膝が痛い方のプランで、短期目標に「痛みが軽くなる」と書いていませんか。痛みの強さを決めるのはご本人の感覚で、支援者の側に測る手段はありません。しかも関節疾患の痛みは、朝と夕方で違い、天気で違い、昨日と今日で違います。固定した目標を書いた翌週には、もう合わなくなっています。
第2表に書けるのは、痛みそのものではなく、痛みの波に合わせて動くための手順のほうです。立ち上がる前にどこにつかまるか。階段のある家で、どの部屋を生活の場にするか。床に座る暮らしを、いつ、いすの暮らしに切り替えるか。
この記事では、変形性膝関節症・関節リウマチ・脊柱管狭窄症のある方の第2表で使える文例を、場面ごとに184本まとめました。痛みの日内変動、立ち上がりと歩き始め、階段と段差、正座と床からの立ち上がり、杖と歩行器の導入、人工関節置換術の前後、朝のこわばりと手指の変形、装具、体重、寒暖、服薬、住宅改修と福祉用具、通所リハと訪問リハの使い分け、家事動作の代替まで並べています。気になる行をコピーして、ご本人の状態に合わせて言葉を入れ替えて使ってください。制度の部分は、介護保険法施行令・厚生労働省の通知と告示・国民生活基礎調査・日本整形外科学会の解説の原文にあたって書いています。
この記事の文例の並び方
第2表の欄ごとに章を分けています。
1章目:ニーズ(「〜したい」の形・主語はご本人)
2章目:長期目標
3章目:短期目標
4章目:サービス内容
各章の中は場面別に分かれているので、担当の方に近い場面から拾ってください。後半に「書き方のコツ」と「運営指導で見られやすいポイント」があります。

文例の前に:関節疾患の第2表で押さえること
3つの病気をひとつの記事にまとめたのは、第2表に落ちてくる困りごとが重なるためです。立ち上がれない、階段が怖い、床から起き上がれない、歩ける距離が短い。プランの形はよく似ています。一方で、制度の入口と経過は3つとも違います。ここを先に整理しておくと、文例を選ぶときに迷いません。
「変形性膝関節症」は特定疾病の名前ではありません
厚生労働省は特定疾病を「加齢に伴って生ずる心身の変化に起因し」、要介護状態の原因となる心身の障害を生じさせる疾病と整理しています。介護保険法施行令第2条が挙げる16の特定疾病のうち、関節に関わるのは4つです。第2号「関節リウマチ」、第4号「後縦靱帯骨化症」、第9号「脊柱管狭窄症」、そして第16号「両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症」。骨・運動器系では第5号「骨折を伴う骨粗鬆症」が隣にあります。
つまり第16号の名前は「変形性膝関節症」ではありません。条文が求めているのは「両側の」「著しい変形を伴う」の2つです。片側だけの変形性膝関節症は、条文上この号に当たりません。
「著しい変形」の中身は、厚生労働省の通知(平成21年9月30日 老老発0930第2号)の別添3「特定疾病にかかる診断基準」で決められています。膝であれば「両側の膝関節にX線所見上、骨棘形成、関節裂隙の狭小化、軟骨下骨の骨硬化、骨嚢胞の形成等の著しい変形を伴い、日本整形外科学会変形性膝関節症治療成績判定基準において何らかの障害が認められるもの」。股関節にも同じ形の定めがあります。ここに点数の閾値は書かれていません。「◯点以上で該当」という説明を見かけたら、通知の言葉ではないと思ってください。
判断するのは主治医意見書と介護認定審査会です。ケアマネジャーが「該当します」「該当しません」と言う場面ではありません。
🚨 そして最も大事な点。これは40歳以上65歳未満(第2号被保険者)の話です。 65歳以上の第1号被保険者には、特定疾病の要件そのものがありません。片側の膝だけでも、原因疾患を問わず要介護認定を申請できます。40〜64歳の話と65歳以上の話を混ぜると、そのまま誤情報になります。
「脊柱管狭窄症」に部位の限定はありません
施行令第9号の表記は「脊柱管狭窄症」です。腰椎に限定した書き方ではありません。診断基準の側も「頸椎部、胸椎部又は腰椎部のうち、いずれか1以上の部において脊柱管狭小化を認めるもの」としています。
腰の病気として覚えていると、頚椎で症状が出ている方を取りこぼします。第2号被保険者の申請を検討するときは、主治医意見書の病名の書き方を主治医に確認してください。
もうひとつ。第2号は「関節リウマチ」であって「慢性関節リウマチ」ではありません。旧称のまま書かれた書類を見かけることがあります。介護保険上の診断基準は、自他覚症状5項目と臨床検査2項目の計7項目のうち少なくとも4項目を満たすもの、朝のこわばりは「少なくとも1時間以上」、自他覚症状のうち朝のこわばり・関節腫脹など4項目は6週間以上続いていること、と定められています。ただしこれは介護保険の主治医意見書での取扱いのための基準です。臨床で使われている診断の基準とは別物なので、「関節リウマチの診断基準はこうです」と一般論に広げないでください。
「介護が必要になった原因の1位が関節疾患」ではありません
よく引用される19.3%という数字があります。2022(令和4)年の国民生活基礎調査 表17です。正確には、こうなっています。
– 要支援者:1位 関節疾患 19.3%/2位 高齢による衰弱 17.4%/3位 骨折・転倒 16.1%
– 要支援1:1位 高齢による衰弱 19.5%/2位 関節疾患 18.7%/3位 骨折・転倒 12.2%
– 要支援2:1位 関節疾患 19.8%/2位 骨折・転倒 19.6%/3位 高齢による衰弱 15.5%
– 総数:1位 認知症 16.6%/2位 脳血管疾患(脳卒中)16.1%/3位 骨折・転倒 13.9%
– 要介護者:1位 認知症 23.6%/2位 脳血管疾患(脳卒中)19.0%/3位 骨折・転倒 13.0%
1位なのは「要支援者」に限った話です。 総数の1位は認知症で、関節疾患は上位3位に入っていません。さらに要支援1では2位です。「要支援は関節疾患が1位」と丸めると、要支援1で外れます。調査の対象は「要支援又は要介護と認定された者のうち、在宅の者」で、施設に入っている方は入っていません。
ケアマネジャーにとっての意味は、関節疾患は要支援・軽度の入口で出会う病気だということです。予防プランや要支援からの継続でこの記事の文例を使う場面が多くなります。予防給付側の書き方はケアプラン予防プラン「運動器の機能向上」の文例集にまとめています。
目標欄に「痛みが軽くなる」と書かない
日本整形外科学会の解説では、変形性膝関節症の経過はこう説明されています。初期は「立ち上がり、歩きはじめなど動作の開始時のみに痛み、休めば痛みがとれ」る。中期で「正座や階段の昇降が困難」になる。末期には「安静時にも痛みがとれず、変形が目立ち、膝がピンと伸びず歩行が困難」になる。
病期によって、第2表に書ける文がまるごと変わります。 初期の方に「安静時の痛みへの対応」を書いても外れますし、末期の方に「歩き始めの痛みへの対処」だけでは足りません。同じ学会の総論には「軟骨磨耗の防止に効果的な治療法は確立されていません」とも書かれています。痛みや変形が消えることを目標欄の前提に置かないでください。
書くのは、痛みが出る場面と、そのときの対処です。「痛みが軽くなる」ではなく「動作の途中で痛みが出たら座って休む習慣がつく」。「痛みなく歩ける」ではなく「近所の◯◯まで、途中2か所で休みながら往復できる」。この記事の文例はすべてこの形で作っています。目標の測り方そのものは、ケアプラン第2表 目標の文例集も参考にしてください。
手すりとスロープは「工事あり/なし」で制度が変わります
関節疾患のプランで最も出番が多いのが、手すりと段差です。ここは制度が分かれます。
福祉用具貸与(平成11年厚生省告示第93号)の「7 手すり」には「取付けに際し工事を伴わないものに限る」という限定が付いています。「8 スロープ」も同じです。据置型の手すりや置くだけのスロープは貸与になります。
工事を伴えば住宅改修(同 告示第95号)です。告示は住宅改修を「一種類」とし、そこに6つの工事を含めています。手すりの取付け/段差の解消/滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更/引き戸等への扉の取替え/洋式便器等への便器の取替え/これらに付帯して必要となる工事。「6種類」ではなく「一種類に6つが含まれる」という建て付けなので、支給限度基準額も工事ごとではなくまとめて20万円です(平成12年厚生省告示第35号)。20万円は基準額で、自己負担割合分はご本人の負担になります。
要支援1・2、要介護1でも手すりと歩行器は借りられます
軽度者は福祉用具貸与に制限がある、と覚えている方は多いはずです。原則給付対象外とされているのは次の7種目です。車いす(付属品含む)/特殊寝台(付属品含む)/床ずれ防止用具/体位変換器/認知症老人徘徊感知機器/移動用リフト(つり具の部分を除く)/自動排泄処理装置。
手すり・スロープ・歩行器・歩行補助つえは、この7種目に入っていません。 関節疾患で軽度の方が最もよく使う4つは、通常どおり貸与できます。
対象外の7種目を軽度者に位置づけるときは、例外給付の手続きになります。厚生労働省の資料が挙げる3類型は、ⅰ状態が変動しやすく日や時間帯によって別表の対象者に該当する、ⅱ状態が急速に悪化し短期間のうちに該当することが確実に見込まれる、ⅲ身体への重大な危険性や症状の重篤化の回避等の医学的判断から該当すると判断できる、の3つ。手続きは医師の医学的な所見+サービス担当者会議等を通じたケアマネジメント+市町村の書面等での確認の3段階です。
同じ資料が例に挙げているのは、ⅰがパーキンソン病の治療薬によるON・OFF現象、ⅱががん末期の急速な状態悪化、ⅲがぜんそく発作等による呼吸不全や心不全などです。関節疾患は例示に入っていません。「日によって痛みが違う」がⅰに読めるかどうかは、書面で確認して要否を判断するのが市町村なので、位置づけを検討する段階で保険者に相談してください。
なお同じ資料には、車いすの「日常生活範囲における移動の支援が特に必要と認められる者」と、移動用リフトの「生活環境において段差の解消が必要と認められる者」については該当する基本調査結果がなく、主治の医師から得た情報や担当者会議等を通じたケアマネジメントにより「指定居宅介護支援事業者が判断する」と書かれています。ここは私たちの判断が正面から求められている箇所です。担当者会議の記録の書きぶりが、そのまま根拠になります。
貸与か販売かの説明は、ケアマネジャーから始まります
2024(令和6)年4月から、一部の種目で貸与と販売の選択制が始まっています。対象は3つです。
– 固定用スロープ(貸与告示の「スロープ」のうち、主に敷居等の小さい段差の解消に使用し、頻繁な持ち運びを要しないもの。持ち運びできる可搬型は除く)
– 歩行器(脚部が全て杖先ゴム等の形状となる固定式又は交互式のもの。車輪・キャスターが付いている歩行車は除く)
– 歩行補助つえ(カナディアン・クラッチ、ロフストランド・クラッチ、プラットホームクラッチ及び多点杖。松葉づえは含まれません)
「歩行器は買えるようになった」と丸めると外れます。車輪付きの歩行車、可搬型スロープ、松葉づえは貸与のままです。
厚生労働省が示したプロセス図では、①ケアマネジャー(不在の場合は福祉用具専門相談員)が制度趣旨を説明する、③サービス担当者会議の開催と医師等の所見等を踏まえて協議する、④協議内容と提案をふまえてご本人が選ぶ、⑥貸与を選んだ場合は利用開始時から6か月以内に少なくとも1回モニタリングを実施する、という流れになっています。説明の起点が私たちです。 第2表のサービス内容に、選んだ理由まで残しておくと後で困りません。
ひとつ細かい注意を。T字杖(一本杖)は、貸与の「歩行補助つえ」の限定列挙に入っていません。 松葉づえ、カナディアン・クラッチ、ロフストランド・クラッチ、プラットホームクラッチ、多点杖に限る、と書かれています。杖の話を第2表に書くときは、種類まで確認してください。福祉用具まわりの書き分けは【福祉用具貸与・販売/住宅改修】ケアプラン第2表の文例集にまとめています。
人工関節:身体障害者手帳と障害年金は逆向きです
ここは古い情報がネット上に大量に残っている領域です。
身体障害者手帳。かつては「股関節(および膝関節)に人工骨頭又は人工関節を用いたもの」が「全廃(4級)」の具体例に、足関節は「全廃(5級)」の例に明記されていました。それが平成26年1月21日付け通知の改正(同年4月1日適用)で削除されています。現行の認定基準はこう書かれています。「人工骨頭又は人工関節については、人工骨頭又は人工関節の置換術後の経過が安定した時点の機能障害の程度により判定する」。つまり「人工関節を入れたら自動的に4級」という説明は、改正前の内容です。判定は指定医の診断と自治体の審査によるので、記事や説明の場で等級を先に言わないでください。
障害年金。こちらは逆です。日本年金機構が掲載している障害認定基準(令和4年4月1日改正版/2026年9月時点の掲載)では、「一下肢の3大関節中1関節以上に人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものや両下肢の3大関節中1関節以上にそれぞれ人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものは3級と認定する」とされています。認定する時期は「人工骨頭又は人工関節をそう入置換した日」です。ただし、初診日から起算して1年6月を超えてから置換した場合は除かれ、通常の障害認定日(初診日から1年6月)で見ます。
ただし3級があるのは障害厚生年金だけです。初診日に国民年金だけだった方は、3級では年金が出ません。初診日の加入制度、保険料の納付要件、初診日の証明もそろえる必要があります。「人工関節を入れたら年金が出ます」と伝えないでください。伝えるのは「制度があるので年金事務所で相談できます」までです。
手帳は「人工関節だけでは等級がつかなくなった」、年金は「人工関節そう入置換で原則3級」。向きが逆なので、混ぜて説明すると必ず誤りになります。
医療のリハと介護のリハ:150日の起算は「最初に診断された日」
運動器リハビリテーション料の対象患者には、「慢性の運動器疾患により、一定程度以上の運動機能及び日常生活能力の低下を来している患者」として「関節の変性疾患、関節の炎症性疾患」が明記されています。変形性関節症も関節リウマチも、この枠に入ります。
標準的算定日数は150日。ここが関節疾患に特有です。留意事項通知は「発症、手術又は急性増悪の日が明確な場合はその日から150日以内、それ以外の場合は最初に当該疾患の診断がされた日から150日以内」としています。手術も骨折もしていないのに「もう150日を過ぎています」と言われる場面が起きます。
150日を超えた後の扱いは分かれます。
1. 要介護被保険者等以外の方は、1月13単位に限り算定できる(注6)
2. 入院中の要介護被保険者等は、減額された点数で1月13単位に限り算定できる(注7)
3. 状態の改善が期待できると医学的に判断される場合等は、150日を超えて算定できる(注1のただし書き)
条文上、外来で要介護認定を受けている方は、150日を超えると運動器リハビリテーション料の対象から外れる形になります。だから、原則として介護保険の通所リハビリテーション・訪問リハビリテーションへ移ります(除外対象患者に当たり、改善が期待できると医学的に判断される場合は例外があります)。「150日で医療のリハビリは終わり」と丸めると、入院中の方や認定を受けていない方で外れるので、そこは分けて覚えてください。算定要件は施設基準の届出が前提なので、すべての医療機関で一律の扱いになるわけでもありません。
移行の場面で、私たちは通知に名指しで登場します。留意事項通知は、リハビリテーション実施計画書を文書で提供する相手について「当該患者、患者の家族等又は当該患者のケアマネジメントを担当する介護支援専門員を通じ、当該患者の利用の意向が確認できた指定通所リハビリテーション事業所等」と書き、事業所の紹介・見学・体験の提案も「必要に応じて介護支援専門員と協力して」行うとしています。150日が近づいたら、こちらから病院のリハビリ科に連絡してみませんか。なお令和8年度診療報酬改定の適用日は6月1日です(令和8年厚生労働省告示第69号ほか。介護保険リハとの給付調整を定める告示第119号も同日適用)。4月1日ではありません。
ニーズ(生活全般の解決すべき課題)の文例(62文例)

この章の文例は「生活全般の解決すべき課題(ニーズ)」欄に書きます。主語はご本人です。痛みの話に寄りすぎていないか、書いたあとに読み返してみませんか。
痛みの波とつきあいたい
- 朝と夕方で膝の痛み方が違うので、痛みの軽い時間に用事を済ませたい
- 痛みが強い日と楽な日の差が大きいので、悪い日でも1日を回せるようにしたい
- 痛みが出ると1日中横になってしまうので、動ける範囲を保ちたい
- 薬を飲む時間と動く時間の組み立てを、主治医と相談して決めたい
- 痛みがいつもと違うときに、誰に相談すればよいかを決めておきたい
立ち上がりと歩き始め
- いすから立ち上がるときに膝が痛むので、痛みの出にくい立ち方を覚えたい
- 歩き始めの数歩がつらいので、転ばずに歩き出せるようになりたい
- 座っている時間が長いと立てなくなるので、こまめに動けるようにしたい
- 立ち上がるときにつかまる場所がないので、家の中に支えをつくりたい
階段・段差・外出
- 玄関の上がりかまちが高くて外に出られないので、自分で出入りできるようになりたい
- 階段の上り下りが怖いので、手すりを付けて1階と2階を行き来したい
- 敷居や敷物でつまずくので、家の中を安全に歩けるようにしたい
- 買い物までの距離が歩けないので、途中で休みながらでも出かけたい
- ゴミ出しの場所が遠くてつらいので、続けられる方法を見つけたい
正座と床の生活
- 正座ができなくなり仏壇の前に座れないので、別の姿勢でお参りしたい
- 床から立ち上がれないので、いすとテーブルの暮らしに変えたい
- 和式のトイレがつらいので、楽に用を足せるようにしたい
- 布団から起き上がるのに時間がかかるので、朝の支度を楽にしたい
杖・歩行器を使い始める
- 杖を使うのは気が引けるが、転ばずに歩けるなら使ってみたい
- 杖だけでは足りなくなってきたので、体を支えられる道具を試したい
- 自分に合った歩く道具を選んで、外出の距離を戻したい
- 道具を使いこなせるか不安なので、教わりながら慣れたい
手術(人工関節置換術)の前後
- 膝の手術を勧められているので、決める前に生活がどう変わるか知りたい
- 手術の日までの間、今の暮らしを何とか続けたい
- 退院後に自宅で生活できるよう、家の中を先に整えておきたい
- 手術した側をかばって反対側が痛くなってきたので、両方を守りながら動きたい
- 退院後のリハビリを続けて、また外に出られるようになりたい
関節リウマチ:朝のこわばりと手指
- 朝のこわばりで午前中は動けないので、午後の時間を生かして暮らしたい
- 朝の支度に時間がかかるので、起きる時間と手順を組み直したい
- 手指の変形でボタンやファスナーが留められないので、自分で着替えたい
- ペットボトルや蛇口が開けられないので、水分を自分でとれるようにしたい
- 薬のシートから錠剤が出せないので、飲み忘れずに続けたい
- だるさや微熱が出る日があるので、無理をしない過ごし方を身につけたい
脊柱管狭窄症:歩ける距離と休憩
- 少し歩くと足がしびれて休まないと進めないので、休む場所を決めて出かけたい
- 前かがみだと楽になるので、自分に合った歩き方と道具を見つけたい
- 立ったままの家事が続けられないので、座ってできる形に変えたい
- トイレが近くなってきたので、間に合うように動線を整えたい
装具・靴・体重
- 膝の装具をどう使えばよいか分からないので、正しく使えるようになりたい
- 足に合う靴が分からず外を歩くのが怖いので、履きやすい靴を選びたい
- 体重が増えて膝の負担が増えたので、主治医と相談しながら整えたい
- 座っている時間が増えて足の力が落ちたので、動く習慣を取り戻したい
寒さ・季節
- 冬になると痛みが強くなるので、寒い時期も家に閉じこもらずに過ごしたい
- 膝を冷やさない工夫を教わって、痛みの出にくい暮らしにしたい
- 雨や気圧の変化で体調が変わるので、その日の予定を調整できるようにしたい
服薬・受診
- 薬の種類が増えて管理できないので、飲み間違えないようにしたい
- 定期受診を続けたいので、通院の手段を確保したい
- 薬の効き方や体調の変化を、主治医に正しく伝えられるようになりたい
家事動作の代替
- 重い鍋や洗濯かごが持てないので、家事を続けられる形にしたい
- 立ったままの調理がつらいので、座ってできるやり方に変えたい
- 掃除機がけで腰と膝が痛むので、手伝ってもらいながら家を整えたい
- 布団の上げ下ろしができないので、寝具を見直したい
気持ち・閉じこもり
- 痛みのせいで人と会わなくなったので、また出かけて話をしたい
- できないことが増えて情けないが、できることは自分で続けたい
- この先歩けなくなるのではと不安なので、見通しを持って暮らしたい
一人暮らし
- 一人暮らしなので、転んだときにすぐ気づいてもらえるようにしたい
- 痛みが強い日に食事の支度ができないので、食べる手段を確保したい
- 重い荷物を運べないので、買い物を続けられる形にしたい
- つかまる場所を増やして、一人でも安全に家の中を移動したい
家族が介護している
- (家族)立ち上がりや移動の手伝い方を知って、腰を痛めずに支えたい
- (家族)痛みが強い日にどう声をかければよいか知りたい
- (家族)手術後に向けた家の中の準備を、何から始めればよいか知りたい
- (家族)通院の付き添いを続けるのが難しいので、別の手段を持ちたい
長期目標の文例(16文例)

この章の文例は「長期目標」欄に書きます。痛みが消えることではなく、痛みの波とつきあいながら送る暮らしの形で書きます。
- 痛みの波に合わせて動作を選び、自宅での生活を続けられる
- 主治医の指示にもとづく治療と運動を続け、今の歩く力を保てる
- 手すりと福祉用具を使って、家の中を一人で安全に移動できる
- 段差を解消した家で、転ばずに外出と通院を続けられる
- いすとテーブルの暮らしに切り替え、立ち座りの負担を減らして過ごせる
- 自分に合った歩行補助具を使いこなし、外出の範囲を保てる
- 休む場所を決めた道順で、買い物や通院に自分で出かけられる
- 人工関節置換術の後、自宅での生活動作を取り戻して過ごせる
- こわばりの強い時間帯を避けた1日の流れをつくり、身の回りのことを自分で行える
- 手指に負担の少ない道具と方法で、身の回りのことを続けられる
- 服薬と定期受診を続け、体調の変化を主治医に伝えられる
- 体重と活動量を主治医と相談しながら整え、膝の負担を減らして暮らせる
- 冬場も閉じこもらず、人と会う機会を持って過ごせる
- 支援と見守りの体制のもとで、一人暮らしを続けられる
- 家族が介助の方法を身につけ、負担を分け合いながら在宅での生活を続けられる
- 痛みや不安を一人で抱えず、支援者に相談しながら療養を続けられる
短期目標の文例(53文例)

この章の文例は「短期目標」欄に書きます。誰が見ても達成できたかどうかが分かる形にします。数字を入れるなら回数・曜日・場所までにして、痛みの強さは書きません。今の担当の方の短期目標、訪問介護員が確かめられる形になっていますか。
痛みの波に合わせて動く
- 痛みが出やすい時間帯と楽な時間帯を、本人と支援者が言える
- 痛みが強い日の家事の減らし方を、本人が2つ言える
- 動作の途中で痛みが出たら座って休む習慣がつく
- 痛みがいつもと違うときの連絡先(主治医・訪問看護)を、電話の横に貼って言える
- 痛みの出方と薬の飲み方を、受診時に自分の言葉で医師に伝えられる
立ち上がり・移動
- 訪問リハビリテーションで決めた立ち上がりの手順(浅く座り直す・足を引く・手すりを持つ)を毎回使える
- いすからの立ち上がりを、手すりを使って一人で行える
- 座り続けを避け、1時間に1回は立って動く習慣がつく
- 寝室からトイレまでを、伝い歩きせずに歩行器で移動できる
- 夜間のトイレを、明かりと手すりを使って安全に往復できる
段差・階段・外出
- 玄関の上がりかまちを、手すりと踏み台を使って一人で昇降できる
- 家の中の敷物とコード類を片づけ、つまずかずに移動できる
- 週◯回、近所の◯◯まで途中2か所で休みながら往復できる
- 通院の日に、送迎の手配と持ち物の準備を自分で整えられる
- 階段を使わずに1階で生活が完結する形に、生活の場を整えられる
杖・歩行器・装具
- 福祉用具専門相談員が合わせた高さで、杖を毎日使える
- 歩行器のブレーキと折りたたみの操作を、本人が一人で行える
- 貸与と販売のどちらを選ぶか、説明を聞いたうえで本人が決められる
- 装具の着け方と着けている時間を、本人と家族が言える
- 室内で使う道具と屋外で使う道具を使い分けられる
人工関節置換術の前後
- 手術前に、退院後の生活で困りそうな動作を3つ挙げて支援者に伝えられる
- 退院までに、寝室・トイレ・浴室の手すりと段差の準備が整う
- 退院後、リハビリテーションで教わった動作の注意点を本人と家族が言える
- 退院後◯週間、通所リハビリテーションに週◯回通える
- 手術していない側をかばいすぎないよう、教わった歩き方を続けられる
朝のこわばり・手指
- こわばりが軽くなる時間に合わせて、身支度を始める時刻を決められる
- 訪問介護の時間を午前の遅い時間に変え、着替えを自分で行える日が週◯日になる
- ボタンエイドや太柄のスプーンなど、手指に負担の少ない道具を使える
- 薬の一包化や服薬カレンダーを使い、飲み忘れがなくなる
- 重い物を指先で持たないなど、関節に負担のかかる動作の避け方を言える
歩ける距離と休憩の設計
- 自宅から◯◯までの道順に、腰かけられる場所を2か所決められる
- しびれが出たら座って休み、治まってから歩き出せる
- 買い物を1回にまとめず、週2回に分けて出かけられる
- 排尿の困りごとや足の力の変化を、受診時に医師へ伝えられる
住環境・福祉用具
- 据置型手すりを置き、ベッドからの立ち上がりを一人で行える
- 浴室に手すりと浴槽用手すりを入れ、介助を受けながら湯船に入れる
- 洋式便器への取替え後、トイレを一人で使える
- 玄関にスロープまたは踏み台を置き、外出時の出入りを安全に行える
- 寝具を布団からベッドに替え、起き上がりを自分で行える
体重・栄養・運動
- 主治医と相談した目安に沿って、月1回体重を測って記録できる
- 訪問リハビリテーションで決めた運動を、週◯回自宅で続けられる
- 座ったままできる運動を、テレビを見る時間に毎日行える
服薬・受診
- 処方どおりに服薬し、飲み残しがないことを訪問時に確認できる
- 薬の効き方や気になる体調の変化に家族が気づいて、連絡できる
- 定期受診に月◯回、送迎または付き添いを使って通える
- 受診の結果と次回の予定を、支援者に共有できる
気持ち・参加
- 週◯回、通所先で他の利用者と話す機会を持てる
- 痛みが強い日の気持ちの切り替え方を、自分で2つ言える
- 趣味の◯◯を、痛みの軽い時間に週◯回行える
一人暮らし・家族
- 緊急通報装置の使い方を覚え、必要なときに押せる
- 平日は毎日、誰かの訪問または電話がある形で1週間を過ごせる
- 家族が立ち上がりと移動の介助方法を、実際にやって見せられる
- 家族が週◯日、介護から離れて自分の時間を持てる
サービス内容の文例(53文例)

この章の文例は「サービス内容」欄に書きます。医療サービスは、主治医の指示にもとづくことが読み取れる形にします。運動の可否と量、主治医に聞けていますか。
主治医・医療機関との連携
- 主治医(整形外科など):関節疾患の治療、痛みへの対応、運動の可否と量の指示、手術の適否の判断
- ケアマネジャー:医療サービスの利用にあたり本人の同意を得て主治医の意見を求め、作成した居宅サービス計画を主治医へ交付する
- ケアマネジャー:本人の同意を得て、主治医から運動の可否・荷重の制限・避けるべき動作・入浴の可否を聞き取り、各事業所へ共有する
- ケアマネジャー:医療保険のリハビリテーションから介護保険のリハビリテーションへ移る時期を医療機関と確認し、事業所の見学・体験を調整する
- ケアマネジャー:各事業所が把握した痛みの出方・歩ける距離・つまずきや転倒の有無を、本人の同意を得て主治医へ伝える
- ケアマネジャー:身体障害者手帳や障害年金の相談窓口(市区町村・年金事務所)を案内し、経過を記録する
訪問看護(主治医の指示に基づく)
- 訪問看護:関節の痛み・腫れ・動かせる範囲・歩き方の観察と、変化があった場合の主治医への連絡
- 訪問看護:服薬の管理と、薬の効き方・気になる体調の変化の確認
- 訪問看護:手術後の傷や皮膚の観察、装具の使用状況の確認
- 訪問看護:痛みで動けない日の生活の組み立てについての助言と、本人・家族の相談対応
- 訪問看護:入浴の可否と手順を主治医に確認し、訪問介護へ伝える
訪問リハビリテーション・通所リハビリテーション(主治医の指示に基づく)
- 訪問リハビリテーション:自宅の環境に合わせた立ち上がり・移乗・歩行の練習と、動作手順の設定
- 訪問リハビリテーション:家の中の動線、手すりの位置、休憩できる場所の助言
- 訪問リハビリテーション:手術後の関節の動きと筋力の練習、日常動作への戻し方の指導
- 通所リハビリテーション:歩く力と筋力の維持、痛みの状態に合わせた運動量の調整
- 通所リハビリテーション:入浴の機会と、浴室での動作の練習
- 理学療法士・作業療法士:手指に負担の少ない自助具の提案と、使い方の指導
訪問介護
- 訪問介護(身体介護):起床・就寝時の起き上がりと立ち上がりの介助(本人ができる部分は待って行ってもらう)
- 訪問介護(身体介護):入浴介助(訪問看護から示された手順で浴槽の出入りを支え、痛みが強いときはシャワー浴に切り替える)
- 訪問介護(身体介護):更衣・整容の介助(手指の動きに合わせて、ボタンやファスナーの部分だけ手を貸す)
- 訪問介護(身体介護):トイレへの移動の見守りと介助
- 訪問介護(生活援助):調理(座って行える下ごしらえは本人と一緒に行い、重い鍋や高い場所の作業を代わる)
- 訪問介護(生活援助):掃除・洗濯(かがむ動作、重い洗濯かごの運搬、布団の上げ下ろしを代わる)
- 訪問介護員:訪問時に痛みの程度・歩き方・つまずきの有無を確認し、変化があればケアマネジャーへ報告する
通所介護
- 通所介護:入浴の機会の確保(浴槽の出入りの介助と、手すり・入浴台を使った動作の確認)
- 通所介護:体を動かす機会と、他の利用者との交流による生活リズムづくり
- 通所介護:送迎時の乗降介助と、玄関から車までの移動の見守り
- 通所介護:活動中の痛みの訴えと歩き方の変化を記録し、ケアマネジャーへ報告する
居宅療養管理指導
- 居宅療養管理指導(薬剤師):飲み合わせと残薬の確認、一包化や取り出しやすい包装の提案
- 居宅療養管理指導(管理栄養士):主治医の指示に基づく食事内容の助言(位置づけの要件は主治医に確認する)
- 居宅療養管理指導(医師):療養上の指導と、事業所への情報提供
- 居宅療養管理指導(歯科医師・歯科衛生士):口腔の状態の確認と口腔ケアの指導
福祉用具貸与・特定福祉用具販売
- 福祉用具貸与:据置型手すり(工事を伴わないもの)の設置と、立ち上がる位置に合わせた調整
- 福祉用具貸与:歩行器・歩行車の選定と、体格に合わせた高さの調整、定期的な点検
- 福祉用具貸与:歩行補助つえ(多点杖、ロフストランド・クラッチなど)の選定と高さの調整
- 福祉用具貸与:可搬型スロープによる段差の解消(工事を伴わないもの)
- 福祉用具貸与:特殊寝台の検討(起き上がりの負担を減らすもの。軽度者は例外給付の要否を保険者に確認する)
- 特定福祉用具販売:入浴用椅子・浴槽用手すり・浴槽内椅子・入浴台など、浴槽の出入りを支える用具の購入
- 福祉用具専門相談員:貸与と販売の選択制について説明し、担当者会議での協議を経て本人が選べるようにする(貸与を選んだ場合は利用開始から6か月以内に少なくとも1回モニタリングを行う)
住宅改修
- 住宅改修:玄関・廊下・トイレ・浴室・階段への手すりの取付け
- 住宅改修:上がりかまち・敷居の段差の解消
- 住宅改修:滑りにくい床材への変更(浴室・廊下)
- 住宅改修:和式便器から洋式便器への取替え
- 住宅改修:開き戸から引き戸への取替え(体をひねらずに開け閉めできるように)
保険外・地域の支援
- 配食サービス:痛みが強い日に調理をしなくても食べられる手段の確保と、手渡し時の安否確認(介護保険外)
- 買い物代行・移動販売・宅配:重い荷物を運ばずに買い物を続けられる手段の確保(介護保険外)
- 緊急通報装置:転倒や急な痛みの増強時に外部へ連絡できる体制の確保(自治体サービスなど)
- 別居家族・近隣・民生委員:定期的な電話連絡と訪問、ゴミ出しなどの手伝い
本人・家族の取り組み
- 本人:主治医と相談して決めた運動を続け、痛みが強い日は無理をせず休むこと
- 本人:立ち上がるときは手すりを使い、急に動き出さないこと
- 本人:痛みの出方や歩ける距離の変化を記録し、受診時に医師へ伝えること
- 家族:立ち上がりと移動の介助方法を訪問リハビリテーションから教わり、自分の腰も守る形で行うこと
- 家族:介護を一人で抱え込まず、負担が大きいときはケアマネジャーへ相談すること
書き方のコツ(深めたい方向け)
すぐ使いたい方は、ここから先は読まなくて大丈夫です。関節疾患ならではの書き分けのコツをまとめました。
コツ1:「痛みが軽くなる」を「痛みが出る場面と対処」に変える
痛みの強さを数字で書いたプランは、翌週には合わなくなります。関節疾患の痛みは1日の中で動き、天気で動き、季節で動きます。ケアマネジャーには痛みを測る手段もありません。
書き換える先は2つあります。ひとつは場面。「立ち上がりのとき」「階段の下りのとき」「夕方になってから」と、痛みが出る場面を特定します。もうひとつはそのときの対処。「座って休む」「手すりを持ち直す」「その日の家事を減らす」。この2つを組み合わせると、訪問介護員が「休めていたか」を確かめられ、訪問リハビリテーションが「手順を使えていたか」を担当者会議で報告できます。担当の方の痛みが出る場面、3つ挙げられますか。
コツ2:段差は「工事あり/なし」を決めてから文を書く
「段差を解消する」とだけ書いたプランは、次の一手が決まりません。決めるのは工事をするかどうかです。工事を伴わないスロープと据置型手すりは福祉用具貸与、工事を伴えば住宅改修になります。この分岐が決まると、担当者会議に呼ぶ相手(福祉用具専門相談員か、改修の事業者か)も、必要な書類も、かかる時間も決まります。
書き方はこうなります。「玄関の段差を解消する」ではなく「玄関に可搬型スロープを置き、外出時の出入りを安全に行える」(貸与)、または「上がりかまちの段差を解消し、手すりを取り付ける」(住宅改修)。住宅改修は支給限度基準額がまとめて20万円なので、どこを先に直すかの順番も第2表と担当者会議で決めておいてください。
コツ3:床の暮らしからいすの暮らしへの切り替えは、納得を目標に置く
変形性膝関節症の方に、日本整形外科学会は日常生活の注意として「正座をさける」「洋式トイレを使用する」を挙げています。理屈は分かっていても、仏壇の前に正座できなくなることや、和室をやめることは、ご本人にとって生活の形が変わる話です。「洋式便器に取り替える」とだけ書いたプランが止まるのは、たいてい工事ではなく気持ちの側です。
第2表に置くのは、切り替えそのものではなく納得の過程です。ニーズに「正座ができなくなり仏壇の前に座れないので、別の姿勢でお参りしたい」と、ご本人の言葉のまま置く。短期目標に「和式のトイレがつらいので、楽に用を足せるようにしたい」を受けて「洋式便器への取替え後、トイレを一人で使える」を置く。目的が「膝を守ること」ではなく「お参りを続けること」「トイレに間に合うこと」になっていると、話が前に進みます。
コツ4:関節リウマチは「時間帯」で設計する
介護保険の主治医意見書で使われる診断基準では、朝のこわばりは「少なくとも1時間以上」持続するものとされています。つまり関節リウマチの方の午前中は、他の疾患の方の午前中と同じではありません。
第2表と第3表(週間サービス計画表)でやることは、サービスの時間割を後ろにずらすことです。着替えの介助を9時に入れているなら、こわばりが軽くなる時間に合わせて動かせないか検討します。「訪問介護の時間を午前の遅い時間に変え、着替えを自分で行える日が週◯日になる」という短期目標は、時間を動かしたからこそ達成できる形です。
手指の変形は、道具で解決できる部分が大きい領域です。ボタンエイド、太柄のスプーン、レバー式の蛇口、ペットボトルオープナー。作業療法士が自助具を持っていることが多いので、訪問リハビリテーションか通所リハビリテーションに相談してみませんか。あわせて、関節リウマチは関節だけの病気ではなく、貧血・だるさ・微熱が出ることもあると学会は説明しています。「今日は動けない」を怠けと受け取らない前提を、サービス内容の書きぶりに込めておいてください。
コツ5:歩ける距離は「メートル」でなく「休む場所」で書く
脊柱管狭窄症の方に特徴的なのが間欠跛行です。日本整形外科学会と日本脊椎脊髄病学会のパンフレットは「歩く・休むを繰り返す状態」と説明し、症状は立つ・歩くで悪化し、座る・前かがみで軽くなるとしています。
ここで「300m歩ける」を目標にすると、体調のよい日と悪い日で達成が揺れます。書くのは距離ではなく休む場所です。「自宅から◯◯までの道順に、腰かけられる場所を2か所決められる」。この形なら、道順の下見が支援になり、ベンチのある道を選ぶことが具体的な支援内容になります。
2つ注意があります。ひとつは、パンフレットが「歩行時は杖やシルバーカーを押して腰をかがめると下肢痛が楽になります」と書く一方で、「腰をかがめた姿勢は腰痛の悪化につながることがあり、長期間その状態を続けることはお勧めできません」とも書いていることです。シルバーカーを一方向に勧めないでください。もうひとつは、同じパンフレットが「下肢の動脈がつまり血流障害を生じたときも似たような症状となる」と注意していることです。間欠跛行があるからといって脊柱管狭窄症とは限りません。 未受診の方の症状を聞き取ったら、受診につないでください。
現場のひとこと
関節疾患のプランは、福祉用具専門相談員と訪問リハビリテーションがすでに持っている情報を取りに行くだけで、半分できます。立ち上がりでどこにつかまっているか。手すりを付けるならどの高さか。外出でどこまで歩けて、どこで休んでいるか。杖と歩行器のどちらが合っているか。この4つは、初回訪問の前に電話を1本入れれば出てきます。
そして、ご本人の側から先に出てくる困りごとは、たいてい痛みではなく生活のほうです。仏壇の前に座れない。孫の運動会に行けない。ゴミ出しの日が憂うつだ。ここを第2表のニーズにそのまま置くと、その下の目標とサービス内容が自然に決まっていきます。
運営指導で見られやすいポイント
1. 訪問看護・訪問リハビリテーション・通所リハビリテーションなど医療サービスについて、主治医の指示を確認した経過が記録に残っているか(平成11年厚生省令第38号 第13条第20号)
2. 医療サービスの利用にあたり利用者の同意を得て主治医の意見を求め、作成した計画を主治医へ交付した記録があるか(同 第13条第19号・第19号の2)
3. 目標が「痛みが軽減する」など測れない表現ではなく、本人が取り組める行為になっているか
4. 福祉用具貸与について、貸与と販売の選択制の説明を行った経過と、担当者会議での協議の記録が残っているか
5. 軽度者に原則給付対象外の種目(車いす・特殊寝台など)を位置づけている場合、医師の所見と担当者会議の記録、市町村への確認の経過が残っているか
6. 住宅改修について、必要性の判断と担当者会議での検討の経過が残っているか
7. 医療保険のリハビリテーションから介護保険のリハビリテーションへ移行した場合、医療機関との調整の経過が残っているか
よくある迷いどころ
58歳で変形性膝関節症と診断されました。介護保険は使えますか
条件が付きます。40歳以上65歳未満の方(第2号被保険者)が要介護認定を受けられるのは、要介護状態の原因が特定疾病による場合に限られます。関節では第16号「両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症」が該当しますが、条文は「両側の」「著しい変形を伴う」と限定しています。片側だけの変形性膝関節症は、条文上この号に当たりません。
「著しい変形」の中身は厚生労働省の通知の別添3で定められていて、X線所見上の変形に加えて、日本整形外科学会の判定基準で何らかの障害が認められることが求められます。該当するかどうかを決めるのは主治医意見書と介護認定審査会です。まず整形外科の主治医に相談し、意見書に病名と所見が載る形にしてから申請してください。なお65歳以上の方には特定疾病の要件そのものがありませんので、片側の膝だけでも申請できます。
手すりは福祉用具貸与ですか、住宅改修ですか
工事をするかどうかで分かれます。貸与の告示は「手すり」に「取付けに際し工事を伴わないものに限る」という限定を付けているので、床に置く据置型は貸与です。壁にねじで固定するなら住宅改修になります。
実務では、まず据置型を借りて位置と高さを試し、その位置で確定してから改修する流れが取りやすい場面があります。どちらにするかを担当者会議で協議した記録を残しておいてください。詳しい書き分けは【福祉用具貸与・販売/住宅改修】ケアプラン第2表の文例集にあります。
要支援1です。歩行器や手すりは借りられますか
借りられます。軽度者が原則給付対象外となるのは、車いす(付属品含む)・特殊寝台(付属品含む)・床ずれ防止用具・体位変換器・認知症老人徘徊感知機器・移動用リフト(つり具の部分を除く)・自動排泄処理装置の7種目です。手すり・スロープ・歩行器・歩行補助つえは、この7種目に入っていません。
車いすや特殊寝台を位置づけたい場合は例外給付の手続きになり、医師の医学的な所見とサービス担当者会議等を通じたケアマネジメント、そのうえで市町村が書面等で確認して要否を判断する、という3段階を踏みます。位置づけを検討する段階で保険者に相談してください。要支援の方の予防プラン全体の書き方はケアプラン予防プラン「運動器の機能向上」の文例集にあります。
人工関節を入れたら、手帳や年金はどうなりますか
2つの制度は逆向きなので、分けて説明してください。
身体障害者手帳は、平成26年1月21日付け通知の改正(同年4月1日適用)で「股関節(および膝関節)に人工骨頭又は人工関節を用いたもの」という具体例が削除され、現行は「置換術後の経過が安定した時点の機能障害の程度により判定する」となっています。人工関節を入れたことだけで等級が決まる形ではありません。判定は指定医の診断と自治体の審査によります。
障害年金は、日本年金機構が掲載している障害認定基準で「一下肢の3大関節中1関節以上に人工骨頭又は人工関節をそう入置換したもの」は3級と認定するとされています。ただし3級があるのは障害厚生年金だけで、初診日の加入制度・保険料の納付要件などの条件があります。ご本人には「制度があるので年金事務所で相談できます」と伝え、等級や金額の見通しは言わないでください。窓口は、手帳が市区町村、障害年金が年金事務所です。
医療のリハビリと介護のリハビリ、いつ切り替えますか
運動器リハビリテーション料の標準的算定日数は150日です。変形性関節症や関節リウマチのように発症日がはっきりしない疾患では、起算日は「最初に当該疾患の診断がされた日」になります。手術も骨折もしていないのに期限が近い、という場面はここから来ます。
150日を超えた後は、要介護認定を受けていない方は1月13単位まで算定できる(注6)、入院中の要介護被保険者等は減額された点数で1月13単位まで算定できる(注7)、と分かれます。条文上、外来で要介護認定を受けている方は算定の対象から外れる形になるので、介護保険の通所リハビリテーション・訪問リハビリテーションへ移ります。ただし状態の改善が期待できると医学的に判断される場合等は150日を超えて算定できる定めもあり、施設基準の届出状況によっても扱いが変わります。切り替えの時期は医療機関に確認してください。
留意事項通知は、事業所の紹介や実施計画書の提供にあたって介護支援専門員を名指ししています。150日が見えてきたら、こちらから連絡を入れて調整を始めるのが早道です。訪問リハビリテーションの文例は【訪問リハビリテーション】ケアプラン第2表の文例集、通所リハビリテーションの文例は【通所リハビリテーション(デイケア)】ケアプラン第2表の文例集にあります。
まとめ
✓ 特定疾病の名前は「変形性膝関節症」ではなく「両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症」。片側だけは条文上この号に当たらない(施行令第2条第16号)
✓ ただしこれは40〜64歳の話。65歳以上には特定疾病の要件そのものがない
✓ 施行令の表記は「脊柱管狭窄症」で、部位の限定はない。診断基準も「頸椎部、胸椎部又は腰椎部のうち、いずれか1以上の部」
✓ 「介護が必要になった原因の1位が関節疾患」は要支援者に限った話(19.3%)。総数の1位は認知症16.6%、要支援1では関節疾患は2位
✓ 目標欄に痛みの強さを書かない。痛みが出る場面と、そのときの対処で書く
✓ 段差と手すりは「工事なし=福祉用具貸与/工事あり=住宅改修」で分岐。住宅改修の支給限度基準額はまとめて20万円
✓ 軽度者の原則給付対象外7種目に、手すり・スロープ・歩行器・歩行補助つえは入っていない
✓ 人工関節は、手帳と障害年金で向きが逆。混ぜて説明しない
✓ 運動器リハビリテーション料の150日は、慢性疾患では「最初に診断された日」から起算する
あわせて読みたい
【通所リハビリテーション(デイケア)】ケアプラン第2表の文例集
ケアプラン第2表 目標の文例集|測定可能な長期目標・短期目標
参考・出典
介護保険法施行令(平成10年政令第412号)第2条第2号・第4号・第5号・第9号・第16号/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/410CO0000000412
厚生労働省「特定疾病の選定基準の考え方」 https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/nintei/gaiyo3.html
厚生労働省 老健局老人保健課長通知「要介護認定における『認定調査票記入の手引き』、『主治医意見書記入の手引き』及び『特定疾病にかかる診断基準』について」(平成21年9月30日 老老発0930第2号)別添3/厚生労働省法令等データベース https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb6469&dataType=1&pageNo=6 ・ https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb6469&dataType=1&pageNo=5 (2026年9月時点で現行として掲載されている版)
厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」Ⅳ 介護の状況 表17 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/dl/05.pdf
厚生労働大臣が定める福祉用具貸与及び介護予防福祉用具貸与に係る福祉用具の種目(平成11年厚生省告示第93号) https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001506161.pdf
厚生労働大臣が定める特定福祉用具販売に係る特定福祉用具の種目等(平成11年厚生省告示第94号) https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001506168.pdf
厚生労働省「福祉用具の貸与と販売の選択制の対象とする種目に関する解釈」 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001303228.pdf
厚生労働大臣が定める居宅介護住宅改修費等の支給に係る住宅改修の種類(平成11年厚生省告示第95号)/厚生労働省法令等データベース https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82999422&dataType=0&pageNo=1
居宅介護住宅改修費支給限度基準額及び介護予防住宅改修費支給限度基準額(平成12年厚生省告示第35号)/厚生労働省法令等データベース https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82aa0269&dataType=0&pageNo=1
厚生労働省「要支援・要介護1の者に対する福祉用具貸与について」 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000875875.pdf
「『身体障害者障害程度等級表の解説(身体障害認定基準)について』の一部改正について」(平成26年1月21日)改正後本文/厚生労働省法令等データベース https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb9986&dataType=1&pageNo=1
同 新旧対照表(厚生労働省 疾病・障害認定審査会 身体障害認定分科会 資料) https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/kaigi_shiryou/dl/20131212_01_05.pdf
日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」第3 第1章 第7節 肢体の障害(令和4年4月1日改正版/2026年9月時点の掲載) https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/ninteikijun/20140604.html ・ https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/ninteikijun/20140604.files/3-1-7-2.pdf
診療報酬の算定方法 別表第一 医科診療報酬点数表 H002 運動器リハビリテーション料(告示) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
同 留意事項通知(H002 運動器リハビリテーション料) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001732089.pdf
厚生労働省告示第119号(要介護被保険者等である患者について療養に要する費用の額を算定できる場合の一部改正・令和8年6月1日から適用) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001681999.pdf
指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)第13条第19号・第19号の2・第20号/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100038
公益社団法人 日本整形外科学会「変形性膝関節症」 https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/knee_osteoarthritis.html
公益社団法人 日本整形外科学会「変形性関節症」 https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/osteoarthritis.html
公益社団法人 日本整形外科学会「関節リウマチ」 https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/rheumatoid_arthritis.html
公益社団法人 日本整形外科学会 患者向けパンフレット(脊柱管狭窄症・2024年12月作成/編集協力 一般社団法人 日本脊椎脊髄病学会) https://www.joa.or.jp/public/sick/pdf/MO0013CKA.pdf ・ 解説ページ https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/lumbar_spinal_stenosis.html
※文例はあくまで参考です。運動の可否と量、荷重や動作の制限、装具の使い方、入浴の可否と手順、服薬、体重の目安は、必ず主治医と訪問看護・リハビリテーション職の指示にもとづいて個別に決めてください。特定疾病に該当するかどうかの判断は主治医意見書と介護認定審査会によるもので、支援者が決めるものではありません。福祉用具の例外給付の可否、住宅改修の対象範囲、身体障害者手帳の等級認定、障害年金の受給要件は、主治医・福祉用具専門相談員・お住まいの市区町村(保険者)・年金事務所によって案内が異なる場合があります。実際の取り扱いについては、主治医およびお住まいの市区町村(保険者)にご確認ください。

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