら、どうなりますか
介護予防支援の基準(第30条第27号)は、要支援の利用者が要介護認定を受けた場合、居宅介護支援事業者に必要な情報を提供するなどの連携を求めています。要介護になった後の膝・腰の痛みの第2表の文例は、関節疾患の記事にあります。
【関節疾患(変形性膝関節症・関節リウマチ・脊柱管狭窄症)】ケアプラン第2表の文例集
まとめ
✓ 予防プランの目標は、様式例の記載要領のとおり「漠然としたものではなく、評価可能で具体的なもの」で書く
✓ 「安心して歩行できる」→「週に2回、いつものスーパーまで歩行車で歩いて行き、好きなものを自分で選んで買える」。場所・回数・何をするかの3つを入れる
✓ 目標に本人の言葉を残し、「下肢筋力」「通所に通う」は手段・サービスの欄に回す
✓ セルフケアの欄で「誰が・どうやって数えるか」を決めておくと、評価表が具体的に書ける
✓ 歩行器・杖は要支援でも貸与の対象。車輪付きの歩行車は貸与だけ、固定式・交互式の歩行器とクラッチ類の単点杖・多点杖は選択制。T字の1本杖は貸与の対象外
✓ 貸与を位置づけるときは、貸与が必要な理由を計画に書く(基準第30条第24号)
手元の予防プランの目標の欄を1つ開いて、「場所・回数・何をするか」の3つが入っているか数えてみてください。1つ足りなければ、本人に「いちばん行きたい場所はどこですか」と聞くところから始められます。
文例をまとめて手元に置きたい方へ
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参考・出典
1. 厚生労働省「介護予防支援業務に係る関連様式例の提示について」(平成18年3月31日 老振発第0331009号)介護予防支援業務に係る関連様式例記載要領 https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/hoken/seido/0604/dl/18.pdf
2. 厚生労働省「介護予防支援業務に係る関連様式例の提示について」の改正部分の新旧対照(抄) https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001221628.pdf
3. 厚生労働省「介護予防・日常生活支援総合事業における介護予防ケアマネジメント(第1号介護予防支援事業)の実施及び介護予防手帳の活用について」(平成27年6月5日 老振発0605第1号、最終改正 令和8年3月13日 老認発0313第3号) https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001741387.pdf
4. 厚生労働省「総合事業の関係規程等」(介護予防ケアマネジメント実施における様式5「介護予防サービス・支援計画書(ケアマネジメント結果等記録表)」ほか) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000184585.html
5. 厚生労働省「介護予防・日常生活支援総合事業のガイドラインについて」(平成27年6月5日 老発0605第5号、最終改正 令和8年8月20日 老発0820第2号) https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001741382.pdf
6. 指定介護予防支援等の事業の人員及び運営並びに指定介護予防支援等に係る介護予防のための効果的な支援の方法に関する基準(平成18年厚生労働省令第37号)第30条/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100037
7. 介護サービス情報公表システム(厚生労働省)「どんなサービスがあるの? – 福祉用具貸与」 https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group21.html
8. 厚生労働省「選択制の対象とする種目に関する解釈」 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001434739.pdf
9. 厚生労働省「介護保険の給付対象となる福祉用具及び住宅改修の取扱いについて」(平成12年1月31日 老企第34号)/厚生労働省法令等データベース https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta4381&dataType=1&pageNo=1


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