「62歳、男性。自転車で転んで頭を強く打ち、3か月入院して家に戻った。手足はほぼ元どおりに動く。でも、火にかけた鍋を忘れて焦がす。同じことを何度も聞く。予定が変わると大声が出る。奥さんは『人が変わったみたい』と言う」。この方の担当を頼まれたら、最初に何を確かめますか。介護保険の対象かどうかです。40〜64歳で原因が頭のけが(外傷)だけなら、特定疾病の「脳血管疾患」には当たらないのが原則で、支援の中心は障害福祉になります。 ただし、けがで頭の中に出血があった場合や、転んだきっかけが脳卒中だった場合は、話が変わりえます。特定疾病に当たるかを確認するのは介護認定審査会なので、見込みは主治医と保険者に相談します。同じ62歳でも、原因が脳出血なら介護保険で申請できます。
そのうえで第2表。長期目標に「記憶力が戻り、怒らなくなる」と書きかけていませんか。記憶や感情そのものは、ケアチームが期日までに解決を約束できる課題ではありません。第2表に載せるのは、苦手な場面と、その場面で本人が使える方法、支援者全員がそろえる声かけです。
予定を忘れる。途中で抜ける。段取りが組めない。自分から始められない。気持ちが高ぶる。お金を使いすぎる。家族が「人が変わった」と言う。この7つを聞き取ると、文例を選ぶ場所が決まります。
この記事では、高次脳機能障害(記憶・注意・遂行機能・社会的行動の障害。脳卒中後・頭部外傷後など)の第2表で使える文例を、13の場面で177本まとめました。気になる行をコピーして、ご本人の状態に合わせて言葉を入れ替えて使ってください。脳卒中後の麻痺・嚥下・失語の文例と、メモやカレンダーを使う基本の文例は、脳卒中の記事に分けています。制度の部分は、2026年4月1日に施行された高次脳機能障害者支援法と施行令、介護保険法と施行令・施行規則、特定疾病の診断基準、認定調査員テキスト、精神障害者保健福祉手帳の判定基準、平成18年の事務連絡、平成19年の通知、診療報酬の告示と留意事項通知、給付調整通知、老計第10号、道路交通法と警察庁の運用基準、記載要領、国立障害者リハビリテーションセンター(以下、国リハ)の公開資料などの原文にあたって書いています。
この記事の文例の並び方
第2表の欄ごとに章を分けています。
1章目:ニーズ(「〜したい」の形・主語はご本人)
2章目:長期目標
3章目:短期目標
4章目:サービス内容
各章の中は場面別に分かれているので、担当の方に近い場面から拾ってください。後半に「書き方のコツ」と「運営指導で見られやすいポイント」があります。

- 文例の前に:高次脳機能障害の第2表で押さえること
- この記事の範囲:脳卒中記事の「場面で書く」の次。メモ・カレンダーの基本型は脳卒中の記事へ
- 2026年4月1日、「高次脳機能障害者支援法」が施行された:新しい給付ではなく、支援体制の法律
- 定義は2層:法律は失語・失行・失認まで含む。手帳や診断で使われてきた基準は4つが中心
- 40〜64歳は原因で入口が変わる:脳卒中なら介護保険、頭部外傷・低酸素脳症・脳炎なら障害福祉が中心
- 65歳以上で原因が交通事故なら:第三者行為の届出を保険者に確認
- 「高次脳は若い人の障害」ではない:在宅で診断を受けた方の半数超が65歳以上
- 認知症との線引き:「本人に自覚がない」は決め手にならない。決めるのは医師
- 「外見からは分かりにくい」:認定調査は第5群と、家での手間と頻度
- 手帳は2種類ありうる:精神障害者保健福祉手帳(器質性精神障害)と身体障害者手帳
- 手帳が無くても障害福祉は申請できる:平成18年の事務連絡が決めている5つの書類
- 介護保険と障害福祉を組む:固有のサービスは介護保険の方も対象。相談支援専門員と連携
- 相談先は「高次脳機能障害者支援センター(これまでの支援拠点機関)」
- 医療のリハビリ:180日の上限の「除外対象」と、通所リハを始めた翌月のルール
- 運転の再開は、ケアマネジャーが判断しない
- 目標に「記憶力が回復する」「怒らなくなる」を書かない
- ニーズ(生活全般の解決すべき課題)の文例(58文例)
- 長期目標の文例(16文例)
- 短期目標の文例(50文例)
- サービス内容の文例(53文例)
- 書き方のコツ(深めたい方向け)
- 運営指導で見られやすいポイント
- よくある迷いどころ
- まとめ
- あわせて読みたい
- 参考・出典
文例の前に:高次脳機能障害の第2表で押さえること
この記事の文例は、脳卒中や頭部外傷などの後に、記憶・注意・段取り・感情のコントロールの障害が残り、在宅で暮らす要介護の方の第2表を主軸にしています。40〜64歳で原因が脳卒中以外の方は、介護保険の対象にならないのが原則で、計画は相談支援専門員が作るサービス等利用計画になります。この記事の障害福祉の文例は、65歳以上の方と、40〜64歳で原因が脳血管疾患の方が、介護保険と障害福祉を併用する場面を想定しています。その前に、言葉と制度の入口を15個。
この記事の範囲:脳卒中記事の「場面で書く」の次。メモ・カレンダーの基本型は脳卒中の記事へ
脳卒中の記事には、「高次脳機能障害(注意・記憶・段取り)」のニーズと短期目標、失語・構音障害の文例、そして「高次脳機能障害は『診断名』ではなく『場面』で書く」というコツがあります。メモやカレンダーで予定を確かめる。置き場所を決める。手順書で調理する。「休みたい」と伝える。この基本の型は、この記事では繰り返しません。
この記事が扱うのは、その次の3つです。脳卒中以外が原因の方(頭部外傷・低酸素脳症・脳炎など)。感情のコントロール・意欲・お金・見落としまで広げた場面。そして障害福祉と組む方法です。
【脳梗塞・脳卒中(脳血管疾患後遺症)】ケアプラン第2表の文例集
2026年4月1日、「高次脳機能障害者支援法」が施行された:新しい給付ではなく、支援体制の法律
「新しい法律ができたなら、使えるサービスが増えたんですか」。増えていません。高次脳機能障害者支援法(令和7年法律第96号)は、令和7年12月に議員立法で成立し、令和8年4月1日に施行されました。第1条は、特性への国民の理解が十分でないことなどで「高次脳機能障害者が適切な支援を受けることができず」にいる状況を出発点に置いています。介護保険や障害福祉に新しい給付を足した法律ではなく、相談・医療・就労・家族支援の体制づくりを国と地方公共団体に求める基本法です。
第2表に関わる条文は4つ。第3条(基本理念)は、医療機関での医療から地域での生活支援、社会参加の支援まで「切れ目なく」行うこと、意思決定の支援に配慮することを掲げています。第14条は権利利益の擁護で、差別・虐待と並んで「消費生活における被害」を挙げています。第16条は、家族への相談・情報提供・助言と、家族同士が支え合う活動の支援。第19条は、相談の拠点を「高次脳機能障害者支援センター」と定めました。
第27条は、国と地方公共団体に、医療・保健・福祉の業務に従事する者へ「高次脳機能障害の発見のため必要な知識の普及及び啓発」に努めるよう求めています。主語は国と地方公共団体で、ケアマネジャーに発見の義務を課した条文ではありません。附則は、施行後3年を目途に見直すとしています。
定義は2層:法律は失語・失行・失認まで含む。手帳や診断で使われてきた基準は4つが中心
法第2条第1項は、高次脳機能障害を「疾病の発症又は事故による受傷による脳の器質的病変に起因すると認められる記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害、失語、失行、失認その他の認知機能の障害として政令で定めるもの」としています。
一方、平成16年に作られた行政的診断基準(国リハ掲載)は、主要症状を「記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害」としています。除外項目には、身体障害として認定できる症状があって主要症状を欠く方(失語だけの方は身体障害者手帳の側)、先天性疾患・周産期の脳損傷・発達障害・進行性疾患が原因の方が並びます。「失語は高次脳機能障害に入る」とも「入らない」とも一言では書けないのは、この2層があるためです。失語の文例は、脳卒中・通所リハ・訪問リハの記事にあるので、この記事では書きません。
診断基準は、診断を「急性期症状を脱した後」に行うとしています。退院直後の第2表で、診断名がまだ付いていないことがあるのはこのためです。第2表は診断名でなく、生活の場面で書きます。
40〜64歳は原因で入口が変わる:脳卒中なら介護保険、頭部外傷・低酸素脳症・脳炎なら障害福祉が中心
40〜64歳の方は、特定疾病が原因の要介護状態に限って介護保険の対象です(介護保険法第7条第3項第2号)。高次脳機能障害に関わるのは施行令第2条第13号の「脳血管疾患」。特定疾病の診断基準(老老発0930第2号 別添3「13」)は、これを「明らかな血管性の器質的脳病変を有するもの」とし、脳梗塞症と頭蓋内出血(脳出血・くも膜下出血・その他の頭蓋内出血)を列挙しています。
頭部外傷(交通事故・転落など)は、この列挙にありません。同じ別添3の「6 初老期における認知症」でも、除外疾病に「外傷性疾患 頭部外傷、硬膜下血腫など」が明記されています。国リハは高次脳機能障害の原因を「外傷性脳損傷、脳血管障害、低酸素脳症、脳炎、脳腫瘍など」と書いています。40〜64歳で原因が頭部外傷・低酸素脳症・脳炎なら、特定疾病には当たらないのが原則で、支援の中心は障害者総合支援法の障害福祉サービスになります。脳腫瘍は「がん(末期)」の限定つきの特定疾病で、脳腫瘍一般が対象になるわけではありません。
迷うのは、交通事故による「外傷性のくも膜下出血」や「硬膜下血腫」の方です。「その他の頭蓋内出血」に当たるかは、条文だけでは読み切れません。別添3の前文は、該当するかを「主治医意見書の記載内容に基づき…介護認定審査会が確認」するとしています。ケアマネジャーは判定せず、主治医と保険者に相談してください。
65歳以上の方は、原因を問いません。交通事故による高次脳機能障害でも申請でき、要介護状態と認められれば対象になります。
65歳以上で原因が交通事故なら:第三者行為の届出を保険者に確認
介護保険法第21条は、給付の原因が第三者の行為で生じた場合、市町村が給付の価額の限度で損害賠償の請求権を取得すると定めています。施行規則第33条の2は、第一号被保険者に、事実・第三者の氏名と住所・被害の状況を書いた届書を「遅滞なく」市町村に出すよう求めています。
届け出るのはご本人(第一号被保険者)で、ケアマネジャーではありません。ケアマネジャーの役は、初回に「原因が交通事故なら、保険者への届出が要るか確認を」と案内することです。示談や賠償の中身には入りません。国リハも、事故の補償で裁判になった場合は弁護士に相談するよう案内しています。
「高次脳は若い人の障害」ではない:在宅で診断を受けた方の半数超が65歳以上
「高次脳機能障害って、若い人の障害でしょう」。令和4年の生活のしづらさなどに関する調査(厚生労働省)では、医師から高次脳機能障害と診断された在宅の方は約22万7千人です(本人・家族の回答に基づく推計。施設・病院の方は含まない)。年齢階級の表を足すと、65歳以上が約12万5千人で55.2%(編集部計算)。在宅で診断を受けた方の2人に1人以上が65歳以上です。40〜64歳は30.8%でした。
厚生労働省は法律のページで「約23万人と推計」と書いています。出典は示されていませんが、この調査の22万7千人と一致します。推計は調べ方で幅があり、国リハは別の調査にもとづく「約27万人」「約50万人」という推計も紹介しています。数字を覚えるより、「担当している高齢の方にも、高次脳機能障害がありうる」と持っておけば足ります。
認知症との線引き:「本人に自覚がない」は決め手にならない。決めるのは医師
「自分の変化に気づいていないから、認知症では」。国リハのよくあるご質問は、高次脳機能障害の症状として「病識欠如」を挙げ、「障害がないかのようにふるまったり、言ったりする」と説明しています。自覚があるかどうかは、認知症との区別の決め手になりません。
書ける違いは2つです。行政的診断基準は「進行性疾患を原因とする者」を除外しているので、高次脳機能障害は原則として進行しない障害として扱われること。原因となる脳の損傷(発症・受傷)があること。ただし、進行しないことは「良くなる」ことと同じではありません。
法律上の線もあります。支援法の施行令第1条は、介護保険法第5条の2第1項の認知症を高次脳機能障害から除いています。介護保険法の認知症の定義(施行令第1条の2)には「脳血管疾患その他の疾患」が入っているので、脳卒中の後の認知機能の低下は、医師の診断で「血管性認知症」にも「高次脳機能障害」にもなりえます。どちらかを決めるのは医師で、ケアマネジャーではありません。認知症対応型通所介護は認知症が要件なので、高次脳機能障害だけの方には使えません。
認知症の方の文例は、認知症の記事へ。易怒性の文例はBPSDの記事にありますが、高次脳機能障害の方の怒りは、この記事では「きっかけ(疲れ・予定の変更・二つ同時)」と「場面を変える」の形で書き分けています。
【認知症(不穏・帰宅願望などBPSD)】ケアプラン第2表の文例集
「外見からは分かりにくい」:認定調査は第5群と、家での手間と頻度
主治医意見書記入の手引きは、脳血管疾患の注に、高次脳機能障害は「外見からは分かりにくく、注意が必要である」と書いています。厚生労働省の法律のページは「外形上判断しづらく」、国リハは「外からわかりにくい障害」。「見えない障害」は通称で、公的な資料の言い方はこの3つです。
認定調査員テキスト(令和6年4月改訂)で、高次脳機能障害の困りごとが重なるのは第3群・第4群に加えて、第5群の5-1「薬の内服」、5-2「金銭の管理」、5-3「日常の意思決定」、5-4「集団への不適応」、5-5「買い物」、5-6「簡単な調理」です。
国リハは「外では穏やかな方が、家に帰ると暴れて家族が大変なストレスにさらされていることがあります」と書き、家庭での様子を聞いて特記事項に記載するよう勧めています。調査の日だけ見ると困りごとが出ない方がいる、という前提で、家での手間と頻度を拾って渡します。渡し方の型(「声かけに毎回○分」「週○回」)は、うつ病の記事に書きました。精神障害者保健福祉手帳に年齢の上限がないことも、同じ記事にあります。
【うつ病・高齢者のうつ(意欲低下・閉じこもり・食欲不振)】ケアプラン第2表の文例集
主治医意見書の「3.(4) その他の精神・神経症状」の定義例には、失語・失認・失行はありますが、記憶障害・注意障害の定義例はありません。家での具体的な場面(鍋を焦がした・同じ質問を1日○回)は、意見書を書く医師に届くように情報提供しておきます。
手帳は2種類ありうる:精神障害者保健福祉手帳(器質性精神障害)と身体障害者手帳
精神障害者保健福祉手帳の判定基準(平成23年3月3日 障発0303第1号で改正)は、「器質性精神障害(高次脳機能障害を含む)」を明記し、ICD-10のF04・F06・F07に当たるものとしています。国リハは、申請の診断書を書くのは「精神科医である必要はなく、リハビリテーション医や神経内科医、脳神経外科医等も可能」と案内しています。診断書は初診日から6か月以上たってから作り、作成日から3か月以内に申請する(国リハの案内)という時間の流れも持っておきます。
麻痺や音声・言語の障害があれば、身体障害者手帳の対象にもなりえます。国リハは「2種類以上の障害者手帳を申請することができます」と書いています。令和4年の調査では、高次脳機能障害と診断された在宅の方の手帳は、身体障害者手帳が59.9%、精神障害者保健福祉手帳が32.1%でした(複数回答・編集部計算)。「高次脳機能障害なら精神の手帳」とは限りません。 税や交通の割引は自治体と事業者で差があるので、窓口で確認する形で書きます。
手帳が無くても障害福祉は申請できる:平成18年の事務連絡が決めている5つの書類
「手帳が取れるまで、障害福祉は使えないですよね」。使えます。平成18年3月22日の厚生労働省の事務連絡は、障害福祉サービスの申請で精神障害者であることを確かめる書類を、次の5つのいずれかとしています。
(1)精神障害者保健福祉手帳
(2)精神障害を事由とする年金を受けていることを証明する書類
(3)精神障害を事由とする特別障害給付金を受けていることを証明する書類
(4)自立支援医療受給者証(精神通院医療に限る)
(5)医師の診断書(ICD-10のコードを書くなど、精神障害者であることが確認できる内容)
発出時の法律名は障害者自立支援法ですが、国リハは現在の障害者総合支援法のもとでも同じ扱いを案内しています。手帳の診断書を待つ6か月の間も、主治医の診断書で障害福祉の相談を始められる、と覚えておくと、退院直後の空白を埋められます。
介護保険と障害福祉を組む:固有のサービスは介護保険の方も対象。相談支援専門員と連携
平成19年3月28日の通知(障企発第0328002号・障障発第0328002号)は、介護保険サービスに相当するものがない障害福祉サービス固有のもの(同行援護、行動援護、自立訓練(生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援等)は、介護保険の対象の方にも支給すると定めています。相当するサービスは原則として介護保険が優先ですが、「一律に当該介護保険サービスを優先的に利用するものとはしない」とも書き、区分支給限度基準額で足りない場合、身近に事業所がない・定員に空きがない場合、非該当の場合を例外に挙げています。
同じ通知は、市町村が「居宅介護支援を行う居宅介護支援事業者等とも必要に応じて連携した上で」支給決定するよう求めています。ケアマネジャーは連携先として名指しされています。居宅介護支援の運営基準(平成11年厚生省令第38号)第1条の2第4項も、指定特定相談支援事業者等との連携に努めるよう定めています。障害福祉を併用する方では、相談支援専門員が作るサービス等利用計画と、第2表を突き合わせる関係です。
行動援護は、知的障害か精神障害で行動上著しい困難がある方が対象で、高次脳機能障害の方に支給するかは市町村の判断です。第2表には「使える」と書かず、「市町村に相談する」の形で置きます。仕事の相談は、地域障害者職業センターが「障害者手帳の有無を問わず」就職・復職の相談に応じています(国リハ)。
相談先は「高次脳機能障害者支援センター(これまでの支援拠点機関)」
法第19条は、都道府県知事が、専門的な相談・助言、関係機関への情報提供・研修、連絡調整などを行う「高次脳機能障害者支援センター」を指定できると定めています。これまで「支援拠点機関」と呼ばれてきた窓口で、それを定めていた平成19年の旧通知は廃止されました。旧拠点機関をすぐに指定できない場合は、令和8年度内の指定を前提とした経過措置があります。窓口を探すときは「支援センター」と「支援拠点機関」の両方の名前で探してください。 一覧は国リハの「高次脳機能障害相談窓口」のページにあります。
厚生労働省の留意事項通知(令和8年4月15日)は、センターに置く支援コーディネーターの職種に「社会福祉士、精神保健福祉士、保健師、作業療法士、公認心理師、言語聴覚士等」を挙げ、当事者や家族で経験を生かして相談支援ができる人も想定しています。都道府県が置くよう努める地域協議会の構成例には「居宅介護支援事業所」「地域包括支援センター」が入っています。ケアマネジャーは、支援の輪の一員として書かれています。
国リハの集計では、令和8年3月現在で支援拠点は47都道府県に127か所、令和7年度の相談支援件数は99,806件です。本人・家族だけでなく、対応に迷ったときに事業所として相談してよい窓口です。
医療のリハビリ:180日の上限の「除外対象」と、通所リハを始めた翌月のルール
「高次脳機能障害は、医療のリハビリが180日を超えても続けられる。だから通所リハも並行して」。前半は条件つきで正しく、後半は組めない場合があります。
医療保険の脳血管疾患等リハビリテーション料は、発症・手術・急性増悪などから180日が上限です。ただし、特掲診療料の施設基準等(令和8年度改定)の別表第九の八は、上限の除外対象に「高次脳機能障害の患者」「失語症、失認及び失行症の患者」「頭部外傷及び多部位外傷の患者」を挙げています。「治療を継続することにより状態の改善が期待できると医学的に判断される場合」(別表第九の九)に、180日を超えて医療保険で続けられる仕組みです。「ずっと続く」ではなく、医師の判断が前提です。
一方、給付調整通知(老老発0327第2号・保医発0327第4号、令和8年3月27日改正・令和8年6月1日適用)の10は、要介護・要支援の方について、介護保険の通所リハ・訪問リハの利用開始日を含む月の翌月以降、同じ疾患の医療保険の疾患別リハビリテーション料を算定できないとしています(手術・急性増悪などの場合を除く)。別の施設で介護保険のリハビリを始める場合は、利用開始日を含む月の翌々月まで併用でき、翌月・翌々月の医療保険側は1月7単位までです。「除外対象だから医療リハも通所リハも」は、この翌月ルールで組めないことがあります。 第2表に通所リハを入れる前に、外来リハがいつまで続く予定かを病院に確認します。
病院の側にも根拠があります。診療報酬の留意事項通知(令和8年度改定)のH001(1)は、介護保険のリハビリが必要と思われる場合は「必要に応じて介護支援専門員と協力して」事業所を紹介し、見学・体験を提案するよう書いています。ケアマネジャーから外来リハの担当者に電話してよい根拠です。
入院中の方では、回復期リハビリテーション病棟の算定上限が、高次脳機能障害を伴う重症脳血管障害や頭部外傷を含む多部位外傷で180日以内(通常は150日)です。令和8年6月1日からは、高次脳機能障害の患者の退院時に、支援センターや障害福祉サービス事業所などの情報を提供する体制が回復期リハ病棟の施設基準になりました。退院前カンファレンスで「支援センターや障害福祉の情報を受け取っていますか」と聞けます。
運転の再開は、ケアマネジャーが判断しない
「車に乗ってもいいですか」と聞かれたら、答えるのはケアマネジャーではありません。免許の取消しなどを決めるのは公安委員会で(道路交通法第103条)、医師は診察の結果を公安委員会に任意で届け出ることができます(同第101条の6)。脳卒中や頭部外傷の後の記憶・注意の障害は、医師の診断をもとに公安委員会が運転の可否を判断する扱いです(警察庁の運用基準・令和7年2月28日)。
相談先は、警察の安全運転相談窓口(#8080)です。警察職員のほか、看護師・保健師・介護福祉士・作業療法士などの医療系の専門職員が対応すると警察庁は案内しています。国リハは、運転の適性の相談を免許センターなどにするよう案内しています。
第2表に書けるのは3つです。運転再開の希望を主治医に伝えて判断を仰ぐこと。安全運転相談窓口の情報を本人と家族が持つこと。運転に代わる外出の手段を確保すること。「運転を再開する」「運転をやめる」を目標に書かないのが線引きです。
目標に「記憶力が回復する」「怒らなくなる」を書かない
記載要領(老企第29号・令和3年3月31日改正後)は、第2表の目標を「抽象的な言葉ではなく誰にもわかりやすい具体的な内容で記載することとし、かつ目標は、実際に解決が可能と見込まれるものでなくてはならない」としています。記載要領は高次脳機能障害の目標について直接は書いていません。ただ、「記憶力が回復する」「注意力が向上する」「怒らなくなる」「障害を受け入れる」は、期日までに達成を確かめようがない言葉です。
国リハのよくあるご質問は、症状が回復するかという問いに「症状が回復する場合があります。しかし、すべての方に明らかな効果があるとは限りません」と答えています。「治る」「良くなる」を第2表に書かない理由はここです。
書き換えの型を3つ。「記憶力が回復する」→「決めた場所に鍵を戻せた日が週○日ある」。「集中力が続く」→「1つの作業の途中で休憩を1回はさみ、最後まで終えられる」。「怒らなくなる」→「気持ちが高ぶったら別の部屋に移る方法を、本人と家族が使える」。症状を目標にせず、場面での行動を目標にする。 目標の書き方の全体は、目標の文例の記事にまとめています。
ニーズ(生活全般の解決すべき課題)の文例(58文例)

この章の文例は「生活全般の解決すべき課題(ニーズ)」欄に書きます。主語はご本人です。家族の困りごとは行頭に(家族)を付けて区別しています。「高次脳機能障害がある」と書いて終わりにせず、どの場面で、何がきっかけで困っているかまで書けていますか。
記憶・予定の管理(在宅でメモが続かない)
- 病院ではメモを取っていたが家に戻ってから書かなくなったので、書くと何が助かるかが分かる使い方にしたい
- 同じことを何度も家族に聞いてしまうので、自分で見て確かめられる場所に予定を貼っておきたい
- 薬を飲んだかどうかを覚えていられないので、飲んだことを後から自分で確かめられる形にしたい
- 通院や来客の約束を忘れて家族に迷惑をかけたくないので、前の日と当日の朝に知らせが届く形にしたい
- 新しい支援者の名前と役割を覚えられないので、誰が何曜日に来るかを1枚で見られるようにしたい
注意・疲れやすさ(途中で抜ける・二つ同時)
- 二つのことを同時に頼まれると混乱するので、一つずつ伝えてもらいたい
- 作業を始めてしばらくすると集中が切れてミスが増えるので、区切りを入れながら続けたい
- 午後になると疲れていらいらしやすくなるので、疲れる前に休む時間を1日の予定に入れたい
- テレビや話し声がある場所では手元の作業が止まるので、静かな場所で取り組みたい
- 火にかけた鍋を忘れて焦がしたことがあるので、火を使うときに気づける工夫がほしい
段取り・家事(調理・洗濯・ゴミ出し)
- ゴミの分別と出す日が分からなくなったので、一緒にやりながら覚え直したい
- 料理の順番が分からず途中で止まってしまうので、見ながらできる手順で1品作りたい
- 洗濯機の操作を忘れてしまうので、ボタンの押し方を貼っておいて自分で回したい
- 買い物に行くと必要な物を忘れて余計な物を買うので、買う物を決めてから出かけたい
- 一日何をすればよいか分からず過ぎてしまうので、やることを順番に並べた表がほしい
意欲・発動性の低下(促されないと始められない)
- 自分から動き出すのが難しく一日横になって過ごしてしまうので、きっかけの声かけをもらって日中を起きて過ごしたい
- 着替えや歯みがきを声をかけられるまで始められないので、朝の順番を決めて一つずつ進めたい
- 以前の趣味に手が伸びなくなったので、短い時間でも取り組める役割を一つ持ちたい
- 入浴で体の一部しか洗わずに上がってしまうので、洗う順番を確かめながら入浴したい
感情のコントロール・対人(気持ちの高ぶり・こだわり)
- 思い通りにいかないと気持ちが高ぶって大声が出てしまうので、落ち着ける方法を持ちたい
- 予定が急に変わると混乱して強い口調になるので、変更は前もって知らせてほしい
- 一つのことにこだわって次に進めなくなるので、切り替えのきっかけを決めておきたい
- 初対面の人にも思ったことを言い過ぎて相手を困らせることがあるので、通所で気持ちよく過ごせる関わり方を知りたい
- 外では落ち着いていても家に帰ると疲れが出て家族に当たってしまうので、家での過ごし方を見直したい
金銭管理・契約・勧誘
- お金をあるだけ使ってしまうので、決めた金額の範囲で買い物をしたい
- 通信販売や訪問販売の勧誘を断れず契約してしまったので、契約の前に家族に相談する約束をしたい
- 食べ物やたばこなど欲しい物を我慢できないので、手元に置く量を家族と決めたい
- 公共料金の支払いや書類の手続きが分からなくなったので、手伝ってもらいながら済ませたい
服薬・通院(説明する・説明を理解する)
- 診察で自分の困りごとをうまく説明できないので、伝えたいことをまとめて受診したい
- 医師から受けた説明を家に帰ると忘れてしまうので、説明を家族と支援者で共有したい
- 薬の飲み忘れと二重に飲むことがあるので、飲んだかどうかを確かめられる形で薬を続けたい
- 外来のリハビリにいつまで通えるのか分からないので、この先の通い先を病院と相談したい
外出・移動・交通機関(道順・乗り換え)
- 道順や乗り換えが分からなくなるので、慣れた経路で一人で出かけられるようになりたい
- 外出先で迷ったときに自分で助けを求められないので、連絡先を書いたカードを持ち歩きたい
- 通院の往復だけでも一人で行けるようになりたいので、経路を支援者と一緒に練習したい
- 人混みや騒がしい場所で疲れてしまうので、空いている時間帯に出かけたい
見落とし(半側空間無視)
- 食事で皿の片側を食べ残してしまうので、見落としに自分で気づける工夫がほしい
- 歩いているときに片側の物や壁にぶつかるので、けがをしないように家の中を整えたい
- 新聞や手紙の片側の文字を読み飛ばすので、読み方の工夫を教わりたい
- 片側から話しかけられると気づかないことがあるので、支援者に話しかける側をそろえてほしい
自覚しにくさと「外から分かりにくい」こと
- 手足は動くので周りから「もう大丈夫」と思われるが、できなくなったことがあるので分かってほしい
- 自分では困っていないと思うが家族が心配しているので、何に困っているかを一緒に確かめたい
- 支援者ごとに言うことが違うと混乱するので、同じ言い方で手伝ってもらいたい
- 自分の苦手なことと助かる声かけを、新しい支援者にも伝えられるようにしたい
就労・社会参加・日中活動(障害福祉との併用)
- 事故の前の仕事に戻れるか知りたいので、仕事の相談ができる窓口につながりたい
- 日中に行く場所がなく家にこもりがちなので、自分に合った通い先を持ちたい
- 家の中で自分の役割がなくなったので、できる家事を一つ任されたい
- 同じ障害のある人がどう暮らしているか知りたいので、当事者の集まりの情報がほしい
運転(判断は主治医と公安委員会)
- 車の運転を再開したいので、運転してよいかを主治医に相談したい
- 車に乗らなくなって出かける手段がないので、運転に代わる移動の方法を知りたい
家族(「人が変わった」への受け止めと休息)
- (家族)本人が「人が変わった」ように感じてつらいので、変化の理由と接し方を専門職から聞きたい
- (家族)本人が怒り出したときにどうすればよいか分からないので、対応の仕方を決めておきたい
- (家族)声をかけないと一日中動かない本人に疲れているので、自分が休める時間を確保したい
- (家族)同じ立場の家族と話せる場がほしい
- (家族)支援者ごとに違う接し方を教わって迷うので、方針をそろえてほしい
お金と制度
- 日中に通う場所を持ちたいので、手帳がなくても使える障害福祉のサービスを市町村に相談したい
- 税や交通の割引で暮らしの負担を減らしたいので、どの手帳が対象になるか主治医に相談したい
- 交通事故が原因なので、介護保険の手続きで保険者に届け出ることがあるか確認したい
長期目標の文例(16文例)

この章の文例は「長期目標」欄に書きます。記憶や感情の回復ではなく、苦手な場面での暮らし方で書きます。 原則として進行しない障害ですが、回復の程度は人によって違うので、期間は認定の有効期間とリハビリの見立てを見て設定し、終了時期が決められないときは開始時期のみでもかまいません。担当の方の長期目標に、症状の名前が入っていませんか。
- 予定表とアラームで1日の予定を自分で確かめ、約束の時間に合わせて動ける
- 休憩をはさみながら、決めた家事や作業を自分のペースで最後まで続けられる
- 手順書を見ながら、調理・洗濯・ゴミ出しなど決まった家事を自分で続けられる
- 1日の予定表に沿って起床から就寝までの流れを保ち、日中を起きて過ごせる
- 気持ちが高ぶったときに自分で場所や話題を変える方法を使い、家族や支援者と過ごせる
- 家族と決めた金額の範囲で日々の買い物をし、契約ごとは家族に相談してから決められる
- 服薬と受診を続け、困りごとを医師に伝えられる形で通院できる
- 決めた経路で、なじみの場所まで一人または見守りで出かけられる
- 見落としやすい側を補う配置と声かけのもとで、けがなく家の中を移動して暮らせる
- 苦手な場面と助かる声かけが支援者全員にそろって伝わり、同じ手伝い方で支援を受けられる
- 病院の外来リハビリから介護保険のリハビリへ切れ目なく移り、生活の場で練習を続けられる
- 障害福祉の相談窓口とつながり、自分に合った日中の通い先や役割を持てる
- 運転の可否は主治医の判断を仰ぎ、運転に頼らない外出手段も使いながら暮らせる
- 困ったときに相談できる先(支援センター・相談支援専門員・ケアマネジャー)を持ち、在宅生活を続けられる
- (家族)本人の変化の理由と接し方を専門職から教わり、相談先を持って本人を支えられる
- (家族)通所と短期入所で休める時間を確保しながら、本人との在宅生活を続けられる
短期目標の文例(50文例)

この章の文例は「短期目標」欄に書きます。誰が見ても達成できたかどうかが分かる形にします。場面・回数・道具まで入れて、「記憶力が戻る」「集中力が上がる」という言葉は入れません。調子に波がある方は「週○日ある」「月○回ある」の形にすると、悪い日があっても達成を確かめられます。担当の方の短期目標、訪問介護員と通所の職員が同じ物差しで確かめられますか。
記憶・予定の管理(在宅でメモが続かない)
- メモを見て済ませられたことを週1回訪問介護員と振り返り、1つ言える
- 朝食後に冷蔵庫の予定表を訪問介護員と一緒に見て、その日の予定を声に出して確かめる日が週○日ある
- 服薬カレンダーの空いた枠を見て、飲んだかどうかを自分で確かめられる日が週○日ある
- 通院日の前日と当日の朝にアラームを鳴らし、予約の時間に間に合うように家を出られる
注意・疲れやすさ(途中で抜ける・二つ同時)
- 1つの作業を○分続けたら休憩を1回はさみ、最後まで終えられる日が週○日ある
- 通所で活動を1つずつ示してもらい、途中で抜けずに最後まで参加できる日が週○回ある
- 火を使うときはタイマーをかけ、鳴ったらコンロの前に戻って火を確かめられる
- 疲れが出やすい午後は予定を入れず、1時間は横になって休む日を週○日作れる
段取り・家事(調理・洗濯・ゴミ出し)
- 訪問介護員と一緒にゴミを分別し、収集日に集積所まで出せる日が週○回ある
- 手順を書いた紙を見ながら、訪問介護員の見守りで味噌汁など1品を作れる日が週○回ある
- 洗濯機の横に貼った操作手順を見て、洗濯から干すまでを自分でできる日が週○日ある
- 買い物の前に買う物を紙に書き、訪問介護員と一緒に書いた物だけを買える
意欲・発動性の低下(促されないと始められない)
- 朝の順番(起きる→着替え→洗面→朝食)を貼った表に沿って、声かけで○個進められる日が週○日ある
- 予定表の項目を1つ終えるごとに、自分で印をつけられる
- 週○回通所に参加し、決まった役割(配膳・体操の準備など)を1つ受け持てる
- 入浴時に洗う順番を訪問介護員の声かけで確かめ、全身を洗って上がれる日が週○回ある
感情のコントロール・対人(気持ちの高ぶり・こだわり)
- 気持ちが高ぶりやすい場面(疲れ・予定の変更・二つ同時の頼まれごと)を、本人・家族・支援者で3つ書き出せる
- 気持ちが高ぶったときに、決めておいた方法(別の部屋に移る・話題を変える)を使えたかを、家族と週1回振り返れる
- 予定が変わるときは前日までに知らせを受け、変更後の予定を自分で予定表に書き直せる
- 落ち着いた後に、そのときの出来事を家族か支援者と一緒に振り返れる日が月○回ある
金銭管理・契約・勧誘
- 家族から週ごとに受け取る決めた金額の範囲で、1週間の買い物ができる
- 小遣い帳に買った物と金額を週○回書き、家族と一緒に見直せる
- 通信販売や訪問販売で契約する前に、家族に電話で相談できる
- 公共料金の支払いを、家族か支援者と一緒に月1回済ませられる
服薬・通院(説明する・説明を理解する)
- 受診の前に困りごとを3つ紙に書き、診察で医師に渡せる
- 受診後に医師の説明を家族かケアマネジャーと一緒に紙にまとめ、支援者と共有できる
- 服薬カレンダーを使い、処方どおりに薬を飲めた日が週○日ある
- 外来リハがいつまで続くかを本人・家族が主治医とリハ担当者から聞き、介護保険のリハビリを始める月を決められる
外出・移動・交通機関(道順・乗り換え)
- 経路と乗る電車・バスの時刻を書いたメモを持ち、支援者の同行で○○まで往復できる
- 同行の練習を○回重ねたあと、同じ経路を一人で往復できる
- 名前と連絡先と「道を教えてください」と書いたカードを、外出のときに持ち歩ける
- 人の少ない時間帯を選び、月○回は家族と外出できる
見落とし(半側空間無視)
- 食事のときに見落としやすい側を声かけで確かめ、皿の料理を食べ終えられる日が週○日ある
- 通路の片側に物を置かない配置に変え、家の中でぶつからずに移動できる
- 支援者が見えやすい側から話しかけるやり方にそろえ、呼びかけに応じて会話を始められる
自覚しにくさと「外から分かりにくい」こと
- 苦手な場面と助かる声かけを本人と一緒に1枚にまとめ、全事業所の支援者が同じ紙を持てる
- 「困っていない」と感じていることと家族が心配していることを、担当者会議で並べて話し合える
- 新しい事業所を使い始めるときに、その1枚を自分で渡して説明できる
就労・社会参加・日中活動(障害福祉との併用)
- 相談支援専門員か高次脳機能障害者支援センターの相談を、○か月以内に1回受けられる
- 就労の相談先(地域障害者職業センターなど)に家族と出向き、相談の結果を担当者会議で共有できる
- 自立訓練(生活訓練)など日中の通い先を見学し、利用するかを自分で決められる
運転(判断は主治医と公安委員会)
- 運転を再開したい気持ちを受診時に主治医に伝え、判断を聞ける
- 安全運転相談窓口(#8080)の案内を本人と家族が手元に持ち、運転に代わる外出手段を1つ試せる
家族(「人が変わった」への受け止めと休息)
- (家族)主治医かリハビリの専門職から、本人の変化の理由と接し方の説明を○か月以内に受けられる
- (家族)本人がいらいらする場面・時間・きっかけをメモし、担当者会議で支援者と共有できる
- (家族)高次脳機能障害者支援センターで家族会や交流会の情報を得て、参加するかを決められる
- (家族)月○日の短期入所と週○回の通所で、自分の休む時間を確保できる
お金と制度
- 自立支援医療受給者証か主治医の診断書で障害福祉の申請ができるかを、○か月以内に市町村で確かめられる
- 精神障害者保健福祉手帳と身体障害者手帳の申請の要否を、主治医と相談して決められる
- 原因が交通事故の場合、第三者行為の届出が要るかを保険者に確かめ、要るなら届け出られる
サービス内容の文例(53文例)

この章の文例は「サービス内容」欄に書きます。高次脳機能障害の方のサービス内容は、「何をするか」に加えて「どの言葉と手順でそろえるか」まで書きます。通所リハ・訪問リハは主治医の指示にもとづくことが読み取れる形に。介護保険で出ないもの(障害福祉・支援センター・安全運転相談・社会福祉協議会の事業)は、窓口の名前まで書きます。担当の方への声かけ、事業所ごとにばらばらになっていませんか。
主治医・医療機関との連携
- 主治医:診断と治療、服薬の調整、主治医意見書の記載、手帳や障害福祉の申請に使う診断書の記載
- 主治医:運転再開の希望に対する医学的な判断と、本人・家族への説明
- 主治医・リハビリ担当:家族への障害の説明と接し方の助言
- 病院のリハビリ担当(外来・医療保険):評価と訓練、介護保険のリハビリへの移行時期の相談
- ケアマネジャー:外来リハの担当者と連絡をとり、介護保険の通所リハ・訪問リハを始める月と併用できる期間を担当者会議で共有する
- ケアマネジャー:退院前カンファレンスで、高次脳機能障害者支援センター・障害福祉サービス事業所などの情報を病院から受け取っているか確認する
- ケアマネジャー:本人の苦手な場面・高ぶりやすいきっかけ・助かる声かけを1枚にまとめ、本人の同意を得て全事業所に配る
- ケアマネジャー:月1回の訪問で本人の話に加えて家族から家での様子(疲れ・いらいら・お金の使い方)を聞き取り、支援者の声かけと手順がそろっているか確認する
- ケアマネジャー:障害福祉を併用する場合、相談支援専門員とサービス等利用計画と第2表を突き合わせ、重なりと抜けを確認する
通所リハビリテーション・訪問リハビリテーション(主治医の指示に基づく)
- 通所リハビリテーション:作業療法士による予定管理の道具(予定表・アラーム・服薬カレンダー)の選定と使い方の練習
- 通所リハビリテーション:活動を1つずつ示し、休憩をはさむ時間配分で参加。静かな席の配慮
- 通所リハビリテーション:家で使う手順書と声かけの言葉を、訪問介護と家族にそろえて伝える
- 訪問リハビリテーション:自宅の台所・洗濯機・通路で、手順書と物の配置の工夫を本人と一緒に作る
- 訪問リハビリテーション:見落としやすい側を補う家具の配置と食事の並べ方を評価し、家族と訪問介護員に同じやり方を伝える
- 訪問リハビリテーション:外出の経路を一緒に確かめ、経路メモと困ったときのカードを作る
- 訪問リハビリテーション・通所リハビリテーション:3か月ごとに道具の使い方と生活の変化を評価し、主治医とケアマネジャーに報告する
訪問介護
- 訪問介護(身体介護):本人と一緒にゴミを分別し、ゴミ出しのルールを思い出してもらうよう援助する(自立生活支援・重度化防止のための見守り的援助)
- 訪問介護(身体介護):手順書を見ながら本人と一緒に調理・配膳・後片付けを行い、安全確認の声かけと疲労の確認をする(見守り的援助)
- 訪問介護(身体介護):洗濯機の操作手順を本人と一緒に確かめ、干す・たたむを見守りながら行う(見守り的援助)
- 訪問介護(身体介護):服薬時に側で見守り、服薬カレンダーで飲んだかどうかを本人と一緒に確かめる(直接介助は行わない)
- 訪問介護(身体介護):朝の予定表を本人と一緒に見て、着替え・洗面を一つずつ声かけで始める
- 訪問介護(身体介護):入浴時に洗う順番を声かけし、洗い残しがないかを確かめる
- 訪問介護(生活援助・一人暮らしまたは同居家族が家事を行えない場合):日用品の買い物(内容の確認、品物・釣り銭の確認を含む)
- 訪問介護:声かけは一度に1つ。担当者会議で決めた言葉と手順(共有の1枚)で行い、変えるときはケアマネジャーに相談する
- 訪問介護:いらいらや疲れが出た場面・時間帯・きっかけをサービス提供記録に残し、ケアマネジャーに連絡する
通所介護・短期入所生活介護
- 通所介護:本人の苦手な場面と声かけの紙を職員全員で共有し、活動を1つずつ示す
- 通所介護:予定の変更は前日までに本人と家族に伝え、当日に変えるときは理由を短く伝えてから行う
- 通所介護:本人が受け持つ役割(配膳・体操の準備など)を決め、終えたら本人と一緒に確かめる
- 通所介護:送迎時に家族から前日の様子(疲れ・睡眠・いらいら)を聞き、その日の活動量を調整する
- 通所介護・短期入所生活介護:利用の前に見学と体験を行い、本人の特性と過ごし方を事業所と確かめる
- 短期入所生活介護:月○日、家族の休息のため。自宅と同じ予定表・声かけ・服薬の手順で過ごし、帰宅時に家族とケアマネジャーに報告する
- 短期入所生活介護:入所中にいらいらや混乱が出た場面を記録し、帰宅後の声かけに生かせるよう家族と共有する
居宅療養管理指導(薬剤師・主治医の指示に基づく)
- 居宅療養管理指導(薬剤師):服薬の一包化と服薬カレンダーの設定、飲み残しの確認と主治医への情報提供
- 居宅療養管理指導(薬剤師):薬の飲み方を本人と家族に同じ言葉で説明し、紙にして渡す
障害福祉・相談窓口(保険給付対象外サービス)
- 高次脳機能障害者支援センター(これまでの支援拠点機関・都道府県等が指定):専門的な相談・助言、家族向けの説明会・交流会の情報提供
- 高次脳機能障害者支援センター:事業所の対応に迷うときの支援者向けの助言・研修の相談
- 相談支援専門員(指定特定相談支援事業者):障害福祉サービスの利用計画の作成。ケアマネジャーと計画の内容と担当者会議の日程を共有する
- 自立訓練(生活訓練)(障害福祉サービス・市町村の支給決定):日常生活に必要な動作や技能の練習
- 就労移行支援・就労継続支援(障害福祉サービス)、地域障害者職業センター:仕事に戻る・就くための相談と評価(65歳以上の方が対象になるかは市町村に確認)
- 市町村の障害福祉担当:精神障害者保健福祉手帳・身体障害者手帳の申請と、手帳がない場合の申請書類(自立支援医療受給者証・医師の診断書)の確認
- 保険者(市町村の介護保険担当):原因が交通事故の場合の、第三者行為の届出の要否の確認
- 安全運転相談窓口(#8080・都道府県警察):運転再開について本人・家族が相談できる窓口の情報提供
- 日常生活自立支援事業(社会福祉協議会)・成年後見制度(家庭裁判所):お金の管理や契約に支援が要る場合の相談窓口の情報提供
本人・家族の取り組み
- 本人:朝食後に予定表を見て、終えた項目に印をつける
- 本人:火を使うときはタイマーをかけ、外出前は火の元と戸締りのチェックリストを確かめる(タイマー・チェックリストは保険給付の対象外)
- 本人:受診の前に困りごとを紙に3つ書いておく
- 本人:外出のときは経路メモと連絡先のカードを持つ
- 本人:気持ちが高ぶったら、決めておいた部屋に移って休む
- 家族:本人と決めた金額を週ごとに分けて渡す。菓子類や嗜好品は本人と決めた量を手元に置き、残りは本人と決めた場所に保管する
- 家族:いらいらした場面・時間・きっかけをメモし、受診時と担当者会議で伝える
- 家族:怒り出したときは話題や場所を変え、落ち着いてから一緒に振り返る
- 家族:声をかけても動かない日は責めずに、予定表の次の項目を一つだけ促す
- 家族:支援者から教わった声かけの言葉を、家でも同じ言い方で使う
書き方のコツ(深めたい方向け)
すぐ使いたい方は、ここから先は読まなくて大丈夫です。高次脳機能障害の方の第2表ならではの書き分けのコツをまとめました。
コツ1:「場面」の次は「きっかけ」と「そろえる声かけ」
脳卒中の記事では「診断名ではなく場面で書く」とまとめました。この記事の文例は、そこに2つ足しています。1つ目はきっかけです。国リハは社会的行動の障害について「行動を誘発する刺激となる言葉や物、状況を特定し、刺激を少なくするような方法を検討」と書いています。「怒りっぽい」ではなく「疲れた午後」「予定が変わったとき」「二つ同時に頼まれたとき」まで書けば、サービス内容に手が打てます。
2つ目はそろえる声かけです。国リハは「支援する人たちがそれぞれ別々のアドバイスをすると混乱が生じ」とし、「支援者は情報を共有し、目標を一致させて、同じアドバイスをします」と書いています。訪問介護・通所・家族で言い方が違うと、本人はそのたびに混乱します。苦手な場面と助かる声かけを1枚にまとめ、サービス内容の各行に「担当者会議で決めた言葉と手順で」と書き添えます。
通所の事業所選びでは、国リハが、身体の障害だけに着目して特性を理解せずに対応すると利用を断られるような事態になりかねないと注意しています。見学と体験で、声かけをそろえてくれる事業所かを確かめてください。
コツ2:家事は「代わりにやる」より「一緒にやる」。見守り的援助の言葉で書く
国リハは、身体の介助が要る理由を「手足が不自由なためにできないのではなく、自分でやろうとしない、あるいはやり方がわからないなどによって必要」と説明しています。やり方が分からない方の家事を代わりにやると、できることが減っていきます。
老計第10号(平成30年3月30日改正・介護保険最新情報Vol.637)の「自立生活支援・重度化防止のための見守り的援助」は身体介護で、「ゴミの分別が分からない利用者と一緒に分別をしてゴミ出しのルールを理解してもらう又は思い出してもらうよう援助」「利用者と一緒に手助けや声かけ及び見守りしながら行う調理、配膳、後片付け(安全確認の声かけ、疲労の確認を含む)」を例示しています。「疲労の確認」が例示に入っているので、疲れやすい方の調理にそのまま使えます。代わりにやる生活援助と、一緒にやる身体介護の書き分けは、訪問介護の記事にあります。
コツ3:本人が「困っていない」と言うとき。意向欄を家族の言葉で上書きしない
病識が乏しい方は、アセスメントで「特に困っていない」と答えます。家族は「毎日が大変」と言う。このとき、第1表の本人の意向を家族の言葉で書き換えていませんか。本人の言葉は本人の意向として、家族の心配は家族の意向として、分けて書きます。居宅介護支援の運営基準第1条の2第3項が「利用者の意思及び人格を尊重」することを求め、支援法第3条が基本理念に「意思決定の支援に配慮」を掲げていることが拠りどころになります。
第2表では、ニーズに「自分では困っていないと思うが家族が心配しているので、何に困っているかを一緒に確かめたい」、短期目標に「『困っていない』と感じていることと家族が心配していることを、担当者会議で並べて話し合える」を置けます。本人を説得する計画ではなく、確かめる計画にします。国リハは、在宅になってメモを取らなくなった方について、メモで何ができるようになるかを「本人が実感できることが大切」と答えています。ここでも、本人が実感できる用途に絞るのが入口です。
コツ4:外来リハから通所リハへ。始める「月」を病院と決めてから第2表に入れる
180日を超えて医療保険のリハビリが続いている方でも、介護保険の通所リハを始めた月の翌月以降は、同じ疾患の医療保険のリハビリは原則算定できません(給付調整通知10)。別の施設なら翌々月まで併用でき、医療保険側は1月7単位までです。医療保険のリハビリを受けている間に、紹介された事業所で体験する場合(1月に5日以内・3か月以内)は移行とはみなされません(心大血管疾患・呼吸器のリハビリを除く)。
順番はこうです。外来リハの担当者に、医療保険のリハビリをいつまで続ける見込みかを聞く。通所リハの見学・体験を病院と相談する。始める月を決めてから、第2表の期間欄に書く。リハビリの内容の書き方は、通所リハ・訪問リハの記事にあります。
【通所リハビリテーション(デイケア)】ケアプラン第2表の文例集
コツ5:障害福祉と併用するとき、第2表とサービス等利用計画を突き合わせる
40〜64歳で介護保険の対象の方(脳血管疾患が原因)や、65歳以上で自立訓練・就労系を使う方は、ケアプランとサービス等利用計画の2つが同時に動きます。同じ日に通所と自立訓練が重なっている、どちらの計画にも服薬の見守りが入っていない。こうしたずれは、相談支援専門員と計画を並べると見つかります。運営基準第1条の2第4項の連携の記録として、担当者会議に相談支援専門員を呼んだ経過を残しておきます。
薬の管理は、薬剤師の居宅療養管理指導(主治医の指示に基づく)で一つの窓口にまとめる型が書けます。
現場のひとこと
高次脳機能障害の方の第2表は、本人の能力より、周りの支援者の足並みで結果が変わります。同じ本人でも、声かけがそろった月は予定どおりに過ごせて、担当者が替わった月に崩れる。第2表のサービス内容に「決めた言葉と手順で」と一言入れておくと、崩れたときに「どこで言い方が変わったか」をたどれます。担当の方の1枚の紙、いちばん新しい支援者の手元にも届いていますか。
運営指導で見られやすいポイント
1. 第2号被保険者(40〜64歳)の場合、アセスメントに要介護状態の原因となった疾患(特定疾病名)と、発症・受傷の経過が記録され、第2表の課題とつながっているか
2. 通所リハビリ・訪問リハビリを位置づけるにあたり、利用者の同意を得て主治医の意見を求め、作成した計画を主治医等へ交付した記録があるか(平成11年厚生省令第38号 第13条第19号・第19号の2・第20号)
3. 医療保険の外来リハビリと介護保険のリハビリを併用している場合、利用開始日が病院と共有され、給付調整通知の併用期間の範囲に収まっているか
4. 障害福祉サービスを併用している場合、指定特定相談支援事業者(相談支援専門員)との連携の経過が支援経過・担当者会議の記録に残っているか(同 第1条の2第4項)
5. 本人の意向が本人の言葉で記録され、家族の意向と分けて書かれているか。病識が乏しい方の意向の確かめ方が支援経過に残っているか
6. 目標が「記憶力が回復する」「怒らなくなる」など解決が見込めない表現ではなく、本人が取り組める場面での行動になっているか
7. 主治医から医学的観点からの留意事項(疲れやすさ・服薬・運転など)が示されている場合、それを尊重したサービス内容になっているか(同 第13条第20号)
8. 障害福祉サービス・支援センター・安全運転相談など保険給付対象外のサービスが、第2表に窓口とあわせて明記されているか(記載要領④)
9. 服薬状況や心身の変化を、利用者の同意を得て主治医・薬剤師に提供した記録があるか(同 第13条第13号の2)
10. 短期入所を家族の負担軽減で位置づけている場合、利用日数が要介護認定の有効期間のおおむね半数を超えていないか(同 第13条第21号)
よくある迷いどころ
58歳の方が交通事故の頭部外傷で高次脳機能障害になりました。介護保険を申請できますか
原因が頭部外傷だけなら、特定疾病の「脳血管疾患」には当たらないのが原則です。特定疾病の診断基準は脳血管疾患を「明らかな血管性の器質的脳病変」とし、脳梗塞症と頭蓋内出血を列挙していて、頭部外傷は入っていません。申請そのものはできますが、特定疾病に当たるかは主治医意見書をもとに介護認定審査会が確認するので、見込みは主治医と保険者に相談してください。並行して、市町村の障害福祉窓口にも相談します。手帳が無くても、主治医の診断書などで申請の相談を始められます。外傷性のくも膜下出血・硬膜下血腫が「その他の頭蓋内出血」に当たるかは条文だけでは読み切れないので、ケアマネジャーが判定せず、主治医と保険者に確認してください。65歳以上なら原因を問わず対象です。
高次脳機能障害者支援法で、何が変わりましたか
使えるサービスが増えたわけではなく、支援の体制が法律に位置づけられました。相談の拠点が「高次脳機能障害者支援センター」の名前で定められ(第19条)、都道府県に地域協議会や専門的な医療機関の確保の努力義務ができ、家族支援(第16条)や消費生活の被害の防止(第14条)が条文になりました。ケアマネジャーの実務に関わるのは、たとえば窓口の名前が変わったこと、厚生労働省の留意事項通知(令和8年4月15日)で地域協議会の構成例に居宅介護支援事業所が挙がったことです。あわせて令和8年6月1日からは、診療報酬改定で回復期リハビリテーション病棟に、退院時に支援センターなどの情報を提供する体制が求められています。窓口は「支援センター」と「支援拠点機関」の両方の名前で探してください。
手帳がないと、障害福祉は使えませんか
使えます。平成18年の事務連絡は、精神障害者であることを確かめる書類を、手帳・精神障害を事由とする年金の証書等・特別障害給付金の証書等・自立支援医療受給者証(精神通院医療に限る)・医師の診断書(ICD-10のコードを書くなど)のいずれかとしています。精神障害者保健福祉手帳の診断書は初診から6か月以上たってから作る(国リハの案内)ので、その間は診断書で相談を始める形が書けます。
認知症との違いを家族に聞かれました。どう答えればよいですか
決めるのは医師で、ケアマネジャーが言えるのは線引きの考え方までです。高次脳機能障害は、脳のけがや病気の後に残る障害で、診断基準は進行性の病気を除外しています。「本人に自覚がないから認知症」とは言えません。高次脳機能障害にも、病識の乏しさ(自分の障害をうまく認識できない)が症状として挙がっています(国リハ)。支援法の施行令は、介護保険法の認知症に当たるものを高次脳機能障害から除いているので、どちらに当たるかは主治医の診断によります。
「運転したい」と言われました。第2表にどう書けばよいですか
「運転を再開する」とも「運転をやめる」とも書きません。決めるのは公安委員会で、医師の診断がもとになります。第2表には「運転を再開したい気持ちを受診時に主治医に伝え、判断を聞ける」「安全運転相談窓口(#8080)の案内を本人と家族が手元に持つ」「運転に代わる外出手段を1つ試せる」を置きます。本人の希望は第1表の意向欄に本人の言葉で残します。
医療の外来リハを続けながら、通所リハも使えますか
要介護・要支援の方は、通所リハを始めた月の翌月以降、同じ疾患の医療保険のリハビリは原則算定できません(給付調整通知10・令和8年6月1日適用)。別の施設なら翌々月まで併用でき、医療保険側は1月7単位までです。高次脳機能障害は180日の上限の除外対象ですが、それで両方を長く並べられるわけではありません。外来リハの担当者と、介護保険のリハビリを始める月を先に決めてください。
家族が「人が変わった」と泣いています。ケアマネジャーにできることはありますか
説得ではなく、説明の機会と休息を置きます。国リハは、家族の問いに「脳損傷を受けた結果起きた変化を理解する事から始まります」と答え、外に出たがらない方に「叱咤激励しても効果は期待できません」とも書いています。第2表には「主治医かリハビリの専門職から、本人の変化の理由と接し方の説明を○か月以内に受けられる」を家族の短期目標に置き、支援センターで家族会や交流会の情報を得る行を入れます。家族の休息は短期入所(指定居宅サービス等基準第120条「家族の身体的及び精神的負担の軽減」)と通所で確保します。本人が高ぶって家族がけがをしそうな場面があると聞いたら、ケアマネジャー一人で抱えず、主治医と高次脳機能障害者支援センターに早めに相談します。
【ショートステイ(短期入所生活介護)】ケアプラン第2表の文例集
まとめ
✓ 高次脳機能障害者支援法は2026年4月1日施行(令和7年法律第96号)。新しい給付を足した法律ではなく、相談・医療・就労・家族支援の体制を定めた基本法。相談の拠点は「高次脳機能障害者支援センター」(これまでの支援拠点機関)。両方の名前で探す
✓ 定義は2層。法律は失語・失行・失認まで含み、行政的診断基準は記憶・注意・遂行機能・社会的行動の4つが中心。失語の文例は脳卒中・リハの記事へ
✓ 40〜64歳は原因で入口が変わる。脳梗塞・脳出血・くも膜下出血なら特定疾病(脳血管疾患)、頭部外傷・低酸素脳症・脳炎なら特定疾病に当たらないのが原則で障害福祉が中心。判定は審査会。65歳以上は原因を問わない。交通事故が原因なら第三者行為の届出を保険者に確認
✓ 「高次脳は若い人の障害」ではない(在宅で診断を受けた方の55.2%が65歳以上・編集部計算)。「自覚がない=認知症」も誤り。違いは進行性の病気が除外されていること。決めるのは医師
✓ 「外見からは分かりにくい」(主治医意見書記入の手引き)。認定調査は第5群(薬・金銭・意思決定・集団・買い物・調理)と、家での手間と頻度を特記事項へ
✓ 手帳は精神(器質性精神障害・診断書は精神科医でなくてもよい)と身体の2種類ありうる。手帳がなくても自立支援医療受給者証や診断書で障害福祉を申請できる(平成18年事務連絡)。固有サービスは介護保険の方も対象(平成19年通知)。相談支援専門員と連携(運営基準第1条の2第4項)
✓ 医療リハは180日の上限の除外対象(医師が改善を見込む場合)。ただし通所リハを始めた月の翌月以降は同じ疾患の医療リハは原則算定できない。始める月を病院と決めてから第2表へ
✓ 運転はケアマネジャーが判断しない(公安委員会・医師)。第2表は「主治医に希望を伝える」「#8080の情報」「代わりの外出手段」まで
✓ 目標に「記憶力が回復する」「怒らなくなる」を書かない。場面+きっかけ+そろえる声かけで書き、家事は「一緒にやる」見守り的援助の言葉で。本人の「困っていない」は本人の意向として残す
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参考・出典
1. 高次脳機能障害者支援法(令和7年法律第96号・令和8年4月1日施行)第1条・第2条・第3条・第14条・第16条・第19条・第24条・第25条・第27条・附則/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/507AC1000000096
2. 高次脳機能障害者支援法施行令(令和8年政令第60号)第1条/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/508CO0000000060
3. 厚生労働省「高次脳機能障害者支援法関係通知について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67482.html ・「法の概要」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001621559.pdf
4. 厚生労働省「高次脳機能障害者支援事業の実施について」(令和8年4月7日・旧「高次脳機能障害及びその関連障害に対する支援普及事業」通知の廃止) https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001692852.pdf ・高次脳機能障害者支援事業実施要綱 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001692853.pdf
5. 厚生労働省 留意事項通知(令和8年4月15日 障精発0415第1号)支援コーディネーター・地域協議会の構成例・経過措置・家族支援 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001692858.pdf
6. 国立障害者リハビリテーションセンター 高次脳機能障害情報・支援センター「理解する」(行政的診断基準) https://www.rehab.go.jp/brain_fukyu/rikai/ ・「主要症状の解説」 https://www.rehab.go.jp/brain_fukyu/rikai/shoujou/
7. 同「よくあるご質問」 https://www.rehab.go.jp/brain_fukyu/qa/
8. 同「制度」(手帳・診断書・2種類以上の手帳) https://www.rehab.go.jp/brain_fukyu/seido/
9. 同「福祉サービスについて知りたい」 https://www.rehab.go.jp/brain_fukyu/how05/
10. 同「生活支援について知りたい」 https://www.rehab.go.jp/brain_fukyu/how06-1/
11. 同「リハビリテーションについて知りたい」 https://www.rehab.go.jp/brain_fukyu/how04/
12. 同「就労支援について知りたい」 https://www.rehab.go.jp/brain_fukyu/how06/
13. 同「高次脳機能障害相談窓口」 https://www.rehab.go.jp/brain_fukyu/soudan/ ・「支援拠点機関数と相談支援件数の推移」 https://www.rehab.go.jp/application/files/8117/8365/0597/R8soudankensu.pdf
14. 介護保険法(平成9年法律第123号)第5条の2・第7条第3項第2号・第21条/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123
15. 介護保険法施行令(平成10年政令第412号)第1条の2・第2条/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/410CO0000000412
16. 介護保険法施行規則(平成11年厚生省令第36号)第33条の2/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100036
17. 厚生労働省 老健局老人保健課長通知「要介護認定における『認定調査票記入の手引き』、『主治医意見書記入の手引き』及び『特定疾病にかかる診断基準』について」(平成21年9月30日 老老発0930第2号)別添3 特定疾病にかかる診断基準(前文) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb6469&dataType=1&pageNo=5 ・同(6 初老期における認知症) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb6469&dataType=1&pageNo=5 ・同(13 脳血管疾患) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb6469&dataType=1&pageNo=6 ・別添2 主治医意見書記入の手引き(3.(4)・特定疾病の症候・所見のポイント13) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb6469&dataType=1&pageNo=4 (2026年9月時点で現行として掲載されている版)
18. 厚生労働省「認定調査員テキスト2009改訂版」(令和6年4月改訂)第3群〜第5群 https://www.mhlw.go.jp/content/001249525.pdf
19. 厚生労働省通知「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準についての一部改正について」(平成23年3月3日 障発0303第1号)/国立障害者リハビリテーションセンター掲載 https://www.rehab.go.jp/application/files/9115/1668/5082/1_03_.pdf
20. 厚生労働省 障害保健福祉部精神保健福祉課 事務連絡「障害者自立支援法における障害福祉サービスの支給申請に係る精神障害者であることの確認について」(平成18年3月22日)/国立障害者リハビリテーションセンター掲載 https://www.rehab.go.jp/application/files/7515/1668/5288/2_04_.pdf
21. 厚生労働省 障害保健福祉部企画課長・障害福祉課長通知「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく自立支援給付と介護保険制度との適用関係等について」(平成19年3月28日 障企発第0328002号・障障発第0328002号) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb4788&dataType=1&pageNo=1
22. 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)第4条第1項/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000123
23. 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)第1条の2第4項・第13条第13号の2・第19号・第19号の2・第20号・第21号/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100038
24. 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第120条/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100037
25. 特掲診療料の施設基準等(令和8年度改定)別表第九の五・別表第九の八・別表第九の九/厚生労働省法令等データベース https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=84aa9733&dataType=0&pageNo=5
26. 診療報酬の算定方法(平成20年厚生労働省告示第59号)別表第一 医科診療報酬点数表(令和8年度改定・令和8年6月1日適用)H001 脳血管疾患等リハビリテーション料 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
27. 厚生労働省 保険局医療課長通知「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和8年度改定・令和8年6月1日適用)H000(6)・H001(1)(2) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001732089.pdf
28. 厚生労働省「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について」(平成18年4月28日 老老発第0428001号・保医発第0428001号/最終改正 令和8年3月27日 老老発0327第2号・保医発0327第4号・令和8年6月1日適用)10 リハビリテーション https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001697767.pdf
29. 基本診療料の施設基準等(令和8年度改定)別表第九(回復期リハビリテーション病棟の算定上限日数)/厚生労働省法令等データベース https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=84aa9732&dataType=0&pageNo=6 ・厚生労働省通知(令和8年5月8日 障精発0508第1号・退院支援に関する診療報酬の改定等) https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001699232.pdf
30. 厚生労働省 老健局振興課長通知「『訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について』の一部改正について」(平成30年3月30日 老振発0330第2号・老計第10号の改正) https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000201799.pdf ・改正後全文(介護保険最新情報Vol.637)1-6 自立生活支援・重度化防止のための見守り的援助 https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2018/0402095345456/ksVol637.pdf
31. 道路交通法(昭和35年法律第105号)第101条の6・第103条/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000105
32. 警察庁 運用上の留意事項(令和7年2月28日 丁運発第73号)8 脳卒中・9 認知症 https://www.npa.go.jp/laws/notification/koutuu/menkyo/menkyo20250228_73.pdf ・警察庁「一定の病気等」 https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/list2.html
33. 警察庁「安全運転相談窓口」 https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/conferennce_out_line.html ・「安全運転相談の概要」 https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/pdf/about_8080.pdf
34. 厚生労働省「令和4年 生活のしづらさなどに関する調査 結果の概要」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/seikatsu_chousa_b_r04_01.pdf ・統計表(第11表〜第19表) https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/seikatsu_chousa_c_r04-02.xlsx ・掲載元 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/seikatsu_chousa_b_r04.html
35. 厚生労働省 老企第29号「介護サービス計画書の様式及び課題分析標準項目の提示について」別紙1 記載要領(令和3年3月31日改正後全文・介護保険最新情報Vol.958)第2表①〜④ https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2021/0401101809839/ksvol.958.pdf


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