在宅酸素の方を初めて担当すると、短期目標に「SpO2 90%以上を保てる」「酸素を1L/分で続けられる」と書きたくなります。でもその数字は、主治医が決めて、訪問看護と本人が測っている数字です。ケアマネジャーが同じ数字を目標欄に写しても、達成を確かめる手段がありません。第2表に書けるのは、その数字を守れる暮らしのほう——酸素を付けたまま息切れと折り合って動く手順、火気を遠ざける約束、増悪のサインを誰がどこに連絡するかの経路、です。

この記事では、COPD(慢性閉塞性肺疾患)で在宅酸素療法(HOT)を受けている方、そして酸素はまだ使っていないが息切れのある方の第2表で使える文例を、場面ごとに149本まとめました。労作時の息切れ、入浴、トイレ、外出、酸素機器の管理、火気の安全、急性増悪の備え、やせ、不安、禁煙、独居、家族介護まで並べています。気になる行をコピーして、ご本人の状態に合わせて言葉を入れ替えて使ってください。制度の部分は、介護保険法・政令・省令・告示と、厚生労働省・消防庁の注意喚起の原文にあたって書いています。
この記事の文例の並び方
第2表の欄ごとに章を分けています。
1章目:ニーズ(「〜したい」の形・主語はご本人)
2章目:長期目標
3章目:短期目標
4章目:サービス内容
各章の中は場面別に分かれているので、担当の方に近い場面から拾ってください。後半に「書き方のコツ」と「運営指導で見られやすいポイント」があります。
文例の前に:COPD・在宅酸素の第2表で押さえること
COPDは、たばこの煙を主とする有害物質を長年吸い込むことなどが原因で、肺の空気の通りが悪くなり、息切れ・せき・たんが出る病気です。日本呼吸器学会の解説では、40歳以上の約12人に1人、推定530万人以上が患者と考えられている一方、実際に受診しているのは約38.2万人とされています(令和5年患者調査)。ゆっくり進むので気づかれにくく、ケアマネジャーが出会う「息切れの強い喫煙歴のある方」の中に、診断のついていないCOPDが混じっている場面は珍しくありません。病気が進んで体の酸素が足りなくなると、自宅で酸素を吸う在宅酸素療法(HOT)が始まります。
COPDは特定疾病の第15号。40〜64歳でも申請できます
介護保険法第7条第3項第2号は、40歳以上65歳未満の方についての定めです。要介護状態の原因が「加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病であって政令で定めるもの」=特定疾病による場合に、要介護者になります。政令(介護保険法施行令第2条)が挙げる16の特定疾病のうち、第15号が「慢性閉塞性肺疾患」です。
つまり、58歳で在宅酸素が始まった方も、要介護認定を申請できます。要支援も同じ建て付けです(法第7条第4項第2号)。ただし40〜64歳の方が第2号被保険者になるのは医療保険に加入している場合なので(法第9条第2号)、加入状況は最初に確認してください。申請時の主治医意見書に「慢性閉塞性肺疾患」の病名が載るよう、主治医(呼吸器内科など)に伝えておいてください。第2号被保険者は特定疾病に当たることが認定の前提なので、意見書に病名が載らないと認定されないことがあります。
酸素の流量・吸入時間・SpO2を目標欄に書かない
「安静時1L/分・労作時2L/分を守れる」「SpO2 90%以上を保てる」。在宅酸素の第2表でいちばん多い書き間違いは、主治医の指示をそのまま目標欄に写すことです。流量と吸入する時間は主治医が処方し、体調や季節で変えます。SpO2を測って判断するのは訪問看護と本人です。第2表に固定した瞬間、古くなり、ケアマネジャーには確かめる手段もありません。
書くのは、生活の行為と体制です。「流量を守れる」ではなく「主治医から指示された流量と時間で酸素を続けられる」。「SpO2が保てる」ではなく「息切れが強いときは動作を止めて休み、決めた目安を超えたら訪問看護に連絡できる」。この記事の文例はすべてこの形で作り、数字は入れていません。
火気は「2m」と「吸入中は吸わない」の2点を手順で書く
酸素は燃焼を助ける性質が強いガスです。厚生労働省は平成22年(2010年)に「在宅酸素療法における火気の取扱いについて」で注意喚起を出し、消防庁も令和3年(2021年)に同じ内容を再掲しています。要点は3つです。①高濃度の酸素を吸入中に、たばこ等の火気を近づけるとチューブや衣服に引火し、重度の火傷や住宅火災の原因になる。②「酸素濃縮装置等の使用中は、装置の周囲2m以内には、火気を置かないで下さい。特に酸素吸入中には、たばこを絶対に吸わないで下さい」(原文のまま)。③取扱説明書どおりに正しく使えば、酸素が原因で燃えることはないので、過度に恐れず医師の指示どおりに吸入する。
厚生労働省の安全性情報(令和5年9月)でも、誤った火気の取扱いに起因した重大事故が繰り返し発生していると書かれています。「火気に注意する」の1行では、初めて入る訪問介護員は何をすればよいか分かりません。「調理は電磁調理器に替える。ガスコンロを使う場合は、酸素の扱い(外すかどうか・時間)を主治医に確認した手順を書く」「仏壇のろうそく・線香は装置から2m以上離す」「本人と家族が吸入中に喫煙しないことを確認する」と、動作の手順で書いてください。
増悪のサインは「誰が・どこへ」の連絡経路まで書く
COPDは症状がゆっくり進むだけでなく、感染などをきっかけに「増悪(急な悪化)」を起こして、緊急の治療や入院が必要になることがあります。息苦しさが普段より強い、たんの色や量が変わった、発熱、むくみ、食べられない。このサインを本人・家族・訪問介護員が言えるようにして、連絡先(訪問看護→主治医、夜間は救急要請)を第2表に載せます。
急性増悪の時期は、訪問看護の保険の建て付けも変わります。要介護認定を受けている方の訪問看護は介護保険が優先です(健康保険法第55条第3項)。ただし主治医が「急性増悪等により一時的に頻回の訪問看護を行う必要がある旨の特別の指示」を出した場合は、その指示の日から14日間に限って介護保険の訪問看護費を算定しません(平成12年厚生省告示第19号 別表4 訪問看護費 注17)。この14日間は医療保険の訪問看護になります。ケアマネジャーが指示を出すわけではありませんが、給付管理と週間計画の組み替えが要るので、訪問看護から特別指示の連絡が来たら日付を記録してください。
呼吸器機能障害の手帳と、酸素業者の存在を初回に確認する
身体障害者福祉法の別表には「心臓、じん臓又は呼吸器の機能の障害で、永続し、かつ、日常生活が著しい制限を受ける程度」が挙げられ、等級表では呼吸器機能障害に1級・3級・4級があります。認定は指定医の診断書に基づき、窓口は市町村です。すでに持っている方が多い一方、在宅酸素が始まったばかりの方は申請前のことがあります。初回に「手帳はお持ちですか」と聞いてみませんか。
もうひとつ、酸素濃縮器・携帯用ボンベを納品し、定期点検や災害時の対応をしている酸素の業者がいます。介護保険のサービスではありませんが、停電時の対応や外出用ボンベの補充など、プランの土台になる情報を持っています。連絡先を担当者会議の名簿に入れ、サービス内容にも保険外の支援として位置づけてください。
ニーズ(生活全般の解決すべき課題)の文例(48文例)

この章の文例は「生活全般の解決すべき課題(ニーズ)」欄に書きます。主語はご本人です。
息切れがあっても、家の中のことを自分でしたい
- 少し動くと息が切れるが、休みを入れながら身の回りのことは自分でしたい
- 着替えや洗面で息が上がるので、楽にできるやり方を身につけたい
- トイレまでの往復で苦しくなるので、慌てずに間に合うようにしたい
- 家事は続けたいので、息切れしにくい段取りで無理なくこなしたい
- 呼吸の仕方を覚えて、動作の途中で苦しくなっても落ち着いて対処したい
- 体力が落ちてきたが、これ以上動けなくならないように体を動かし続けたい
酸素を付けた暮らしに慣れたい
- 酸素を付けて生活することにまだ慣れないので、安心して続けられるようになりたい
- 主治医から指示された流量と時間で、酸素を正しく続けたい
- チューブが家の中で引っかかって転ばないよう、動線を整えたい
- 機器の使い方や停電のときの対処を覚えて、一人でも困らないようにしたい
- 酸素を付けている姿を人に見られるのが嫌だが、慣れて外にも出たい
- 鼻のチューブによる皮膚の痛みや乾きを減らして、楽に付けていたい
入浴・清潔
- 入浴で息が上がって怖いので、安全に湯船につかりたい
- 酸素を付けたまま入浴してよいのか分からず不安なので、主治医に確認して手順を決めたい
- 洗髪や体を洗う動作で苦しくなるので、手伝ってもらいながら清潔を保ちたい
- 入浴の日は疲れて動けなくなるので、その日の家事を減らしたい
外出・通院
- 携帯用の酸素を持って、月1回の受診に自分で行きたい
- ボンベの残量や持ち時間が分からず不安なので、外出の前に確認できるようにしたい
- 買い物や散歩に出て、家に閉じこもらないようにしたい
- 階段や坂で苦しくなるので、休める場所を決めて外を歩きたい
- 通院の付き添いを家族だけに頼らず、代わりの手段も持っておきたい
火気の安全
- 酸素を使っている家で火事を起こさないよう、火の扱いを家族と決めておきたい
- 台所で調理を続けたいので、酸素を付けたままでも安全にできる方法を知りたい
- 仏壇のろうそくや線香をどうするか、酸素の機器との距離を決めて安心したい
- (家族)本人がたばこをやめられず心配なので、火事にならない体制を整えたい
急性増悪の備え
- 風邪をひくと悪化しやすいので、感染を防いで入院を避けたい
- 息苦しさやたんの変化に早く気づいて、悪くなる前に連絡したい
- 具合が悪くなったとき、誰にどう連絡すればよいかを決めておきたい
- 入院を繰り返しているので、退院後の生活を安定させたい
- 予防接種の時期を忘れないよう、支援者にも声をかけてもらいたい
食事・栄養(やせ・食欲低下)
- 食べると息が苦しくなり量が減ってきたので、少しずつでも栄養をとりたい
- 体重が減ってきたので、食べやすい形で体力を保ちたい
- 食事の支度で疲れてしまうので、手伝ってもらって食べる力を残したい
- 口の中が乾いてたんが出しにくいので、口の中を整えて食べやすくしたい
気持ち・不安・活動量の低下
- 息が苦しくなるのが怖くて動けないが、少しずつ動ける範囲を広げたい
- 夜に息苦しさで目が覚めて不安になるので、安心して眠りたい
- 気持ちが沈んで何もする気になれないが、楽しみをひとつ持ちたい
- 病気のことを家族に分かってもらい、できることは自分でやりたい
禁煙
- たばこをやめたいと思っているが一人では難しいので、支えてもらいたい
- 禁煙を続けているが、つい吸いたくなるときの対処を持ちたい
一人暮らし
- 酸素を使いながら、一人暮らしをできるだけ長く続けたい
- 急に息苦しくなったとき、すぐ連絡できる手段と駆けつけてくれる人を持ちたい
- 停電や災害のとき、酸素をどうするか決めておいて安心したい
- 毎日誰かの目が入る形で、倒れても気づいてもらえるようにしたい
家族が介護している
- (家族)本人の息切れのときにどう手を貸せばよいか知りたい
- (家族)酸素の機器やボンベの扱いを覚えて、外出の手伝いをしたい
- (家族)悪化のサインと連絡先を知って、夜間も落ち着いて対応したい
- (家族)介護と仕事の両立が苦しいので、自分の時間を持ちたい
長期目標の文例(14文例)

この章の文例は「長期目標」欄に書きます。流量やSpO2ではなく、酸素を続けながら送る暮らしの形で書きます。
- 主治医の指示どおりに酸素を続けながら、自宅での生活を送れる
- 息切れと付き合う動作の手順を身につけ、身の回りのことを自分で行える
- 火気の約束を本人と家族が守り、安全に酸素のある暮らしを続けられる
- 増悪のサインに早く気づき、決めた連絡先へつなげて入院を避けられる
- 携帯用酸素を使って、月1回の受診と週1回の外出を続けられる
- 入浴を安全な手順で続け、清潔を保った生活を送れる
- 食べられる形で栄養をとり、体力を保って自宅での生活を続けられる
- 支援と見守りの体制のもとで、酸素を使いながら一人暮らしを続けられる
- 家族が介護の負担を分かち合いながら、在宅での生活を続けられる
- 感染を防ぐ習慣を続け、入院せずに1年を過ごせる
- 不安をひとりで抱えず、訪問看護や支援者に相談しながら療養を続けられる
- 禁煙を続け、呼吸を守る暮らしを自分のものにできる
- (酸素導入前)息切れとの付き合い方を身につけ、活動量を落とさずに過ごせる
- 体調の良い日に趣味や人との交流を持ち、自分らしい時間を過ごせる
短期目標の文例(41文例)

この章の文例は「短期目標」欄に書きます。誰が見ても達成できたかどうかが分かる形にします。数字を入れるなら、回数・曜日・場面までにして、流量やSpO2は書きません。
呼吸法・動作の工夫
- 訪問看護から教わった呼吸法(口すぼめ呼吸など)を、着替えとトイレの動作で使える
- 動作の途中で息が上がったら、いすに座って休む習慣がつく
- 朝の身支度を、休憩を2回入れながら自分で終えられる
- 洗濯物たたみなど座ってできる家事を、週◯日続けられる
- 訪問リハビリで決めた運動を、週◯回自宅で行える
酸素の管理
- 主治医から指示された流量と時間を、本人と家族が言える
- 酸素濃縮器の電源・流量計・チューブの確認を、毎朝自分で行える
- チューブの通り道の段差や敷物をなくし、引っかからずに家の中を移動できる
- 停電時の携帯用ボンベへの切り替え手順を、本人と家族が言える
- 鼻のチューブの当たる部分を毎日確認し、傷や乾きがあれば訪問看護に伝えられる
- 酸素業者の連絡先と点検の予定を、見える場所に貼って確認できる
入浴・清潔
- 主治医に確認した手順(酸素の扱い・湯温・時間)で、週◯回入浴できる
- シャワーいすに座り、介助を受けながら息を整えて洗身・洗髪ができる
- 入浴の日は午後の予定を入れず、休息の時間を取れる
- 入浴できない日は、清拭や足浴で清潔を保てる
外出・通院
- 外出前に携帯用ボンベの残量を確認し、持ち時間に合った予定を組める
- 月1回の受診に、携帯用酸素を持って付き添いと一緒に行ける
- 近所の◯◯まで、途中2か所で休みながら往復できる
- 週◯回、通所先で他の利用者と一緒に活動へ参加できる
- 通院の送迎が使えない日の代わりの手段を、本人・家族・支援者が言える
火気の安全
- 酸素の装置から2m以内に火気を置かないことを、本人・家族・支援者が言える
- 酸素吸入中は喫煙しないことを本人が守り、訪問時に確認できる
- 調理は電磁調理器で行うか、酸素を外す手順を主治医に確認して決められる
- 仏壇のろうそく・線香を電気式に替えるか、装置から離した置き場所を決められる
- 火気の約束を、訪問介護員が来た日に自分の言葉で言える
増悪の観察・連絡
- 息苦しさの増強・たんの色や量の変化・発熱・むくみを、本人と家族がサインとして言える
- 訪問看護と決めた連絡の目安を超えたら、その日のうちに訪問看護へ電話できる
- 夜間や休日の連絡先(訪問看護・救急)を、電話の横に貼って言える
- インフルエンザなどの予防接種を、主治医と相談して受けられる
- 外出後の手洗い・うがいを毎回行える
- 退院後2週間、毎日誰かの訪問を受けながら自宅で過ごせる
食事・栄養
- 1回の量を減らして回数を増やす形で、1日の食事を食べきれる
- 体重を週1回測り、記録を訪問看護と主治医に見せられる
- 管理栄養士の助言をもとに、食べやすく栄養のとれる献立を週◯日は用意できる
- 食後に息苦しくならない座り方と休み方を身につけられる
気持ち・参加
- 不安が強いときの対処(呼吸法・訪問看護への電話)を、自分で2つ言える
- 趣味の◯◯を、酸素を付けたまま週◯回行える
- 月◯回、友人や知人と会う機会を持てる
家族・独居の暮らし
- 家族が本人の息切れ時の手の貸し方(座らせる・呼吸を促す・慌てない)を言える
- 緊急通報の使い方を覚え、必要なときに押せる
- 家族が週◯日、介護から離れて自分の時間を持てる
サービス内容の文例(46文例)

この章の文例は「サービス内容」欄に書きます。医療サービスは、主治医の指示にもとづくことが読み取れる形にします。
主治医・医療機関との連携
- 主治医(呼吸器内科など):COPDの治療、酸素の流量・吸入時間の指示、増悪時の対応と受診の指示
- ケアマネジャー:医療サービスの利用にあたり本人の同意を得て主治医の意見を確認し、作成した居宅サービス計画を主治医へ交付する
- ケアマネジャー:本人の同意を得て、主治医・訪問看護から酸素の指示内容、入浴の可否と手順、増悪時の連絡の目安を聞き取り、各事業所へ共有する
- ケアマネジャー:各事業所が把握した息切れ・食事量・機器の状況を、本人の同意を得て主治医・訪問看護へ伝える
- ケアマネジャー:特別訪問看護指示があった場合、訪問看護から日付の連絡を受け、給付管理と週間計画を組み替える
- ケアマネジャー:酸素業者の連絡先を担当者会議で共有し、停電・災害時の対応を確認して記録する
訪問看護(主治医の指示に基づく)
- 訪問看護:呼吸状態・SpO2・息切れの程度・たんの性状・むくみの観察と、異常時の主治医への連絡
- 訪問看護:酸素機器の使用状況の確認、流量・吸入時間が指示どおりかの確認、鼻のチューブ部位の皮膚の観察
- 訪問看護:呼吸法・排痰法・動作の工夫の指導と、本人・家族が実施できているかの確認
- 訪問看護:増悪のサインと連絡の目安の指導、夜間・休日の連絡経路の確認
- 訪問看護:服薬・吸入薬の使用状況の確認と、吸入手技の指導
- 訪問看護:入浴の可否と手順を主治医に確認し、訪問介護へ伝える
- 訪問看護:本人の不安の傾聴と、家族への介護方法の助言
訪問リハビリテーション・通所リハビリテーション(主治医の指示に基づく)
- 訪問リハビリテーション:呼吸法と動作の工夫(着替え・トイレ・入浴)の指導、自宅でできる運動の設定と息切れに応じた負荷の調整
- 訪問リハビリテーション:家の中の動線と休憩場所の助言、チューブに引っかからない配置の提案
- 通所リハビリテーション:体力・歩行能力の維持、息切れの程度に合わせた運動量の調整、酸素を使用しながらの活動
訪問介護
- 訪問介護(身体介護):入浴介助(訪問看護から示された手順で、湯温・時間・酸素の扱いを守り、息切れが強いときは中止して休む)
- 訪問介護(身体介護):更衣・整容の介助(本人が呼吸を整える時間を待ち、できる部分は本人が行う)
- 訪問介護(身体介護):トイレへの移動の見守りと介助、チューブの整理
- 訪問介護(生活援助):調理(火気を使わない方法、または主治医に確認して決めた酸素の扱いの手順を守る。主治医・管理栄養士の助言に沿った食べやすい献立)
- 訪問介護(生活援助):掃除(ほこりの少ない環境の維持、チューブの動線に物を置かない)
- 訪問介護(生活援助):買い物の代行・同行(携帯用酸素の持ち時間に合わせた行程)
- 訪問介護員:訪問時に息切れの程度・食事量・機器の作動・火気の状況を確認し、変化があればケアマネジャー・訪問看護へ報告する
通所介護
- 通所介護:入浴の機会の確保(酸素を使用したままの入浴手順を事前に確認し、事業所の職員が体調を確認して行う)
- 通所介護:他の利用者との交流と、体調に合わせた活動による生活リズムづくり
- 通所介護:送迎時に携帯用酸素の残量と自宅での様子を確認し、変化があればケアマネジャーへ報告する
- 通所介護:施設内の火気(喫煙所・調理)から酸素機器を離す取り決めを事前に確認する
居宅療養管理指導
- 居宅療養管理指導(薬剤師):吸入薬の手技と残薬の確認、飲み合わせの確認、一包化や服薬カレンダーの提案
- 居宅療養管理指導(管理栄養士):主治医の指示に基づく食事内容の助言、少量で栄養のとれる献立と調理方法の指導(位置づけの要件は主治医に確認する)
- 居宅療養管理指導(医師):主治医からの療養上の指導と、事業所への情報提供
- 居宅療養管理指導(歯科医師・歯科衛生士):口腔の状態の確認と口腔ケアの指導(感染による増悪の予防)
福祉用具・住環境
- 福祉用具貸与:手すり・歩行器の選定と定期的な調整(息切れ時に体を支え、休める配置)
- 福祉用具貸与:特殊寝台の検討(上体を起こして呼吸が楽な姿勢を取れるもの。軽度者は例外給付の要否を保険者に確認する)
- 特定福祉用具販売:シャワーいす・浴槽内いすなど、座って息を整えながら入浴できる用具の検討
- 住宅改修:トイレ・浴室までの動線の段差解消と手すりの取り付け、休憩用のいすを置ける場所の確保
- 福祉用具専門相談員:チューブの通り道と用具の配置を確認し、引っかかりのない配置を助言する
酸素業者・保険外の支援
- 酸素業者:酸素濃縮器・携帯用ボンベの納品と定期点検、停電・災害時の対応と連絡先の提示(介護保険外)
- 配食サービス:食べやすく栄養のとれる食事の提供と、手渡し時の安否確認(介護保険外)
- 緊急通報装置:息苦しさの増強や転倒時に外部へ連絡できる体制の確保(自治体サービスなど)
独居・見守りの体制
- 訪問看護と訪問介護の訪問日を分け、平日は毎日誰かの目が入る形で週間計画を組む
- 別居家族・民生委員:定期的な電話連絡と訪問、増悪時の連絡先としての位置づけ
- 自治体の避難行動要支援者名簿への登録と、停電・災害時の避難先の確認(本人の同意のうえ)
本人・家族の取り組み
- 本人:主治医から指示された流量と時間で酸素を続け、毎朝の機器の確認と週1回の体重測定を行うこと
- 本人:酸素吸入中は喫煙せず、装置から2m以内に火気を置かないこと。息苦しさが増したときは動作を止めて休み、決めた目安で訪問看護に連絡すること
- 家族:増悪のサインと連絡先を把握し、夜間に息苦しさが強いときは救急要請をためらわないこと
- 家族:介護を一人で抱え込まず、負担が大きいときはケアマネジャーへ相談すること
書き方のコツ(深めたい方向け)
すぐ使いたい方は、ここから先は読まなくて大丈夫です。在宅酸素ならではの書き分けのコツをまとめました。
コツ1:数字は「主治医の指示どおりに続けられる」型に変える
「酸素2L/分を守れる」と書いたプランは、主治医が流量を変えた日に古くなります。「SpO2 90%以上」と書いたプランは、ケアマネジャーが測っていないので達成を確かめられません。数字を決めるのは主治医、測るのは訪問看護と本人です。
書き換えるなら「主治医から指示された流量と時間を、本人と家族が言える」「訪問看護と決めた連絡の目安を超えたら、その日のうちに訪問看護へ電話できる」。行動と体制で書けば、訪問介護員が「言えたか」を確かめられ、訪問看護が「電話が来たか」を担当者会議で報告できます。測り方の作り込みは、ケアプラン第2表 目標の文例集も参考にしてください。
コツ2:息切れは「動作を分解して、休憩を入れる場所」で書く
「息切れに注意して身の回りのことができる」では、訪問介護員は何を待てばよいか分かりません。息切れの強い方の動作は、分解すると休憩の入れ方が見えます。着替えなら「上着→休む→ズボン」。入浴なら「脱衣→座って休む→洗身→休む→浴槽は短時間」。この分解は訪問看護や訪問リハビリが本人と作っているので、それをサービス内容に写します。
たとえば更衣なら「本人が呼吸を整える時間を待ち、できる部分は本人が行う」。入浴なら「息切れが強いときは中止して休む」。中止の判断基準を訪問看護から聞いて書いておくと、初めて入る訪問介護員も同じ動きができます。担当の方の入浴の手順、訪問看護に聞いてみましたか。呼吸法や動作指導の文例は【訪問リハビリテーション】ケアプラン第2表の文例集にあります。
コツ3:火気は禁止の宣言でなく、代わりの手順を書く
「火気厳禁」と書くだけでは、本人は台所と仏壇をどうすればよいか分かりません。厚生労働省と消防庁の注意喚起は「装置の周囲2m以内に火気を置かない」「吸入中はたばこを吸わない」の2点が具体です。ここに家の中の実物を当てはめてください。ガスコンロなら「酸素を外して調理するか、電磁調理器に替える」(酸素を外してよいかは主治医に確認)。仏壇なら「電気式のろうそく・線香に替えるか、装置から離した部屋に置く」。ストーブなら「装置と本人から2m以上離す」。
喫煙は、ここが難しいところです。禁煙が治療の基本であることは日本呼吸器学会の解説にも書かれていますが、第2表で「禁煙する」を本人の目標に強制すると、隠れて吸うようになりプランが形だけになります。書くのは「酸素吸入中は吸わない」という安全の線と、「たばこをやめたいと思っているが一人では難しいので、支えてもらいたい」という本人の言葉のほうです。禁煙外来や禁煙補助の相談先は主治医から示してもらいます。
コツ4:訪問看護の保険は「普段は介護・特別指示の14日間は医療」と覚える
要介護認定を受けている方の訪問看護は介護保険が優先です(健康保険法第55条第3項。国民健康保険法・高齢者の医療の確保に関する法律にも同じ定めがあります)。医療保険になるのは、末期の悪性腫瘍や厚生労働大臣が定める疾病(多発性硬化症・筋萎縮性側索硬化症・パーキンソン病関連疾患など20項目。令和8年改正後の別表第7に「慢性閉塞性肺疾患」という病名はありませんが、最後の項目が「人工呼吸器を使用している状態」です。在宅で人工呼吸器(夜間のNPPVなど)を使っている方はこの項目で普段から医療保険の訪問看護になるので、酸素だけか、人工呼吸器も使っているかを主治医・訪問看護に確認してください)、それから急性増悪等で主治医が特別の指示を出した場合です。特別の指示があると、指示の日から14日間は介護保険の訪問看護費を算定しません(告示第19号 別表4 注17)。
ケアマネジャーが押さえるのは、まず人工呼吸器を使っていないことの確認。そのうえで3つ。①普段のCOPD(酸素のみ)の訪問看護は介護保険で位置づける。②訪問看護から「特別指示が出た」と連絡が来たら、日付と14日目を記録して給付管理から外す。③14日を過ぎたら介護保険に戻るので、週間計画を戻す。特別指示を月2回交付できる場合や28日間の扱いなど、細目は本記事の範囲外です。該当しそうな方は訪問看護に確認してください。訪問看護の書き分け全般は【訪問看護】ケアプラン第2表の文例集にまとめています。
コツ5:「怖くて動けない」を、動かない理由にしない
在宅酸素の方の多くは、息苦しさへの恐怖から動かなくなり、体力が落ちてさらに息切れが強くなる循環に入ります。日本呼吸器学会の解説は、じっとしている時間を減らして活動的に過ごす「身体活動性の向上」を生活上の注意に挙げています。第2表にできるのは、この恐怖を否定せず、安全に動ける手順と、動いた先の楽しみを載せることです。
ニーズの章に「息が苦しくなるのが怖くて動けないが、少しずつ動ける範囲を広げたい」を置き、短期目標で「近所の◯◯まで、途中2か所で休みながら往復できる」と、休む場所まで決めます。不安が強い方は、訪問看護の傾聴と、不安時の対処(呼吸法・電話)を目標に入れてください。気持ちの部分の伝え方は主治医・医療機関との連携文例集にあります。
現場のひとこと
在宅酸素のプランは、酸素業者と訪問看護がすでに持っている情報を取りに行くだけで半分できます。流量と時間の指示、入浴の可否、停電時の手順、外出用ボンベの持ち時間、増悪時の連絡の目安。どれも本人が退院時に説明を受けた内容で、ケアマネジャーが新しく考える必要はありません。初回訪問の前に訪問看護へ電話を1本入れて「療養指導の内容と、火気で困っていることを教えてください」と頼んでみませんか。台所と仏壇の話が、その電話で出てきます。
運営指導で見られやすいポイント
1. 訪問看護・訪問リハビリテーション・通所リハビリテーションなど医療サービスについて、主治医の指示を確認した経過が記録に残っているか(平成11年厚生省令第38号 第13条第20号)
2. 医療サービスの利用にあたり利用者の同意を得て主治医の意見を求め、作成した計画を主治医へ交付した記録があるか(同 第13条第19号・第19号の2)
3. 目標が「SpO2◯%以上」「流量◯L/分」など医学的な数値ではなく、本人が取り組める行為になっているか
4. 特別訪問看護指示があった期間について、介護保険の訪問看護費を算定していないことが給付管理と一致しているか(告示第19号 別表4 注17)
5. 入浴介助を位置づけている場合、酸素の扱いと中止の基準を主治医・訪問看護に確認した経過が残っているか
6. 火気の安全について、本人・家族への説明と確認が支援経過に残っているか
よくある迷いどころ
在宅酸素の方の入浴介助は、訪問介護でよいですか。訪問看護が必要ですか
決めるのは主治医です。酸素を付けたまま入浴してよいか、湯温と時間、息切れが強いときの中止基準を主治医に確認し、訪問看護に手順を作ってもらってから、訪問介護に位置づけるのが一般的な組み立てです。呼吸状態が不安定な時期や、入浴中にSpO2の確認が要ると主治医が判断した場合は、訪問看護の入浴介助か、看護職員を含む3人で行う訪問入浴介護を検討します。訪問入浴の文例は【訪問入浴介護】ケアプラン第2表の文例集にあります。第2表には「訪問看護から示された手順で」と書き、手順そのものは訪問介護の計画書に載せてもらってください。
デイサービスは酸素ボンベを持って行けますか
通所介護の運営基準は、酸素の使用そのものを利用の条件にしていません。受け入れは事業所ごとの体制で決まります。確認するのは4点です。①送迎車と施設内での携帯用ボンベの残量と持ち時間、②入浴を行う場合の手順と看護職員の体制、③施設内の火気(喫煙所・調理室・ストーブ)から装置を離せるか、④息苦しさが強くなったときの連絡先。この4点を担当者会議で確認して記録し、通所介護計画に反映してもらいます。通所の文例は【デイサービス(通所介護)】ケアプラン記入例・文例集にあります。
本人が「苦しいから」と流量を上げています。プランにどう書きますか
流量の変更は主治医の処方の範囲です。ケアマネジャーが「上げてよい」「上げてはいけない」を判断する立場にはありません。本人が自分で上げている事実を、本人の同意を得て訪問看護と主治医に伝えてください。上げたくなる背景(動作時の息苦しさ・不安・機器への不信)を第2表のニーズに載せます。目標は「主治医から指示された流量と時間を本人と家族が言える」「息苦しさが増したときは動作を止めて休み、決めた目安で訪問看護に連絡できる」の形です。数字は書きません。
55歳でCOPDと診断され在宅酸素が始まりました。介護保険は使えますか
使えます。慢性閉塞性肺疾患は介護保険法施行令第2条第15号の特定疾病で、40歳以上65歳未満で医療保険に加入している方(第2号被保険者)は要介護認定を申請できます。申請書の主治医欄には呼吸器の主治医を書き、意見書に「慢性閉塞性肺疾患」の病名が載るよう伝えておきます。認定の要否とは別に、呼吸器機能障害の身体障害者手帳の申請も窓口(市町村)で相談できるので、あわせて案内してください。
訪問看護は医療保険ですか、介護保険ですか
要介護認定を受けている方は介護保険が優先です(健康保険法第55条第3項)。COPD単独の方の普段の訪問看護は、介護保険で第2表に位置づけます。急性増悪で主治医が特別の指示を出した場合だけ、指示の日から14日間は介護保険の訪問看護費を算定せず(告示第19号 別表4 注17)、その期間は医療保険の訪問看護になります。心不全を合併している方も同じ建て付けです。心不全の観察の文例は【心不全】ケアプラン第2表の文例集にあります。たんの誤嚥と肺炎への備えは【誤嚥性肺炎】ケアプラン第2表の文例集を組み合わせてください。
まとめ
✓ COPDは特定疾病の第15号。40〜64歳でも要介護認定を申請できる(施行令第2条)
✓ 目標欄に流量・吸入時間・SpO2の数字は書かない。「主治医の指示どおりに続けられる」型で書く
✓ 火気は「装置から2m」「吸入中は吸わない」を、台所・仏壇・ストーブの実物に当てはめて手順で書く(厚生労働省・消防庁)
✓ 増悪のサインは、本人・家族・訪問介護員が言える形にして、連絡先を電話の横に貼る
✓ 訪問看護は普段は介護保険。特別指示の日から14日間だけ医療保険(告示第19号 別表4 注17)
✓ 息切れは動作を分解し、休憩を入れる場所まで書く
✓ 「怖くて動けない」を否定せず、安全に動ける手順と動いた先の楽しみを載せる
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ケアプラン第2表 目標の文例集|測定可能な長期目標・短期目標
参考・出典
介護保険法(平成9年法律第123号)第7条第3項第2号・第4項第2号・第9条第2号/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123
介護保険法施行令(平成10年政令第412号)第2条第15号/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/410CO0000000412
指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)第13条第19号・第19号の2・第20号/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100038
厚生労働省「在宅酸素療法における火気の取扱いについて」(平成22年1月15日) https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000003m15_1.html
消防庁予防課「在宅酸素療法時の火気の取扱いにご注意ください」(令和3年8月25日) https://www.fdma.go.jp/pressrelease/info/items/210825_yobo_1.pdf
厚生労働省医薬局「医薬品・医療機器等安全性情報 No.404」(令和5年9月)1. 在宅酸素療法中の火災事故について https://www.pmda.go.jp/files/000264530.pdf
指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)別表4 訪問看護費 注17/厚生労働省法令等データベース https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82aa0253&dataType=0&pageNo=1
健康保険法(大正11年法律第70号)第55条第3項/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/211AC0000000070
厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 第142回(平成29年7月5日)参考資料2「訪問看護」 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000170290.pdf
一般社団法人日本呼吸器学会「呼吸器の病気 B-01 慢性閉塞性肺疾患(COPD)」 https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/b/b-01.html
特掲診療料の施設基準等(平成20年厚生労働省告示第63号)別表第七/厚生労働省 法令等データベース https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=84aa9733&dataType=0&pageNo=5
災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第49条の10・第49条の11/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/336AC0000000223
身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)第4条・別表/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC1000000283
身体障害者福祉法施行規則(昭和25年厚生省令第15号)別表第5号 身体障害者障害程度等級表/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/325M50000100015
※文例はあくまで参考です。酸素の流量・吸入時間、入浴の可否と手順、運動の量、食事の内容、服薬・吸入薬の使い方、増悪時の連絡の目安は、必ず主治医と訪問看護の指示にもとづいて個別に決めてください。火気の取り扱いは、酸素機器の取扱説明書と酸素業者の説明に従ってください。特別訪問看護指示の取り扱い、身体障害者手帳の認定、通所介護での酸素使用の可否は、主治医・訪問看護・事業所・お住まいの市区町村(保険者)によって案内が異なる場合があります。実際の取り扱いについては、主治医およびお住まいの市区町村(保険者)にご確認ください。


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