「68歳、一人暮らし。半年前に精神科でうつ病と診断され、薬を飲んでいる。昼まで起きられず、食事は1日1回。デイサービスは『行けない』と断る」。この方の第2表で、長期目標に「意欲が出て、前向きに過ごせる」と書きかけていませんか。書けない理由ははっきりしています。気分は、ケアチームが解決できる課題ではないんです。第2表に載るのは、気分ではなく、生活の中でご本人が取り組める行動です。

昼まで起きられない。外に出ない。食べない。眠れない。薬を飲みたがらない。デイもヘルパーも断る。家族が「怠けているだけ」と言う。この7つを聞き取ると、文例を選ぶ場所が決まります。
この記事では、うつ病・高齢者のうつ(意欲低下・閉じこもり・食欲不振)の第2表で使える文例を、症状名ではなく「生活の困りごと」の場面ごとに170本まとめました。起きられない、閉じこもり、食事と体重、睡眠、服薬と副作用、通所や訪問を断る、入浴と身だしなみ、話せる相手と受診、家族の疲れ、一人暮らし、お金と制度まで並べています。気になる行をコピーして、ご本人の状態に合わせて言葉を入れ替えて使ってください。要支援1・2の方の予防プランは「うつ予防」の記事に、認知症の文例は認知症の記事に分けています。制度の部分は、介護保険法と施行令、特定疾病の診断基準、認定調査員テキスト、日本うつ病学会のガイドライン、e-ヘルスネット、給付調整通知、訪問看護療養費の告示、高齢者の医薬品適正使用の指針、自殺対策基本法、精神保健福祉法、障害者総合支援法、記載要領などの原文にあたって書いています。
この記事の文例の並び方
第2表の欄ごとに章を分けています。
1章目:ニーズ(「〜したい」の形・主語はご本人)
2章目:長期目標
3章目:短期目標
4章目:サービス内容
各章の中は場面別に分かれているので、担当の方に近い場面から拾ってください。後半に「書き方のコツ」と「運営指導で見られやすいポイント」があります。
- 文例の前に:うつ病・高齢者のうつの第2表で押さえること
- この記事の範囲:診断がついている要介護の方。要支援と認知症は別の記事へ
- うつ病は特定疾病に無い:40〜64歳で「うつ病だけ」が原因なら、介護保険の対象外
- 65歳以上:認定調査に「意欲低下」の項目は無い。特記事項に「手間と頻度」を渡す
- 高齢者のうつは、体の症状が前に出る。「治る」「必ず」は書かない
- うつと認知症は見分けがつきにくい。鑑別は主治医と認知症疾患医療センターへ
- 精神科訪問看護は、要介護の方でも医療保険。ただし「精神科の医師の指示書」が要件
- 抗うつ薬の副作用は「観察して主治医・薬剤師へ」。自己判断でやめない
- ケアマネジャーはゲートキーパー:「気づく・声をかける・聞く・つなぐ・見守る」。診断・治療・説得はしない
- 目標に気分を書かない:「意欲が出る」「前向きになる」は記載要領の「抽象的な言葉」
- 「行きたくない」を「拒否」と書かない:無理に勧めない、短時間から
- お金と制度:手帳は65歳以上でも取れる。自立支援医療は「うつ病」が名指し。障害年金は初診日で決まる
- 家族:「怠けている」の誤解を、医療者の言葉で解く
- ニーズ(生活全般の解決すべき課題)の文例(54文例)
- 長期目標の文例(16文例)
- 短期目標の文例(44文例)
- サービス内容の文例(56文例)
- 書き方のコツ(深めたい方向け)
- 運営指導で見られやすいポイント
- よくある迷いどころ
- まとめ
- あわせて読みたい
- 参考・出典
文例の前に:うつ病・高齢者のうつの第2表で押さえること
この記事の文例は、精神科または内科でうつ病(うつ状態)の診断を受け、治療を続けている要介護の方の第2表を主軸にしています。うつ病の第2表は、介護保険・医療保険・障害福祉の3つの制度が同時に走る場面で書きます。その前に、言葉と制度の入口を12個。
この記事の範囲:診断がついている要介護の方。要支援と認知症は別の記事へ
要支援1・2と事業対象者の方は、予防プランの記事に分けています。基本チェックリストのうつの5項目、GDSとの関係、「つらくて死にたい」と言われたときの受け止め方と相談先は、そちらにまとめてあります。この記事では繰り返しません。
認知症の方の文例(記憶・見当識・服薬・安全・交流)は、認知症の記事へ。この記事では「うつと認知症の見分け方を誰に頼むか」だけを書き、認知症の文例は書きません。
数の感覚を1つ。令和5年の患者調査で、気分[感情]障害(躁うつ病を含む)の総患者数は1,593千人。うち65歳以上は453千人で28.4%、40〜64歳は805千人で50.5%(年齢階級を足して割った数)です。「うつ病の患者数」ではなく、双極性障害などを含む分類の数字である点に注意してください。調査日1日あたりの入院患者に限ると、26.6千人のうち65歳以上が17.1千人で64.3%を占めます。一方、国民生活基礎調査の「介護が必要となった主な原因」にうつ病の項目はなく、「その他」に含まれるとしか言えません。介護が必要になった原因としてうつ病がどれくらいかは、国民生活基礎調査(令和4年)の項目では出せないんです(「その他」に含まれるとしか読めません)。
うつ病は特定疾病に無い:40〜64歳で「うつ病だけ」が原因なら、介護保険の対象外
「58歳の方がうつ病で動けなくなった。介護保険を申請できないの?」。ここは施行令の条文どおりに読むのがいちばん早い方法です。
介護保険法第7条第3項第2号は、40歳以上65歳未満の方を「その要介護状態の原因である身体上又は精神上の障害が加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病であって政令で定めるもの(以下「特定疾病」という。)によって生じたもの」に限って要介護者としています。施行令第2条の16疾病を全部読むと、精神疾患で載っているのは第6号「初老期における認知症」だけ。うつ病・気分障害はどこにもありません。 40〜64歳でうつ病だけが原因の生活障害は、要介護認定を申請しても対象になりません。
行き先は障害者総合支援法です。法第4条第1項の「障害者」には、精神保健福祉法第5条第1項の精神障害者(「統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害その他の精神疾患を有する者」)で18歳以上の方が入ります。うつ病は「その他の精神疾患」です。市町村の障害福祉窓口で、居宅介護・自立訓練(生活訓練)・地域活動支援センターなどを相談する形になります。通院と薬の費用は自立支援医療(精神通院)へ。
「初老期における認知症」で申請できるとは書けません。特定疾病の診断基準(老老発0930第2号 別添3)の「6」は、記憶障害と、失語・失行・失認・実行機能障害のいずれかの両方があり、「病前の機能水準からの著しい低下」を示し、「せん妄の経過中にのみ現れるものではない」こと。認知症の診断基準と同じ中身です。該当するかは主治医意見書の記載にもとづいて介護認定審査会が確認します。ケアマネジャーが書けるのは「40〜64歳で物忘れや判断の遅さが前に出ているなら、認知症なのかうつ病なのかを主治医に確認してもらってから、申請の要否を判断する」までです。
例外が1つ。うつ病に加えて脳血管疾患など別の特定疾病があり、そちらが要介護状態の原因なら対象になります。「うつ病だけが原因の場合」と限定して読んでください。
65歳以上:認定調査に「意欲低下」の項目は無い。特記事項に「手間と頻度」を渡す
65歳以上なら、法第7条第1項の「身体上又は精神上の障害」に精神上の障害が含まれるので、うつ病による要介護状態は認定の対象です。ただし、認定調査の第4群「精神・行動障害」15項目(令和6年4月改訂の認定調査員テキスト)に、意欲低下・抑うつ・拒食に当たる項目はありません。4-1「物を盗られたなどと被害的になる」から4-15「話がまとまらず、会話にならない」まで読んでも、うつの方の困りごとは直接には載っていないんです。4-3「泣いたり、笑ったりして感情が不安定になる」は、「場面や目的からみて不適当な行動」があるかどうかで選ぶ項目で、落ち込みそのものを拾う項目ではありません。
拾ってもらう道はテキストのp.18にあります。「基本調査項目の中には該当する項目が存在しないものの、類似の行動またはその他の精神・行動障害などにより具体的な『介護の手間』が生じていることが聞き取りにより確認された場合は、類似または関連する項目の特記事項に、具体的な介護の手間の内容と頻度を記載し、介護認定審査会の二次判定(介護の手間にかかる審査判定)の判断を仰ぐことができる」。
つまり、ケアマネジャーが調査員に渡すのは「意欲がない」ではなく、「食事の声かけに毎食○分かかる」「入浴を促しても週○回は断り、○回目でやっと入る」という手間と頻度です。認定調査の前に、訪問介護の提供記録から数字を拾って整理しておくと、特記事項に載ります。
もう1つ。食事・整容・着替えなど「介助の方法」で評価する項目には「2.見守り等」(確認・指示・声かけ)の選択肢があります。「声をかけないと食べない」「促さないと着替えない」は、基本調査で「見守り等」を選んでもらい、その頻度を特記事項に書く形です。
主治医意見書でうつ病が載る場所は「3.(4) その他の精神・神経症状」で、「認知症以外の精神・神経症状があれば…その症状名を記入」「専門医を受診している場合は…受診の科名を記入」という欄です。手引きの定義例に「うつ」の語はなく、医師が自由に書きます。(3)の周辺症状の欄(昼夜逆転など)は「その他の疾患で同様の状態が認められる場合も、該当する□にレ印」なので、うつによる昼夜逆転も意見書に載りえます。ケアマネジャーにできるのは、精神科にかかっていること、処方の内容、専門医の科名が、意見書を書く医師に届くよう情報を渡すことまで。精神科の主治医と内科のかかりつけ医が別のとき、どちらに意見書を頼むかの指針は見つけていません。どちらが生活の障害を把握しているかを軸に、市町村とご本人に相談してください。
高齢者のうつは、体の症状が前に出る。「治る」「必ず」は書かない
日本うつ病学会の「高齢者のうつ病治療ガイドライン」は、高齢者のうつ病について「自殺念慮、悲観、精神運動激越、心気症、身体症状、精神病症状の頻度が高い」「再発率が高く、維持療法が重要である」「自殺や認知症への進行に注意が必要である」とまとめています。抑うつ気分と興味・喜びの喪失は年齢を問わず共通の中核症状ですが、その次に来る症状が高齢者では「自殺念慮、悲観」で、成人早期の「易疲労感や食欲の変化」と違うと書いています。
厚生労働省のe-ヘルスネットは、うつ病を「何もやる気が出ない(意欲低下)・悲しい気持ちになる(抑うつ気分)などの『こころの症状』と、食欲がでない(食欲低下)・眠れない/起きられない(不眠/過眠)・体がだるい(倦怠感)・口が渇く・頭痛・動悸・めまいや耳鳴りなどの『体の症状』が現れる病気」とし、「体の症状が目立つため、こころの症状に気づきにくいことがあります」と書いています。糖尿病・心臓病・がんなどの慢性疾患や脳梗塞・心筋梗塞のある方はうつ病にかかりやすいことも知られています。こころの情報サイト(国立精神・神経医療研究センター)は「身体の病気や内科治療薬が原因となってうつ状態が生じることもある」とし、厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針」の表1は、抑うつを起こしうる薬として中枢性降圧薬・β遮断薬・抗ヒスタミン薬・副腎皮質ステロイドなどを挙げています。
第2表への落とし込みはこうです。「食欲がない」「眠れない」「だるい」「頭が痛い」を体の症状として書き、精神科の主治医とかかりつけ医の両方に届く形にします。「気分が落ち込んでいる」だけを書くと、体の観察が抜けます。ガイドラインは「寛解後少なくとも1年は持続療法を行う」ことを推奨しているので、主治医の方針に沿って、症状が軽くなっても薬を続ける前提で計画を組みます。「治る」「必ず良くなる」は書きません。「休養と治療を続けながら、生活の形を保つ」で書きます。
うつと認知症は見分けがつきにくい。鑑別は主治医と認知症疾患医療センターへ
ガイドラインの序文に「高齢者のうつ病では、しばしば思考制止や注意・集中力の低下を示し、一見認知症のようにみえる(うつ病性仮性認知症)」とあります。逆に「高齢発症の抑うつ症状は認知症の初期症状である可能性がある」とも、「両疾患を併存している可能性も考慮する必要がある」とも書いています。うつ病の人が認知症のように見える。認知症の初期がうつに見える。両方あることもある。だからケアマネジャーは見分けず、主治医に相談する。この4点が線引きです。
ガイドラインには「抑うつ状態とアパシーの臨床的鑑別のポイント」という表もあります。抑うつ状態では「活動性の低下に葛藤・苦痛を伴う」、アパシーでは「葛藤・苦痛を伴わない」。ご本人が「やらなきゃと思うのに体が動かない」「申し訳ない」と苦痛を語るかどうかは、聞き取りの手がかりになります。ただし、ケアマネジャーが判定に使う表ではありません。聞いた言葉をそのまま主治医に渡す材料にしてください。
相談先の1つが認知症疾患医療センターです。厚生労働省は役割を「認知症の速やかな鑑別診断や、行動・心理症状(BPSD)と身体合併症に対する急性期医療、専門医療相談、関係機関との連携」とし、老健局の通知(老推発0904第2号)は「地域包括支援センターや介護支援専門員等への連絡調整を含め、個々の患者に対する相談を行う機能を有しており」と書いています。物忘れが前に出てきたら、主治医からセンターへの紹介を相談する形で第2表に置けます。鑑別診断の受診は主治医の紹介で、相談だけならケアマネジャーから直接電話してかまいません(受診の要件はセンターごとに違うので初回に確認)。
精神科訪問看護は、要介護の方でも医療保険。ただし「精神科の医師の指示書」が要件
「うつ病なら訪問看護は医療保険になるんですよね?」。半分正しくて、半分違います。
給付調整通知(老老発0327第2号・保医発0327第4号、令和8年3月27日改正・令和8年6月1日適用)の7は、こう書いています。「精神疾患を有する患者について、精神科訪問看護指示書が交付された場合は、要介護被保険者等の患者であっても算定できる。ただし、認知症が主傷病である患者(精神科在宅患者支援管理料を算定する者を除く。)については算定できない」。これは病院・診療所からの訪問(精神科訪問看護・指導料)についての文言です。訪問看護ステーションからの訪問(訪問看護療養費)については8(1)で、要介護者に算定できる場合として「精神科訪問看護基本療養費が算定される指定訪問看護を行う場合(認知症でない患者に指定訪問看護を行う場合に限る。)」を挙げています。
入口は「精神科訪問看護指示書」です。訪問看護療養費の告示(平成20年厚生労働省告示第67号 区分01-2)の注1は、この指示書を書く主治医を「保険医療機関の保険医であって精神科を担当するものに限る」とし、留意事項通知は「精神科を標榜する保険医療機関において精神科を担当する医師」と書いています。精神科を掲げていない内科のクリニックでは書けない指示書です。訪問するのは、届出をしたステーションの「精神障害を有する者に対する看護について相当の経験を有するもの」に限る看護師等です。回数は週3日が限度で、退院後3か月以内は週5日。精神科特別訪問看護指示書が出れば1か月に1回、14日を限度に毎日でも訪問できます。30分未満の区分もありますが、これは主治医が「短時間訪問の必要性あり」と指示書に明記した場合にだけ算定できます(訪問看護療養費の留意事項通知 第3の4)。「短時間から始めたい」は、先に主治医へ伝えて指示書に書いてもらう項目です。
つまり、線はこう引けます。
(1)精神科の医師が精神科訪問看護指示書を出す=医療保険。第2表に「医療保険」と明記し、第7表には載せない。
(2)内科のかかりつけ医が抗うつ薬を出していて、その医師の訪問看護指示書=介護保険の訪問看護。第7表に載る。
(3)うつ病と認知症の両方の診断がある方は要確認。通知の文言上、ステーションからの精神科訪問看護基本療養費は「認知症でない患者」に限られ(8(1)・別紙※9「認知症患者を除く」)、病院・診療所からの精神科訪問看護・指導料は「認知症が主傷病である患者」が除かれる(7)。どちらの保険で組むかはケアマネジャーが決めず、主治医・ステーション・保険者に「診断名の記載と指示書の種類」を確認してから第2表と第7表を書く。
神経難病やがんの記事で書いた別表第七(疾病名のリスト)とは別の入口です。うつ病は別表第七にありませんが、精神科の指示書で医療保険になります。介護保険と医療保険の切り分けの全体は、訪問看護の記事にまとめています。
精神科訪問看護指示書の様式(近畿厚生局掲載の参考様式)には「精神訪問看護に関する留意事項及び指示事項」として、1 生活リズムの確立/2 家事能力、社会技能等の獲得/3 対人関係の改善(家族含む)/4 社会資源活用の支援/5 薬物療法継続への援助/6 身体合併症の発症・悪化の防止/7 その他、の7項目が並んでいます。「複数名訪問の必要性」「短時間訪問の必要性」「複数回訪問の必要性」の各「あり・なし」欄もあります。現行様式は改定されている可能性があるので項目例として読んでください。第2表のサービス内容(訪問看護)をこの7項目の言葉で書くと、医師の指示と揃います。
抗うつ薬の副作用は「観察して主治医・薬剤師へ」。自己判断でやめない
薬の名前や用量は主治医の領域なので書きません。ケアマネジャーが持っておくのは「何が起きたら薬を疑うか」です。
「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」の表1「薬剤起因性老年症候群と主な原因薬剤」に、抗うつ薬がそのまま載っています。ふらつき・転倒=抗うつ薬。記憶障害・せん妄・便秘・排尿障害=抗うつ薬(三環系)。食欲低下=SSRI。指針は「患者の生活に変化が出たり、新たな症状が出現したりする場合には、まず薬剤が原因ではないかと疑ってみる。有害事象の早期発見には、関連職種からの情報提供も有用である」と書いています。ガイドラインも「抗うつ薬の効果発現より早くに有害事象が生じるため、早期発見に努める」としています。
「関連職種からの情報提供」を制度の言葉にすると、運営基準(平成11年厚生省令第38号)第13条第13号の2です。「利用者の服薬状況、口腔機能その他の利用者の心身又は生活の状況に係る情報のうち必要と認めるものを、利用者の同意を得て主治の医師等又は薬剤師に提供する」。訪問介護員が「薬を変えてからふらつく」「食事が減った」と記録した情報を、ケアマネジャーが主治医・薬剤師に届ける。この流れを第2表に書きます。
もう1つ、やめ方です。こころの情報サイトは「抗うつ薬は、継続して服用する必要があり、服用を開始してもすぐに効果が現れません。主治医の指示に従い、自分の判断で薬の量を増やしたり減らしたり中断したりせず」と書き、e-ヘルスネットは「服薬を始めてから自覚症状が緩和するまでには数週間かかる」としています。指針は「SSRIは急な中止により離脱症状が発現するリスクがあることにも留意」。「やめたい」と言われたら、やめる前に主治医か訪問看護師に話す、を目標に置きます。精神科と内科の両方から薬が出ている方は、薬剤師の居宅療養管理指導(主治医の指示に基づく)で服薬管理を一つの窓口にまとめる型が書けます。
ケアマネジャーはゲートキーパー:「気づく・声をかける・聞く・つなぐ・見守る」。診断・治療・説得はしない
厚生労働省は「ゲートキーパー」を「自殺の危険を示すサインに気づき、適切な対応(悩んでいる人に気づき、声をかけ、話を聞いて、必要な支援につなげ、見守る)を図ることができる人」と定義しています。ゲートキーパーの養成は自殺総合対策大綱に位置づけられ、厚生労働省は「かかりつけの医師を始め、教職員、保健師、看護師、ケアマネージャー、民生委員、児童委員、各種相談窓口担当者など」に研修を行うとしています。ケアマネジャーは名指しされているんです。
この5つの動詞に「診断する」「治療する」「説得する」はありません。ケアマネジャーの線引きは、この5動詞で書けます。 自殺対策基本法(令和8年4月1日施行の改正版)第2条第2項は「自殺が個人的な問題としてのみ捉えられるべきものではなく、その背景に様々な社会的な要因がある」と定め、大綱は高齢者について「閉じこもりやうつ状態になることを予防することが、介護予防の観点からも必要」とし、介護者への支援の充実も掲げています。数字を1つだけ。令和7年中の自殺者数19,188人のうち60歳以上は6,903人で36.0%(年齢階級を足して割った数)。70歳代・80歳以上の原因・動機は「健康問題」が最多です。ガイドラインは「希死念慮や悲観的な言動等が認められる場合は、躊躇せずしかるべき対応をとる必要がある」と書いています。相談窓口は厚生労働省「まもろうよ こころ」にまとまっています。
では、第2表に「希死念慮あり」と書きますか。ここは現場で判断が分かれるところで、公的な指針は見つけていません。判断の材料は3つです。第2表はご本人に交付し、家族も目にする書類であること。担当者(サービス事業所)すべてに配られること。介護予防マニュアルの三次予防の項が「うつ病の人、家族や自殺未遂をした人の家族等への支援等は、プライバシーに十分配慮した対応が求められる」としていること。一方で、ケアチームが「死にたい」の発言を共有していない状態は危ない。
この記事の型はこうです。第2表には「つらいときに話せる相手と連絡先がある」「精神科の主治医に週○回の訪問看護で体調と気持ちを報告する」という医療連携と見守りの形で書き、発言そのものと、その場でとった対応は、アセスメント記録・支援経過・サービス担当者会議の記録に残す。 断定ではなく、編集部が使っている型として読んでください。
目標に気分を書かない:「意欲が出る」「前向きになる」は記載要領の「抽象的な言葉」
記載要領(老企第29号・令和3年3月31日改正後)は、第2表の目標について「抽象的な言葉ではなく誰にもわかりやすい具体的な内容で記載することとし、かつ目標は、実際に解決が可能と見込まれるものでなくてはならない」と書いています。記載要領は「気分を目標にしてはいけない」と直接は書いていません。ただ、「意欲が出る」「気持ちが前向きになる」「気分が安定する」は、誰が見ても達成を確かめようがない言葉で、ケアチームが解決できる課題でもない。この記事では「抽象的な言葉」の趣旨から、目標は行動と生活のレベルで書く、と整理しています。
書き換えの型を3つ。「意欲が出る」→「週2回、玄関先まで出て郵便物を取りに行ける」。「食欲が戻る」→「主食を毎食半分以上食べる日が週5日ある」。「薬を続けられる」→「処方どおりに薬を飲めた日をカレンダーに○で記録できる」。気分そのものは第1表の意向欄と支援経過に書き、第2表には残しません。
記載要領はもう2つ、うつの方の計画で効く一文を置いています。「緊急対応が必要になった場合には…目標として確定しなければ『短期目標』を設定せず、緊急対応が落ち着いた段階で、再度…見直しを行い記載する」。急に悪くなって入院した直後に、無理に目標を作り直さなくてよい根拠です。サービス内容については「家族等による援助や必要に応じて保険給付対象外サービスも明記」。医療保険の精神科訪問看護、自立支援医療、保健所の相談は、この「保険給付対象外サービス」として第2表に書けます。
「行きたくない」を「拒否」と書かない:無理に勧めない、短時間から
介護予防マニュアル第4版(令和4年3月)第7章「うつ予防・支援マニュアル」に、受診勧奨についての注意書きがあります。「保健師等が、医療機関受診について熱心になりすぎたり、焦りがあったりすると、対象者との信頼関係が気まずいものとなり、関係が途切れてしまうこともある」。運動プログラムでは「うまく運動できないことを責めず、また過度に励ましすぎないよう対応する」。主語は「保健師等」で要支援向けの文書ですが、ケアマネジャー・訪問介護員・通所の職員に読み替えて使える一文です。
制度の側にも「短時間から」の根拠があります。精神科訪問看護基本療養費に「30分未満」の区分があり、指示書の「短時間訪問の必要性」欄に主治医が「あり」と書けば算定できること(逆に、その記載がなければ30分未満では算定できません)。通所なら、地域密着型通所介護(介護保険法第8条第17項・施行規則第10条の2=利用定員19人未満)が「少人数の通い」を制度の言葉で書く形です。認知症対応型通所介護は認知症の方が対象なので、うつ病だけの方には使えません。
閉じこもりの定義は、同マニュアル第5章に「外出頻度が少なく、生活の活動空間がほぼ家の中のみへと狭小化する状態」とあります。同時に「閉じこもりの概念、定義はさまざまであり、現時点でも統一された定義はない」とも明記されているので、この記事でも「厚生労働省のマニュアルでは」と限定して使います。「外出の回数を増やすこと自体が目的ではない」という趣旨と、食欲低下・体重の文例は、衰弱の記事に譲ります。
【高齢による衰弱(フレイル・廃用症候群)】ケアプラン第2表の文例集
家事は「代わりにやる」より「一緒にやる」で書けます。老計第10号(平成30年3月30日改正)の「自立生活支援・重度化防止のための見守り的援助」は、「利用者と一緒に手助けや声かけ及び見守りしながら行う掃除、整理整頓(安全確認の声かけ、疲労の確認を含む)」「本人が自ら適切な服薬ができるよう、服薬時において、直接介助は行わずに、側で見守り、服薬を促す」を身体介護としています。できるのにやれない方の家事は、こちらの型です。
お金と制度:手帳は65歳以上でも取れる。自立支援医療は「うつ病」が名指し。障害年金は初診日で決まる
「65歳過ぎているから手帳は無理でしょ?」。精神保健福祉法第45条は「精神障害者(知的障害者を除く…)は…精神障害者保健福祉手帳の交付を申請することができる」と定め、年齢の上限はありません。2年ごとの認定、等級は1〜3級(施行令第6条)。税の控除は全国共通、公共料金や交通の割引は自治体・事業者で差があるので、「取ると何が変わるか」は窓口で確認する形で書きます。
自立支援医療(精神通院)は、通院・処方薬・精神科デイケアなど、入院しないで受ける精神科の医療の自己負担を軽くする制度です(障害者総合支援法第5条第25項・施行令第1条の2第3号の「精神通院医療」)。厚生労働省の「利用者負担の基本的な枠組み」では、自己負担は原則1割で、所得区分ごとに1か月の上限額があり、「重度かつ継続」の範囲に「躁うつ病・うつ病」が名指しされています。上限額は経過的な特例を含むので、金額はこの記事に書きません。市町村の窓口で確認してください。医療保険の精神科訪問看護がこの制度の対象になるかは、そのステーションが指定自立支援医療機関かどうかによるので、初回に確認します。
障害年金は「初診日」で決まります。日本年金機構の受給要件では、障害基礎年金は国民年金加入中・20歳前・60歳以上65歳未満(未加入で国内居住)に初診日があることが要件。初診日(その病気で初めて医師にかかった日。精神科でなく内科で「眠れない」「食欲がない」と受診した日が初診日になることもあります)が65歳以降なら、在職で厚生年金に加入中でない限り、障害基礎年金の話は原則出てきません。 65歳前に内科で相談していた方は、そこが初診日になり得るので年金事務所へ。40〜64歳の方も年金事務所へ。等級の判定はケアマネジャーの仕事ではないので、ここまでにします。
65歳以上で介護保険と障害福祉を併用するときの根拠は、平成19年3月28日の通知(障企発第0328002号・障障発第0328002号)です。区分支給限度基準額の制約でケアプラン上確保できない場合、事業所が身近にない場合、非該当の場合に、介護保険優先の例外として障害福祉サービスを使えます。自立訓練(生活訓練)など障害福祉に固有のサービスも支給の対象です。
相談先は3つ覚えておくと足ります。保健所の精神保健福祉相談員(精神保健福祉法第47条・第48条=相談に応じ、必要なら医療施設を紹介する)。精神保健福祉センター(複雑または困難な相談・家族向けの相談)。市町村の障害福祉担当。高齢者のうつでは、地域包括支援センターと保健所の両方が窓口になります。役割分担は自治体ごとに違うので、初回に両方へ電話しておくと往復が減ります。
家族:「怠けている」の誤解を、医療者の言葉で解く
ガイドラインは「家族が疲弊していることも多く、家族へも共感的態度を示しつつ、老年期心性への理解を促すことが必要」と書いています。e-ヘルスネットの一文はそのまま家族に渡せます。「『うつ』でやる気がでないのは、こころが弱かったり甘えているためではありません」。ケアマネジャーが説得するのではなく、主治医か訪問看護師から家族に説明する機会を第2表に置く、が型です。
家族の休息は、短期入所生活介護の基本方針(指定居宅サービス等基準第120条)に根拠があります。「利用者の心身の機能の維持並びに利用者の家族の身体的及び精神的負担の軽減を図るものでなければならない」。同時に、運営基準第13条第21号の「要介護認定の有効期間のおおむね半数を超えないように」も忘れずに。
【ショートステイ(短期入所生活介護)】ケアプラン第2表の文例集
家族会は、認知症の家族会とは系統が違います。うつ病の方の家族なら、精神障害者家族会の全国組織「みんなねっと」(全国精神保健福祉会連合会)の都道府県連合会から地域の会を探します。地域包括支援センターには、厚生労働省の「家族介護者支援マニュアル」が「介護者本人の人生の支援」を目的に置くよう求めていて、家族からの相談の窓口になります。ケアラー支援条例は埼玉県が令和2年に全国で最初に作りましたが、自治体ごとに有無が違うので、「お住まいの自治体に窓口があるか」の形で書いてください。
ニーズ(生活全般の解決すべき課題)の文例(54文例)

この章の文例は「生活全般の解決すべき課題(ニーズ)」欄に書きます。主語はご本人です。家族の困りごとは行頭に(家族)を付けて区別しています。「意欲がない」と書いて終わりにせず、どの生活の場面で何が止まっているかまで書けていますか。
起きられない・日中の過ごし方
- 朝、体が重くて昼まで起きられないので、決まった時間に起きて朝食をとる生活に戻したい
- 一日中横になっていて日にちが分からなくなるので、日中に起きている時間を少しずつ作りたい
- やらなければと思うのに体が動かないので、一人でやろうとせず誰かと一緒に始められる形がほしい
- テレビも新聞も頭に入らないので、短い時間でもできることを一つ持ちたい
- 昼と夜が逆になってきたので、朝の光を浴びて生活の順番を整えたい
閉じこもり・外出
- 人に会うのがおっくうで半年以上家から出ていないので、玄関先から少しずつ外に出たい
- 外で知り合いに「元気?」と聞かれるのがつらいので、人の少ない時間に出かける方法を知りたい
- 買い物に行けず食べ物が切れがちなので、外に出る用事を週に1回作りたい
- 庭の草が伸びているのが気になるのに手がつかないので、誰かと一緒に短い時間だけ庭に出たい
- 通院以外に外に出る理由がないので、月に1回でも行き先を持ちたい
食事と食欲・体重
- 食べたい気持ちが起きず1日1食になっているので、少量でも毎食口にする形を作りたい
- 料理を作る気力がなく菓子パンばかりなので、手をかけずに食べられるものを整えたい
- 体重が○か月で○kg減ったので、これ以上減らないように食べ方を主治医と相談したい
- 薬を変えてから食欲が落ちた気がするので、薬のせいかどうかを主治医に確かめたい
- 一人で食べると箸が進まないので、誰かと一緒に食べる機会がほしい
- 水分をとるのも忘れるので、脱水にならないように声をかけてほしい
睡眠
- 夜中に何度も目が覚めて朝方まで眠れないので、眠りの様子を主治医に伝えて相談したい
- 眠れないのが怖くて昼間に寝てしまうので、昼寝の時間を決めて夜に眠れるようにしたい
- 眠れないまま悪いことばかり考えてしまうので、夜に話せる相手や連絡先を持ちたい
- 睡眠薬を飲んだ翌朝にふらつくので、薬と転倒のことを主治医に相談したい
服薬と副作用の観察
- 薬を飲んでも良くならない気がして自分でやめたくなるので、薬のことを相談できる相手がほしい
- 薬の種類が増えて飲み忘れと飲み残しがあるので、確実に飲める方法にしたい
- 薬を飲み始めてからふらつきと便秘があるので、薬の影響かどうか主治医と薬剤師に確認したい
- 朝の薬を飲んだ後に眠くて動けないので、飲む時間と生活の順番を主治医に相談したい
- 精神科と内科の両方から薬が出ているので、飲み合わせを一つの窓口で見てほしい
通所・訪問を断る(無理に勧めない・短時間から)
- デイサービスは大勢の中にいるのがつらいので、少人数か短い時間で通える場所を探したい
- ヘルパーが来ると気を使って疲れるので、来る回数と時間を自分で決めたい
- 行くと決めた日の朝に体が動かないことがあるので、当日に断っても次につながる形にしたい
- 人前で食事や入浴をするのが嫌なので、通う目的を送迎と体操だけに絞りたい
- 「来なくていい」と言ってしまうが一人になるのも不安なので、訪問を短時間から続けてほしい
入浴・身だしなみ
- 入浴がおっくうで2週間入っていないので、週○回は体を洗える形を作りたい
- 着替えをせず同じ服のままなので、朝に着替える習慣を戻したい
- 髪や髭を整える気力がないので、出かける前に身なりを整える手伝いがほしい
- 歯を磨かない日が続き口の中が気になるので、朝晩の口腔ケアを続けたい
気持ち・話せる相手・受診
- つらい気持ちを家族に話すと心配させるので、家族以外に話を聞いてくれる人がほしい
- 精神科に通うことに抵抗があるので、かかりつけの内科で相談するところから始めたい
- 自分が迷惑をかけていると思い込んでしまうので、そう感じたときに連絡できる先を決めておきたい
- 物忘れがひどくなった気がして怖いので、認知症なのかうつのせいなのかを主治医に診てもらいたい
- 良くなったり悪くなったりを繰り返すので、悪くなりかけたときのサインを支援者と共有したい
家族の疲れ・「怠け」の誤解
- (家族)「怠けているだけ」と言ってしまい自分を責めているので、病気の説明を医療者から聞きたい
- (家族)毎日声をかけても動かない本人に疲れているので、自分が休める時間を確保したい
- (家族)どこまで手伝ってどこから見守るかが分からないので、関わり方の目安を教わりたい
- (家族)本人が強くつらい気持ちを口にしたときにどうすればよいか分からないので、連絡先と対応を決めておきたい
- (家族)同じ立場の家族と話す場がほしい
一人暮らし
- 一日誰とも話さない日が続くので、決まった曜日に人が来る形にしたい
- 食事も薬も一人だと抜けてしまうので、確認してくれる人がほしい
- 調子が悪いときに自分から連絡できないので、こちらから連絡が来る仕組みにしたい
- 入院するときに家のことを頼める人がいないので、緊急時の段取りを決めておきたい
- ゴミ出しや郵便物がたまっているので、生活の最低限を一緒に整えたい
お金と制度
- 精神科の通院と薬の費用が負担なので、自立支援医療(精神通院)を使えるか知りたい
- 精神障害者保健福祉手帳を取れるのか、取ると何が変わるのかを知りたい
- ○歳で初めてうつ病と診断されたので、障害年金の対象になるのか確認したい
- 仕事を辞めて収入が減ったので、使える制度を一つずつ整理したい
- 介護保険で足りない支援を障害福祉で補えるのか、市町村に相談したい
長期目標の文例(16文例)

この章の文例は「長期目標」欄に書きます。気分や病気の回復ではなく、暮らしの形で書きます。 期間は認定の有効期間と治療の経過を見て設定し、調子の波があることを前提に、終了時期が決められないときは開始時期のみでもかまいません。
- 週○日は午前中に起きて着替え、日中に起きて過ごす時間を保って暮らせる
- 玄関先・庭・近所の店まで、自分で決めた範囲の外出を週○回続けられる
- 毎食少量でも口にし、体重を○kg前後で保ちながら自宅で暮らせる
- 夜に眠り昼に起きる生活の順番を保ち、眠れない夜のことを主治医に伝えられる
- 処方どおりに薬を飲み続け、体の変化を主治医と薬剤師に伝えながら治療を続けられる
- 自分に合った人数と時間の通いの場に、無理のない回数で通い続けられる
- 週○回の入浴と毎朝の着替えで、身なりを整えて人に会える状態を保てる
- つらいときに話せる相手と連絡先を持ち、一人で抱え込まずに暮らせる
- 精神科の主治医・かかりつけ医・訪問看護・ケアマネジャーが同じ情報を持ち、悪くなりかけたときに早く相談できる
- 物忘れの心配について主治医に診てもらい、結果に合わせた支援を受けながら暮らせる
- 使える制度(自立支援医療・手帳・障害福祉)を整え、費用の心配を減らして通院を続けられる
- 決まった曜日に人が来る形で安否と食事・服薬を確認され、一人暮らしを続けられる
- 悪くなりかけたときのサインと連絡の順番を支援者と共有し、入院が必要なときは早く相談できる
- (家族)病気の説明を医療者から受け、本人への関わり方の目安を持って支えられる
- (家族)週○回の通所と月○日の短期入所で、休める時間を確保しながら本人を支えられる
- 調子の波があっても、続けられることと休むことを自分で決めながら自宅で暮らせる
短期目標の文例(44文例)

この章の文例は「短期目標」欄に書きます。誰が見ても達成できたかどうかが分かる形にします。回数・曜日・場所まで入れて、「意欲が出る」「気持ちが安定する」という言葉は入れません。調子の波を前提に「週○日ある」「月○回ある」の形にすると、悪い日があっても達成を確かめられます。今の担当の方の短期目標、訪問看護師と訪問介護員が同じ物差しで確かめられますか。
起きられない・日中の過ごし方
- 週○日は○時までに起きて、訪問介護員と一緒に朝食をとれる
- 日中にテレビの前でなく食卓で過ごす時間を1日○分作れる
- 訪問看護師と一緒に、その日にやることを一つだけカレンダーに書ける
- 朝にカーテンを開けて光を入れる日が週○日ある
閉じこもり・外出
- 週○回、玄関先まで出て郵便物を取りに行ける
- 家族か訪問看護師と一緒に、家の前を○分歩ける日が週○日ある
- 月○回、送迎で通いの場に行き、体操だけ参加して帰れる
- 人の少ない時間に、家族と近所の店まで買い物に行ける日が月○回ある
食事と食欲・体重
- 主食を毎食半分以上食べる日が週○日ある
- 配食と訪問介護の調理で、1日2食は温かい食事を口にできる
- 体重を週1回同じ条件で量り、○kgを下回ったら主治医に伝えられる
- 食欲が落ちたときに「薬のせいかもしれない」と主治医・薬剤師に伝えられる
- 訪問介護員や家族と一緒に食べる食事が週○回ある
睡眠
- 眠れた時間と目が覚めた回数を睡眠の記録に書き、受診時に主治医に見せられる
- 昼寝は○時から○分までと決めて、夜に横になる時間を保てる
- 眠れない夜に連絡してよい相手と時間を決めておき、必要なときに連絡できる
服薬と副作用の観察
- 処方どおりに薬を飲めた日をカレンダーに○で記録できる
- 薬を飲んだ後のふらつき・便秘・眠気を訪問看護師に伝え、主治医への報告に含めてもらえる
- 薬をやめたい気持ちが出たとき、やめる前に主治医か訪問看護師に話せる
- 精神科と内科の薬をお薬手帳1冊にまとめ、薬剤師に見てもらえる
通所・訪問を断る
- 定員の少ない通所で、○時間の利用から始めて週○回通える
- 当日に「行けない」と伝えても、次回の予定を一緒に決められる
- 訪問看護を○分の短時間訪問(主治医の指示書に明記)から始め、週○回受けられる
- 訪問介護員が来る日と時間を自分で選び、断りたいときは前日までに連絡できる
入浴・身だしなみ
- 訪問介護員の声かけと見守りで、週○回入浴できる
- 朝に着替えをする日が週○日ある
- 受診や通所の日は、髪を整えて出かけられる
気持ち・話せる相手・受診
- つらいときに連絡してよい人の名前と番号を、電話のそばに貼っておける
- 精神科の受診に○回に1回はケアマネジャーか家族が同行し、生活の様子を伝えられる
- 物忘れの心配を主治医に伝え、必要なら認知症疾患医療センターの受診の段取りを整えられる
- 悪くなりかけたときのサイン(食事が減る・電話に出ない・入浴しない)を本人と支援者で共有できる
家族
- (家族)主治医か訪問看護師から病気と関わり方の説明を受ける機会を○か月以内に持てる
- (家族)本人が動けない日に「休んでいい」と声をかける対応を続けられる
- (家族)月○日の短期入所と週○回の通所で、自分の休む時間を確保できる
- (家族)本人の気持ちがひどくつらそうなとき、決めておいた連絡先に連絡できる
一人暮らし
- 週○日は訪問介護員か訪問看護師と顔を合わせ、食事と服薬の様子を確認してもらえる
- 電話に出られない日が続いたときに誰が確認に来るか(訪問介護員・家族・地域包括支援センターの順番)を決め、本人と共有できる
- 入院が必要になったときの連絡先と家の鍵の預け先を決め、緊急連絡票に書ける
- ゴミ出しを訪問介護員と一緒に週○回できる
お金と制度
- 自立支援医療(精神通院)の申請を、○か月以内に市町村の窓口で済ませられる
- 精神障害者保健福祉手帳の申請の要否を、主治医と相談して決められる
- 障害年金の対象になるかを、年金事務所で確認できる
- 使える制度と窓口を一覧にして、本人と家族が手元に持てる
- 介護保険で足りない支援について、市町村の障害福祉担当に相談できる
サービス内容の文例(56文例)

この章の文例は「サービス内容」欄に書きます。医療サービスは、主治医の指示にもとづくことが読み取れる形に。精神科訪問看護は医療保険なので「医療保険」と明記し、第7表には載せません。かかりつけ医の指示書による訪問看護は介護保険のまま第7表に載ります。介護保険で出ないもの(自立支援医療・手帳・障害福祉・保健所)は、窓口の名前まで書きます。担当の方の訪問看護指示書を出しているのは精神科の医師ですか、内科の医師ですか。
主治医(精神科)・かかりつけ医・医療機関との連携
- 精神科の主治医(外来):診断と治療、薬の調整、精神科訪問看護指示書の交付、主治医意見書、自立支援医療・手帳の診断書
- かかりつけ医(内科):持病の治療、体の症状の診察、精神科との処方の共有、必要なときの紹介
- ケアマネジャー:食事量・体重・睡眠・服薬の状況と、訪問介護員・訪問看護師が気づいた変化を、本人の同意を得て主治医・薬剤師に情報提供する
- ケアマネジャー:受診に○回に1回同行し、生活の様子を主治医に伝え、次回までの注意点を持ち帰る
- ケアマネジャー:つらさが強いときは、担当者会議で決めた順番で主治医・訪問看護に連絡する
- ケアマネジャー:月1回の訪問で起きている時間・外出・食事・睡眠・服薬の変化を確認し、悪くなりかけたときは主治医に相談して計画の見直しを検討する
- ケアマネジャー:通所・訪問を断った回数と理由を事業所から受け取り、第2表の頻度を実際の利用に合わせて見直す
- 認知症疾患医療センター:物忘れが前に出てきたときの鑑別診断(受診は主治医の紹介で)と、専門医療相談(ケアマネジャー・家族から直接相談できる)
訪問看護(精神科訪問看護=医療保険・精神科の主治医の指示書に基づく・第7表には載せない)
- 訪問看護(医療保険):生活リズムの確認(起床・食事・睡眠の時間)と、整えるための本人との話し合い
- 訪問看護(医療保険):薬の効き方と副作用(ふらつき・便秘・眠気・食欲低下)の観察、服薬の継続への援助、主治医への報告
- 訪問看護(医療保険):体の合併症(脱水・体重減少・持病の悪化)の観察と、かかりつけ医への報告
- 訪問看護(医療保険):本人の話を聞く時間の確保と、つらさが強いときの主治医への連絡
- 訪問看護(医療保険):家族への病気の説明と関わり方の助言、家族の疲れの確認
- 訪問看護(医療保険):自立支援医療・手帳・障害福祉など社会資源の利用に向けた情報提供と、ケアマネジャーとの連携
- 訪問看護(医療保険・主治医が指示書に短時間訪問の必要性を明記・○分の短時間訪問から開始):本人の負担に合わせて訪問時間を延ばし、週○回の訪問を続ける
訪問看護(介護保険・かかりつけ医の指示書に基づく)
- 訪問看護:気分の落ち込み・食事量・睡眠・服薬の観察と、かかりつけ医への報告
- 訪問看護:持病の管理(血圧・血糖など)と、抑うつが薬の副作用の可能性がある場合のかかりつけ医への相談
- 訪問看護:精神科の受診がまだの場合、かかりつけ医からの紹介について本人と相談する
訪問介護
- 訪問介護(身体介護):朝の声かけと起床・着替えの見守り、朝食の準備を一緒に行う
- 訪問介護(身体介護):本人と一緒に調理・片付けを行い、疲れの確認をしながら進める(自立生活支援・重度化防止のための見守り的援助)
- 訪問介護(身体介護):服薬時に側で見守り、服薬を促す(直接介助は行わない)
- 訪問介護(身体介護):入浴の声かけと見守り、洗髪・背中の介助
- 訪問介護(身体介護):郵便受けやゴミ集積所まで一緒に行き、転倒しないよう側について歩く(見守り的援助。歩くこと自体を目的にした散歩の同行は保険者によって算定できないので、外出の練習は通所や訪問看護の役割に置く)
- 訪問介護(生活援助・一人暮らしまたは同居家族が家事を行えない場合):買い物代行と、食べやすいものの補充
- 訪問介護(生活援助・一人暮らしまたは同居家族が家事を行えない場合):ゴミ出し・洗濯(本人ができる日は一緒に干す)
- 訪問介護:食事量・入浴・着替え・話した言葉の変化をサービス提供記録に残し、変化があればケアマネジャーに連絡する
通所(地域密着型通所介護・通所介護・通所リハビリテーション)
- 地域密着型通所介護(定員18人以下):週○回・○時間の短時間利用から。送迎と体操、昼食を中心に
- 通所介護:入浴を目的に週○回。人前での入浴がつらい場合は個浴の時間帯で調整
- 通所介護:当日に「行けない」と連絡があった場合も無理に勧めず、次回の予定をケアマネジャーと共有する
- 通所リハビリテーション(主治医の指示に基づく):軽い運動と生活動作の練習。うまくできなくても責めず、励ましすぎない
- 通所:食事量・参加の様子・他の利用者との関わりを記録し、ケアマネジャーに報告する
- 通所:本人が「人が多い」と感じる場合、席の位置や休める場所を用意する
短期入所生活介護
- 短期入所生活介護:月○日、家族の休息のため。食事・服薬・睡眠の様子を記録し、帰宅時に家族とケアマネジャーに報告する
- 短期入所生活介護:入所中の薬は精神科・内科の処方どおりに管理し、飲まなかったときは主治医に連絡する
- 短期入所生活介護:家族が急に対応できなくなったときの緊急利用について、事前に事業所と相談しておく
居宅療養管理指導(薬剤師・主治医の指示に基づく)
- 居宅療養管理指導(薬剤師):精神科と内科の薬を一つにまとめた服薬管理(一包化・服薬カレンダー)と飲み残しの確認
- 居宅療養管理指導(薬剤師):ふらつき・便秘・食欲低下と薬の関係を確認し、主治医に情報提供する
- 居宅療養管理指導(薬剤師):薬をやめたい気持ちについて話を聞き、自己判断で中断しないよう説明する
障害福祉・自立支援医療・手帳・保健所(介護保険外)
- 自立支援医療(精神通院・市町村窓口):精神科の通院と薬の自己負担を軽くする制度の申請を、主治医の診断書とあわせて進める
- 精神障害者保健福祉手帳(市町村窓口・都道府県交付):申請の要否を主治医と相談し、必要なら診断書を依頼する
- 障害福祉サービス(市町村の障害福祉担当):介護保険で確保できない支援について相談し、必要なら支給申請を行う
- 障害年金(年金事務所):初診日と加入していた年金制度を確認し、対象になるかを相談する
- 保健所(精神保健福祉相談員):受診を勧めても本人が拒む場合の相談、家族からの相談
- 精神保健福祉センター(都道府県):複雑な相談、家族向けの相談・教室の案内
- 地域包括支援センター:一人暮らしの見守り体制と、家族介護者への相談支援
- 精神障害者の家族会(みんなねっと・都道府県連合会):家族が同じ立場の人と話せる場の情報提供
本人・家族の取り組み
- 本人:朝にカーテンを開け、起きた時間を記録する
- 本人:処方どおりに薬を飲み、飲めた日にカレンダーに○をつける
- 本人:体重を週1回、同じ時間に量って記録する
- 本人:眠れた時間と目が覚めた回数を記録し、受診時に主治医に見せる
- 本人:つらいときに連絡してよい人の名前と電話番号を、電話のそばに貼っておく
- 本人:やめたいこと・減らしたいことがあれば、先に訪問看護師かケアマネジャーに話す
- 家族:主治医・訪問看護師の説明をもとに、動けない日は「休んでいい」と声をかける
- 家族:本人の食事量・睡眠・話した言葉の変化をメモし、受診時に主治医に伝える
- 家族:本人がつらさを強く口にしたときは、決めておいた連絡先(日中=主治医・訪問看護・ケアマネジャー/夜間・休日=訪問看護の緊急連絡先または都道府県が設けている精神科救急の電話窓口(名称は自治体で異なる。事前に主治医・保健所に確認しておく))に連絡する
- 家族:月○日の短期入所と週○回の通所の日は、自分の用事と休息にあてる
書き方のコツ(深めたい方向け)
すぐ使いたい方は、ここから先は読まなくて大丈夫です。うつ病の方の第2表ならではの書き分けのコツをまとめました。
コツ1:目標は「意欲」でなく「行動と回数」。気分は第1表と経過記録に
「意欲が出る」「前向きになる」「気持ちが安定する」を目標欄から消し、代わりに「何を・どこで・週何回」を置きます。記載要領の「抽象的な言葉ではなく」「実際に解決が可能と見込まれるもの」の趣旨です。ご本人の気持ちは消すのではなく、置き場所を変えます。「もう何もしたくない、でも迷惑はかけたくない」という言葉は第1表の意向欄と支援経過に残し、第2表には「週○回、玄関先まで出て郵便物を取りに行ける」を書く。同じ人の同じ状態を、書類ごとに違う言葉で書き分ける、と考えてみませんか。
コツ2:精神科訪問看護は「医療保険」と明記し、指示書の7項目の言葉で書く
精神科の医師の指示書による訪問看護は医療保険なので第7表に載りませんが、第2表には載せます。記載要領は「保険給付対象外サービスも明記」と求めていて、ケアチームの中心にいる訪問看護が計画書から消えている状態は、担当者会議の記録とも合いません。サービス内容の書き方は、指示書の「留意事項及び指示事項」の言葉で。生活リズム、家事能力・社会技能、対人関係(家族含む)、社会資源の活用、薬物療法の継続、身体合併症の防止。医師の指示と第2表が同じ言葉で並ぶと、モニタリングの物差しも揃います。
内科のかかりつけ医の指示書なら介護保険の訪問看護で、第7表に載ります。同じ方でも指示書を出す医師で保険が変わるので、初回に「誰の指示書か」を確認してから書き始めてください。主治医が2人になる方の連携文例は、別の記事にまとめています。
コツ3:「拒否」と書かない。「当日断っても次につながる」を目標に入れる
「デイ拒否」「訪問拒否」とニーズ欄に書いても、次の一手は決まりません。介護予防マニュアルの注意書き(熱心になりすぎると関係が途切れる・責めず励ましすぎない)を、ケアマネジャーと事業所に読み替えて使います。書き方は3段階です。ニーズには「大勢の中にいるのがつらい」「気を使って疲れる」という理由を書く。短期目標には「当日に『行けない』と伝えても、次回の予定を一緒に決められる」を置く。サービス内容には「無理に勧めず、次回の予定をケアマネジャーと共有する」を事業所の役割として書く。通所の側の文例は、デイサービスの記事に場面ごとにあります。
コツ4:副作用の観察は「誰が・何を・誰に」で書く
「副作用に注意」では動けません。訪問介護員が「ふらつき・便秘・眠気・食事量」を提供記録に書く。ケアマネジャーが本人の同意を得て主治医・薬剤師に届ける(運営基準第13条第13号の2)。薬剤師が居宅療養管理指導で薬との関係を確認し、主治医に情報提供する。この3つを別々の行に分けて書くと、誰の仕事かがはっきりします。指針の「まず薬剤が原因ではないかと疑ってみる」を、記録の項目に落とした形です。
コツ5:つらい気持ちの言葉は、第2表では「連絡先」と「見守りの形」に変える
「死にたい」という言葉を第2表に生のまま書くかどうかは、公的な指針を見つけていません。この記事の型は、第2表には「つらいときに連絡してよい人の名前と番号を電話のそばに貼っておける」「本人の話を聞く時間の確保と、つらさが強いときの主治医への連絡」という見守りと連携の形で書き、発言そのものと対応は支援経過・サービス担当者会議の記録に残す、という形です。ご本人に交付し全事業所に配る書類に、その言葉をどう置くか。担当者会議で一度、チームの決めごとにしておきませんか。あわせて、連絡先は「日中」と「夜間・休日」を分けて決めておきます。つらさが強く出るのは夜間・休日が多く、外来の主治医とケアマネジャーは出られません。夜間・休日の候補は、訪問看護ステーションの緊急連絡(24時間対応体制の届出があるか初回に確認)と、都道府県が設けている精神科救急の電話窓口です(名称や受付時間は自治体で異なるので、担当地域の窓口を主治医か保健所に確認して控えておきます)。
一人暮らしの方の安否確認と見守り体制の文例は、独居の記事に譲ります。
現場のひとこと
うつ病の方の第2表は、書いた目標が達成できない月が出てきます。その月に「目標が高すぎた」と計画を縮めるか、「今月は波の底だった」と同じ目標で様子を見るか。判断の材料になるのは、訪問介護と訪問看護の記録に残った回数と、ご本人の言葉です。第2表を作るときに「悪い月の記録の残し方」まで事業所と決めておくと、モニタリングで迷いません。達成できなかった月の第2表、そのまま次の月も使ってみませんか。
運営指導で見られやすいポイント
1. 第2号被保険者(40〜64歳)の場合、要介護状態の原因が特定疾病によることが認定結果で確認でき、うつ病だけを原因として認定を受けた形になっていないか
2. 精神科訪問看護指示書による訪問看護が医療保険として扱われ、第7表の給付管理に含まれていないか。逆に、かかりつけ医の指示書による訪問看護が介護保険として第7表に載っているか
3. 医療保険の精神科訪問看護が第2表に「保険給付対象外サービス」として明記されているか(記載要領④)
4. 医療サービスの利用にあたり利用者の同意を得て主治医の意見を求め、作成した計画を主治医等へ交付した記録があるか(平成11年厚生省令第38号 第13条第19号・第19号の2・第20号)
5. 服薬状況や心身の変化を、利用者の同意を得て主治医・薬剤師に提供した記録があるか(同 第13条第13号の2)
6. 目標が「意欲が出る」「気持ちが安定する」など解決が見込めない抽象的なものではなく、本人が取り組める行動と回数になっているか
7. 通所・訪問を本人が断っている場合、その理由と本人の意向がアセスメントと支援経過に残り、第2表の頻度が実際の利用と合っているか
8. 短期入所を家族の負担軽減で位置づけている場合、利用日数が要介護認定の有効期間のおおむね半数を超えていないか(同 第13条第21号)
9. 自立支援医療・手帳・障害福祉サービスを併用している場合、窓口と申請の経過が支援経過に残り、障害福祉サービスは市町村の支給決定と整合しているか
10. 本人のつらい気持ちの発言があった場合、その内容と対応が支援経過・サービス担当者会議の記録に残り、医療との連絡がとれているか
よくある迷いどころ
58歳の方がうつ病で動けなくなりました。介護保険を申請できますか
うつ病だけが原因なら、申請しても対象になりません。施行令第2条の16疾病にうつ病はなく、精神疾患で載っているのは「初老期における認知症」だけです。行き先は市町村の障害福祉窓口(障害者総合支援法)と自立支援医療(精神通院)。40〜64歳で物忘れが前に出ているなら、認知症なのかうつ病なのかを主治医に確認してもらい、認知症の診断がつけば第6号での申請を検討します。脳血管疾患など別の特定疾病があれば、そちらを原因として申請できます。
認定調査で「意欲がない」と伝えたのに、軽く出ました。どうすればよかったですか
第4群に意欲低下の項目はありません。伝えるのは「意欲がない」ではなく手間と頻度です。「食事の声かけに毎食○分」「入浴を促しても週○回断る」「服薬の確認に毎日○分」。認定調査員テキストp.18の「類似または関連する項目の特記事項に、具体的な介護の手間の内容と頻度を記載」の形で、訪問介護の提供記録から数字を拾って渡します。区分変更の申請をするなら、次の調査の前にこの整理をしてください。
内科でうつの薬をもらっています。精神科訪問看護を使えますか
精神科訪問看護指示書を書けるのは、精神科を標榜する医療機関の精神科の医師に限られるので、内科のかかりつけ医の指示書では医療保険の精神科訪問看護になりません。介護保険の訪問看護として組み、第7表に載せます。精神科の受診を本人が望むなら、かかりつけ医からの紹介を相談する形をサービス内容に置きます。介護予防マニュアルは「精神科・心療内科受診に抵抗感を持っている住民には、比較的受診しやすい身近な一般診療科の受診を勧める」としているので、内科で治療を続ける形も正しい形です。
うつ病と認知症の両方の診断があります。訪問看護はどちらの保険ですか
文言は2つあります。ステーションの精神科訪問看護基本療養費は、給付調整通知8(1)で「認知症でない患者に指定訪問看護を行う場合に限る」、別紙では「認知症患者を除く」。病院・診療所からの精神科訪問看護・指導料は、同7で「認知症が主傷病である患者…については算定できない」。主傷病で線を引く運用をしている保険者もありますが、通知の文言は上のとおりです。認知症の診断が併記されている方は、ケアマネジャーが決めず、主治医・ステーション・保険者に「どちらの保険で組めるか」を確認してから第2表と第7表を書きます。
デイを断り続けています。第2表に「拒否」と書いてよいですか
「拒否」ではなく、理由と次の一手を書きます。ニーズに「大勢の中にいるのがつらい」、短期目標に「当日に『行けない』と伝えても、次回の予定を一緒に決められる」、サービス内容に「無理に勧めず、次回の予定をケアマネジャーと共有する」。定員19人未満の地域密着型通所介護や、送迎と体操だけの短時間利用を選択肢に入れます。頻度欄は「予定」ではなく実際に見込める回数で書き、断った経過は支援経過に残してください。
「死にたい」と言われました。第2表に書きますか
この記事の型では、第2表には書きません。生のまま書くかどうかの公的な指針は見つけていないので、断定ではなく型として読んでください。第2表には「つらいときに話せる相手と連絡先がある」「訪問看護が本人の話を聞く時間を確保し、つらさが強いときは主治医に連絡する」という見守りと連携の形で書きます。発言と、その場でとった対応(否定せず聞いた・主治医に連絡した)は支援経過と担当者会議の記録に残し、精神科の主治医と訪問看護に共有します。ガイドラインは「躊躇せずしかるべき対応をとる」としているので、記録の後回しはしません。相談窓口は厚生労働省「まもろうよ こころ」に一覧があります。
家族が「怠けているだけ」と言います。ケアマネジャーにできることはありますか
説得ではなく、説明の機会を作ります。e-ヘルスネットの「『うつ』でやる気がでないのは、こころが弱かったり甘えているためではありません」は、そのまま渡せる一文です。第2表には「主治医か訪問看護師から家族に病気と関わり方の説明を受ける機会を○か月以内に持てる」を短期目標に、「家族への病気の説明と関わり方の助言」を訪問看護のサービス内容に置きます。家族の休息は短期入所(基準第120条「家族の身体的及び精神的負担の軽減」)と通所で確保し、同じ立場の家族と話せる場として精神障害者の家族会を案内します。
まとめ
✓ うつ病は特定疾病に無い。40〜64歳で「うつ病だけ」が原因なら介護保険の対象外=障害者総合支援法と自立支援医療(精神通院)へ。「初老期における認知症」で申請できるとは書けない(診断基準は認知症の基準そのもの)
✓ 65歳以上は認定の対象。ただし認定調査に「意欲低下」の項目は無い=「食事の声かけに毎食○分」「入浴を促しても週○回断る」という手間と頻度を特記事項に渡す。主治医意見書は「(4) その他の精神・神経症状」欄
✓ 高齢者のうつは体の症状が前に出る(e-ヘルスネット)。再発率が高く、寛解後1年は薬を続ける推奨(日本うつ病学会)。「治る」「必ず」は書かない
✓ うつと認知症は見分けにくい(仮性認知症)。ケアマネジャーは見分けず、主治医と認知症疾患医療センターへ
✓ 精神科訪問看護は要介護者でも医療保険。入口は「精神科を担当する医師の精神科訪問看護指示書」。内科のかかりつけ医の指示書なら介護保険。認知症の診断がある方は要確認(ステーションの基本療養費は通知の文言上「認知症でない患者」に限る/医療機関からの精神科訪問看護・指導料は「認知症が主傷病」の方を除く)。週3日限度(退院後3か月は週5日)・30分未満の区分あり。第2表には「医療保険」と明記して載せ、第7表から外す
✓ 抗うつ薬の副作用(ふらつき・転倒・便秘・食欲低下)は観察して主治医・薬剤師へ(運営基準第13条第13号の2)。「やめたい」はやめる前に話す
✓ ケアマネジャーはゲートキーパー=気づく・声をかける・聞く・つなぐ・見守る。診断・治療・説得はしない。「死にたい」は第2表に生で書かず、連絡先と見守りの形で書いて、発言と対応は経過記録に(編集部の型・公的指針は見つけていない)
✓ 目標に気分を書かない。「意欲が出る」→「週2回、玄関先まで出て郵便物を取りに行ける」。記載要領の「抽象的な言葉ではなく」の趣旨
✓ 「拒否」と書かない。無理に勧めない・短時間から(介護予防マニュアルの注意書き・30分未満の区分・定員19人未満の地域密着型通所介護)
✓ 手帳は65歳以上でも取れる(年齢上限なし・2年ごと)。自立支援医療は「うつ病」が名指し。障害年金は初診日65歳以降だと原則対象外。家族の「怠け」の誤解は医療者の言葉で解き、休息はショートと通所で
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【高齢による衰弱(フレイル・廃用症候群)】ケアプラン第2表の文例集
【ショートステイ(短期入所生活介護)】ケアプラン第2表の文例集
参考・出典
1. 介護保険法(平成9年法律第123号)第7条第1項・第3項第2号・第8条第17項/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123
2. 介護保険法施行令(平成10年政令第412号)第2条/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/410CO0000000412
3. 介護保険法施行規則(平成11年厚生省令第36号)第10条の2/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100036
4. 厚生労働省 老健局老人保健課長通知「要介護認定における『認定調査票記入の手引き』、『主治医意見書記入の手引き』及び『特定疾病にかかる診断基準』について」(平成21年9月30日 老老発0930第2号/厚生労働省法令等データベースの表記:老老発第930002号)別添3 特定疾病にかかる診断基準(前文・6) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb6469&dataType=1&pageNo=5 ・別添2 主治医意見書記入の手引き(3.(3)(4)) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb6469&dataType=1&pageNo=4 (2026年9月時点で現行として掲載されている版)
5. 厚生労働省「認定調査員テキスト2009改訂版」(令和6年4月改訂)第4群 精神・行動障害・p.18 https://www.mhlw.go.jp/content/001249525.pdf ・掲載元:厚生労働省 要介護認定 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/nintei/index.html
6. 日本うつ病学会「高齢者のうつ病治療ガイドライン」(2020年7月1日作成・2022年7月1日改訂・2023年9月1日一部修正・2023年10月1日序文修正) https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/iinkai/katsudou/data/guideline_20231018.pdf ・掲載元:同学会 気分障害の治療ガイドライン https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/iinkai/katsudou/kibun.html
7. 厚生労働省 e-ヘルスネット(健康日本21アクション支援システム)「体の不調はうつ病でも現れます。かかりつけ医へ相談してみましょう」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-07-004.html
8. 厚生労働省 e-ヘルスネット(健康日本21アクション支援システム)「『うつ』に気づいたときの対処法は?」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-04-001.html
9. 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所「こころの情報サイト」うつ病 https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=9D2BdBaF8nGgVLbL
10. 厚生労働省「介護予防マニュアル(第4版)」(令和4年3月)第7章 うつ予防・支援マニュアル https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001238872.pdf ・第5章 閉じこもり予防・支援マニュアル https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001238870.pdf ・掲載元 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25277.html
11. 厚生労働省「主な認知症施策について」(認知症疾患医療センターの役割) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000076236_00006.html
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13. 厚生労働省「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について」(平成18年4月28日 老老発第0428001号・保医発第0428001号/最終改正 令和8年3月27日 老老発0327第2号・保医発0327第4号・令和8年6月1日適用)7・8(1)・別紙 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001697767.pdf
14. 訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法(平成20年厚生労働省告示第67号)区分01-2 精神科訪問看護基本療養費 注1〜注4/厚生労働省法令等データベース https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=84aa9734&dataType=0&pageNo=1
15. 近畿厚生局 参考様式「精神科訪問看護指示書」(別紙様式17) https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kinki/iryo_shido/documents/17.doc
16. 厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」(2018年5月)表1・別表1 https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/kourei-tekisei_web.pdf
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19. 厚生労働省「ゲートキーパー」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/gatekeeper_index.html ・「ゲートキーパーになろう!」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/gatekeeper.html
20. 厚生労働省「自殺総合対策大綱」(令和4年10月14日閣議決定) https://www.mhlw.go.jp/content/001000844.pdf ・掲載元 https://www.mhlw.go.jp/stf/taikou_r041014.html
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22. 厚生労働省 老健局振興課長通知「『訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について』の一部改正について」(平成30年3月30日 老振発0330第2号・老計第10号の改正) https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000201799.pdf ・改正後全文(介護保険最新情報Vol.637) https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2018/0402095345456/ksVol637.pdf
23. 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第120条/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100037
24. 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)第4条第1項・第5条第25項・第7条/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000123
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26. 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)第5条第1項・第6条・第45条・第47条・第48条/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0100000123
27. 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行令(昭和25年政令第155号)第6条/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000155
28. 厚生労働省 障害保健福祉部企画課長・障害福祉課長通知「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく自立支援給付と介護保険制度との適用関係等について」(平成19年3月28日 障企発第0328002号・障障発第0328002号/発出時題名「障害者自立支援法に基づく自立支援給付と介護保険制度との適用関係等について」) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb4788&dataType=1&pageNo=1
29. 厚生労働省「自立支援医療制度の概要」 https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jiritsu/gaiyo.html ・「自立支援医療における利用者負担の基本的な枠組み」 https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jiritsu/dl/01.pdf
30. 日本年金機構「障害年金の受給要件」 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/jukyu-yoken/20150401-01.html
31. 厚生労働省「市町村・地域包括支援センターによる家族介護者支援マニュアル~介護者本人の人生の支援~」(平成30年3月) https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000307003.pdf
32. 公益社団法人全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと) https://seishinhoken.jp/
33. 埼玉県「埼玉県ケアラー支援条例」 https://www.pref.saitama.lg.jp/a0609/chiikihoukatukea/jourei.html
34. 厚生労働省「令和5年(2023)患者調査」全国編 第158表 総患者数,性・年齢階級(5歳)×傷病中分類別(e-Stat CSV) https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000040234425&fileKind=1 ・概況 統計表3(年齢階級別推計患者数) https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/23/xls/toukei.xlsx ・概況ページ https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/23/index.html
35. 厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査」介護票 第24表 CSV(e-Stat) https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000040071925&fileKind=1
36. 厚生労働省自殺対策推進室・警察庁生活安全局生活安全企画課「令和7年中における自殺の状況」(令和8年3月) https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/jisatsu/R08/R7jisatsunojoukyou.pdf ・掲載元:厚生労働省 自殺の統計 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/jisatsu_year.html
37. 厚生労働省 老企第29号「介護サービス計画書の様式及び課題分析標準項目の提示について」別紙1 記載要領(令和3年3月31日改正後全文・介護保険最新情報Vol.958) https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2021/0401101809839/ksvol.958.pdf
38. 厚生労働省 保険局長通知「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和8年3月5日 保発0305第19号・令和8年6月1日適用)第3 精神科訪問看護基本療養費(2(1) 指示書を交付する医師・4 30分未満の訪問) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686845.pdf


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